翻訳と著作権をめぐって


 翻訳権の十年留保について
 翻訳者の著作権
 インターネット時代と著作権
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 男の訳と女の訳


「翻訳権の十年留保」について

ある本を日本語に翻訳して出版したいと思ったときには、もちろん原著作者の許可を得なければならない。アリストテレスとかシェークスピアとか、明らかに著作権を主張される心配がないという場合には許可を得なくても翻訳出版できるが、すでに著者が死亡して50年以上たっている場合でも、その親類縁者が著作権を保持していることがあるから、慎重に調べる必要がある。ただし、通常の著作権保護期間内にある著作物でも、著作者の許可を得ないで自由に翻訳発行できる場合があるという。それが「翻訳権の十年留保」と呼ばれるルールだ。

日本の現行の著作権法は1971年1月1日に施行された。それ以前の著作権法には、「翻訳権の十年留保」として知られる規定が含まれていた。これはつまり、著作権が保護されている外国語の著作物が、その発行時から十年以内に日本語に翻訳されて出版されていなければ、翻訳権は自動的に消滅し、誰でも好きに翻訳発行していい、という規則だ。それって、すごく便利!と思うだろうが、現行の著作権法にはそういう規定はない。

ただし、である。いまの著作権法が施行される前に発行された著作物については、旧著作権法のこのルールが生きる、とされている。つまり、1970年12月31日までに発行された外国語の著作物で、それから10年間、日本語に翻訳・出版されていないものなら、誰でも自由に翻訳して出版できることになっている。

しかし、これはあくまで「日本の」法律であって、原著作者側から見たら、なんかずいぶん勝手な話だなあと思うんじゃないかという気もするが、国際間の著作権の取り決めはどうなっているんだろう? 先の「翻訳権の十年留保」のルールにしても、国によってはまだ維持しているところがあるというし、いろいろな国際条約と同様、自分のところも加盟すると宣言しなければ、ぜんぜん拘束されることはないのかもしれない。

とりあえず、日本にはそういう法律があるということなので、もしも自分で本邦初訳をやってみたいという本があったら、1970年12月31日以前に発行されていないかどうかチェックしてみるといいかもしれない。もっとも、話題になりそうな本、売れそうな本は、何から何まであっというまに翻訳されるこの日本では、どれだけそういう本が残っているかわからないが。
(司書の講習会に行ってわざわざ調べてきてくれたよしこさん、どうもありがとう。)


翻訳者の著作権


無名の売れない翻訳者を長年やっていると、いろいろ理不尽な目にあう。ぜんぶ仕上げた時点でいきなり「監修者」とか「監訳者」という名の漁夫が現れて利をさらっていってしまうシステムは、なんとかならないものだろうか。有名な人の名前やハクを付けたところで、どうせ本が売れない時代、そんなに売り上げが伸びるとは思えないけど。
批判も非難も質問も、もしかしたらお褒めの言葉も、すべて本当にそれをやった人のもとに届くようにしてほしい。最後まで責任を持たせてほしい。いったい(無名の)翻訳者の著作権はどうなっているんだ?!

しょっちゅうテレビに顔を出したり、方々で華やかに活躍している人が、おそろしく時間と手間ひまのかかる翻訳書を出したりすると、いったいどうやって時間をひねり出したんだろう!と驚異を感じる。だがたいていそういう本の陰には、足蹴にされた無名の翻訳者、小金を渡されて吹き飛ばされた下訳者という名の無名翻訳者がいる。それがこの世のならい、現代経済のシステムなのよ、と言えばそうなんだろうが、そういう世の中は間違っているぞ。
無名翻訳者の著作権を守れえ!


インターネット時代と著作権


「無名翻訳者の著作権を守れえ!」と前項(翻訳者の著作権)では鼻息荒くわめいた。
人が苦労して考えたり作ったりしたものを横取りしたり、勝手に使ってお金もうけをすることは許せない。知的所有権は当然、最初にアイデアをひねり出した人に所属するのであって、その権利は守られなければならない。


しかし案外、こういう考えかたは非常に新しい観念なのだなということが、文化庁のページや文部省の著作権審議会、その他の著作権に関するHP(著作権情報センター著作権サポートセンター、など)を見てもわかる。アジアの多くの国ではいまでも著作権、つまり知的所有権という考えは一般に浸透していないようで、平気で海賊版が作られている。最近ようやくそれを取り締まる法律が整備されつつあるという状況のようだ。
先進社会にしても、新しいメディアが次々に出てくるので現行法では間に合わず、法律のほうが現実のあとからよたよたと必死に追いかけているように見える。「民話の聞き書き」には著作権が発生するか、というような面白い問題もあって、これはなかなか一筋縄ではいかない問題らしいことがよくわかる。


つまり著作権とか知的所有権というのは、比較的新しい、まだ発展途上にある考えかたなのだ。
コメや野菜や道具ではなく、かたちのないものを作って、それを売って暮らす人がますます増えるにしたがって、知的「所有権」の保護の考えかたはいっそう強まり、それを守るための法制度が、いたちごっこ的に整備されていくことだろう。

けれども、そういった世の中の主流の裏あるいは脇で、インターネットが新しい流れを作っているのではないか、という気がする。

ネットサーフィンをしていると、高度な知識と技術を駆使して個人が開発したおびただしい数のソフトウエアが「フリーウエア」として無料で提供されていること、長年の研究や仕事や経験から得た知識やデータを惜しげもなく公開して、未知のだれかの役に立とうとしている人がおおぜいいることに驚く。ほしかったらダウンロードして持っていっていいよ、気に入ったらいくらでもコピーして使っていいよ、というものが山のようにあるのだ。
インターネットを使って新しいビジネスという動きももちろんあるけれど、いまのインターネットをかたちづくっているものの大部分は、そんなふうに無料で公開されている個人の情報知識の集積だ。

ネタを自分だけでとっておいて、あとで研究発表しようとか、ちょっとしたソフトや曲やグラフィックを作成してこづかい稼ぎをしようというような小さな思惑などは軽く越えて、つまり競争と市場の原理を越えて、みんなの智恵やアイデアを集積して、もっといいものをつくり出していこうという新しい文化が出てきているような気がする。

(つづく)


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こちらはぐっとこじんまりしていて、メンバーはいまのところ人文・社会系の出版翻訳にかかわる女性がほとんど。暖かい励ましあい的雰囲気がある。本名を明らかにし、自己紹介をして参加することが条件。
使用言語は日本語。


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男の訳と女の訳

同じテキストを男の翻訳者が訳した場合と、女の翻訳者が訳した場合に、何かちがいが出るだろうか。出るとしたら、どういうちがいだろう。またそれは、何によるものなのだろうか。実際のテキストを題材に、ちょっと考えてみた。
(まだまだ考察中)
 


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