煙に誘われ…
(3)只見線〜33年目の憧れ〜

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蒸気機関車の写真を撮り始めてまだ日の浅い中学一年の時、仲の良い友人達と「鉄道友の会」に入会しました。撮影といっても、新小岩機関区か、遠くても八高線が精一杯の頃です。月に一度、土曜日の夕方から、神田の交通博物館の会議室で二時間程の会合がありました。確か、私達が最年少だったと記憶しています。会合では、雑誌などでお名前を拝見するような方々もおり、最新の情報交換や、スライドの上映など、とても楽しみにしていました。

ある日会合の席上で、年配の会員の方から、全紙のカラーパネル写真を見せて頂きました。それが会津線(現在の只見線)の第三鉄橋の写真でした。真っ赤に燃える紅葉の中、鉄橋を渡る小さな蒸気機関車。私はその美しさに子供心にも感動しました。これほどまでに、蒸気機関車が大自然の風景に、見事に溶け込んだ写真を私は知りませんでした。そして、蒸気機関車が風景を引き立たせる存在である事を始めて知り、その時から第三鉄橋は憧れの場所になりました。

時はまさに、蒸気機関車終焉の時代、中学生の身では、時間や予算など限られた事も多く、無我夢中で蒸気機関車を追い求めました。そして気が付くと、会津線には一度訪れただけで、いつのまにか煙は消えてしまい、あれほど憧れていた第三鉄橋を見る事はありませんでした・・・。

あれから33年、只見線に蒸気機関車が復活しました。もちろん、観光目的のイベント列車です。私達のような現役蒸気機関車の想い出を引きずっている者は、どうしてもイベントと言うと、抵抗を感じてしまいます。理由はいろいろとありますが、例えば、古い映画を現代の役者さんを使ってリメイクしたような、どうしてもそこで、現役を基準に比較をしてしまうのかも知れません。そして、そのギャップが大きければ大きい程、過去の思い出が損なわれる危惧を持っているのだと思います。

今回もそんな気持ちが片隅にあったのは事実ですが、仕事の都合もあり、時間もなかなか取れませんでした。ところが10月6日、突然翌日の仕事が延期になり、慌てて、友人と連絡を取り合い、1日だけですが行く事になりました。夜11時に自宅を出発、友人と待ち合わせて一路会津へ、もちろん場所は第三鉄橋です。事前にリサーチだけはしておいたので、道に迷う事はありませんでした。そして午前4時少し前に到着、車を国道のスノーシェッド内の待避所に置き、早速外に出ました。徹夜で運転した疲労感と、暖房で火照った体に山の冷気が気持ち良く、久し振りに清々しい空気に触れた思いでした。そして、スノーシェッド内を少し歩くと、突然視界が開けました。月がとても明るく、山々の稜線がはっきりと見えます。黒く、静かに佇む山間を縫って只見川がほのかに輝いています。そしてあの憧れの第三鉄橋が、シルエットで眼下に望めました。その美しさにしばし見とれ、これだけでも来た甲斐があったと思われる位でした。

今回は思い出を探しに来たような旅でした。撮影も、あの薄暗い交通博物館の会議室で見せて頂いた写真と、ほぼ同じ構図のこの1枚しか撮っていません。でも、シャッターをきった瞬間、「やっと、33年前の憧れを写し止める事ができた。」と言う満足感でいっぱいでした。


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Last Updated  2003-06-12