2012.11.20 up 



キノミナちゃんとキノミナの本棚の前で


NR出版会連載企画 書店員の仕事17
「ワクワク」を基準に仕事を
神矢真由美さん(紀伊國屋書店新宿南店/東京都渋谷区)


 私が働いている紀伊國屋書店新宿南店では、お客様にワクワクしていただける書店を目指して、ストアコンセプトの一つに「SUPERワクワク」を掲げています。このストアコンセプトを売場で表現していくために、「SUPERワクワク隊」を結成。昨年(2011年)6月、メイン入口フロアである3階に「@super_wakuwaku」(通称:ワクワク棚)という棚を設置しました。棚名の表記はツイッターを意識したもの。このアカウントでフェアやイベントの情報をつぶやいています。


 ワクワク棚の構成は、ランキング、書評紹介本、メディア紹介本、オリジナルフェア、そしてスタッフのおすすめ本企画です。ワクワク棚を作るにあたって重視したポイントの一つが、おすすめ本企画でスタッフの個人的な趣味を出してしまうことでした。本が好きで本屋で働いている人が多いはずなのに、自分の好きな本のジャンルと実際に担当するジャンルがあまり一致していないのが新宿南店の実情……。自分が本当に好きで読んでいる本や心から面白いと思っている本なら自信を持っておすすめできるし、それでお客様に喜んでもらえたら、書店員としてのモチベーションは上がるに違いない! と考えたのでした。

 おすすめ本企画は二つあります。一つのテーマで3冊の本を紹介する「1テーマ3ブックス」と、スタッフが最近読んだ本、いま読んでいる本、これから読む本を5〜10冊ほど並べて紹介する「キノミナの本棚」です。(キノミナとは、紀伊國屋書店新宿南店、紀伊國屋書店のみんなという意味です。ちなみに、SUPERワクワクのイメージキャラクターの名前もキノミナちゃんです。)


 棚がスタートした当初は張り切って、「1テーマ3ブックス」は毎月5テーマずつ展開し、「キノミナの本棚」は毎月5人のスタッフにそれぞれ1段ずつ棚を作ってもらっていました。常に新鮮な棚というのがワクワク棚のテーマの一つでもあったので、どんどん更新していこうと。しかし、スタートして半年ほど経ってくると、毎月テーマを考えたり、参加するスタッフを募ったりすることがだんだんとしんどくなってきました……。入れ替えが終わったと思ったら、次の人選、選書、発注に追われ、この企画に対してあまりワクワクできなくなっている自分に気づき、これではダメだと方針変更。企画自体の質を維持するためにも更新のペースを落として、現在は「1テーマ3ブックス」を毎月3テーマずつ展開、「キノミナの本棚」は隔月入れ替えにして毎回2人ずつが担当するようにしています。そうしたら少し余裕ができて、また楽しめるようになってきました。


 そんな試行錯誤の中で、一番嬉しかったことは、レジでの接客を担当している学生アルバイトの子たちが企画に参加してくれたことでした。彼らは担当の棚を持っていないので、このおすすめ本企画で初めて、自分で本を選んでPOPを書くということを経験しました。そして、自分が選んだ本が売れるとみんなとても嬉しそうでした。働いている期間が長くなると忘れてしまいがちな〈本屋の仕事の喜び〉に、彼らのその姿を見てあらためて気づかされました。そうそう、このワクワク感が大事なんですよね。

 棚作りからイベント開催まで、「SUPERワクワク」という一貫したコンセプトで活動していますが、やはり大切なのは自分がワクワクできるかどうかということ。もちろんお客様のことも考えていますが、自分たちが面白いと思えないものを、お客様にはおすすめできません。棚を作るときも、イベントをやるときも、まずは自分がワクワクできるかどうかを考えます。書店員に元気がない本屋より、ワクワクしている本屋の方がお客様にとってもきっと魅力的なはず。そして、「ワクワク」を基準にして仕事をしていると、これまでの仕事の枠組み(担当ジャンルとか役職とか社歴とか)が取り払われる気がします。そうして見えてくる同僚たちの新たな一面もまた、私をワクワクさせるのです。


 私がSUPERワクワク隊の隊長になって早1年以上。最初はSUPERワクワクってちょっと恥ずかしい……という思いがなくはなかったのですが、いつのまにかスタッフの間でも「ワクワク」という言葉が浸透し、今では何の抵抗もなく「ワクワク」という言葉を使うようになりました。「この新刊、ワクワクする?」「次の月曜はワクワク会議ね」など、仕事中の会話には普通に「ワクワク」が溢れています。こんなに「ワクワク」という言葉を口にした1年はこれまでになかった!(この原稿も「ワクワク」が多すぎますね。笑)

 みなさんはワクワクしてますか?



この春、大好評だったフェアのカタログ



紀伊國屋書店新宿南店を訪れると、みなさんまずはワクワク棚をチェックするようで、棚の前はいつもお客さんでにぎわっています。今春、大きな反響を呼んだ「出版社社長がおすすめするこの春、新しく何かをはじめる人に読んでほしい本。」フェアでは、81人の社長が自社本・他社本を問わず選んだ、背中をぐっと押してくれる説得力ある本が、社長のコメント付きでずらりと並び、圧巻でした。著者と編集者を迎えて行なうライブトークの企画も手がけるなど、常にみんなを巻き込んで面白いことをしたいというパワーあふれる神矢隊長。これからもワクワクさせてください!(事務局・天摩くらら)

(「NR出版会新刊重版情報」2012年12月号掲載)

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