2015.03.02 up 




NR出版会連載企画 書店員の仕事23
設立四五年、模索舎の可能性への思いがあるから
榎本智至さん模索舎・東京都新宿区


「あっ、こんなところに本屋がある!」「古本屋があるよ」。土・日曜の休日、店番をしていると必ず耳にする店の前を通り過ぎる若いカップルの会話。よく模索舎について語られるイメージは、「おっかなそう」「入るのに勇気がいる」。また、昔に模索舎に通っていたという年配のお客さんが久しぶりに来店すると必ず言われるのが、「模索舎まだあったんだ」……。そして、「以前あった場所と同じ場所ですか」との電話での問い合わせも。
 一九六九年の二月、新宿西口地下広場にベトナム反戦運動であるフォークゲリラが出現、七月に機動隊の排除によって地下広場が「地下通路」となった一年後の一九七〇年一〇月、新宿御苑そばの新宿二丁目にあった新築物件のビル一階にオルタナティブな情報発信の場としてスナック部門の「スナックシコシコ」と書店部門の「情報センターへの模索舎」は営業開始しました。一九七二年にスナック部門を廃止し、書店としての「模索舎」へ。そして、今年の二〇一五年で設立から四五年となります。

 模索舎は「ミニコミ・少流通出版物取扱書店」を掲げています。店内にはミニコミ、市民運動のパンフに新左翼から右翼までの機関紙、漫画から社会・人文書まで出版社の書籍、CDやTシャツが並んでおります。新左翼党派の機関紙の品揃えに関しては、現在となっては模索舎が全国随一かもしれません。
 設立当初から現在まで、模索舎の特徴として、一般の書店では見ないような書籍流通ルートには乗らない自主流通出版物(ミニコミやパンフなど)を取り扱う書店であり、作り手の表現をそのまま第三者に伝えるために、持ち込まれる出版物は「原則無審査」で取り扱っています。また、出版社の書籍に関しては取次会社を介さず、取引のある出版社から直接本を仕入れています。本郷や神保町界隈など、模索舎から訪問できる範囲にある出版社は、コンテナを載せたスーパーカブに乗って訪問し、集荷や返品を直接行っております。NR出版会に加入されている出版社の多くは、模索舎と昔からお付き合いがあります。

 二〇〇九年四月に模索舎舎員になってから約五年、私が入舎した当初は三人でしたが、二人の舎員で運営するようになって数年が経ちます。
 状況の変化といえば、模索舎では、社会運動関係のパンフの売上は過去よりも減っております。また、社会運動関係書籍の売上も言わずとも……です。社会運動に関してはインターネット(特にツイッター)によって情報発信し易くなった、また、情報を知る速度も速くなった、というのもあるでしょう。紙よりもネットの比率が高くなっています。
 NR出版会関係だと、バックナンバーを取り揃えていた『インパクション』が二〇一四年秋に休刊したのも大きなニュースでした。
 しかし、出版という手段だからこそ出来る表現があり、知りえる情報があります。店頭の書棚は「模索舎だったらこの本はあるだろう」という模索舎を利用してくれるお客さんの期待に応えたい、出版という形で表現をしたい作り手さんには、模索舎を通して表現を広げてほしい、また、「模索舎でしか手に入らないもの」を買いに来てくれたお客さんに、店頭に並んでいるものを見てより面白い世界を広げてもらいたい、言ってしまえば模索舎だから知りえることの可能性への思いがあるからです。

 模索舎の運営は相変わらず厳しい状況ですが、二〇二〇年には設立五〇年を迎えることになります。二〇二〇年には東京でオリンピックが開催されることが決定していますが、そのオリンピックに向けた開発とムードが進むにつれ、公共空間では排除が進み、また、政治の右傾化と排外主義が跋扈し、多様性といったものが排されていく中で、どう抗し存在していくのか。映画『893愚連隊』(中島貞夫監督)での荒木一郎のセリフを借りれば「ネチョネチョ生きとるこっちゃで」でやっていきたいと思います。



模索舎の入り口には「怖れることはありません。どうぞお気軽にお入り下さい。」という看板がかかっていて、本やパンフレットであふれる店内には、じっくり吟味するお客さんや、ときには外国の方も見かけます。『メディアと活性』(インパクト出版会、2012年)のなかに模索舎創設者の故・五味正彦さんのインタビューが載っていて、模索舎の歴史を詳しく知ることができます。(事務局・天摩くらら)

(「NR出版会新刊重版情報」2015年2月号掲載)

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