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技術の特質、それを踏まえた法政策論が必要
張 輝  2001.1.11.


東洋大学経営学部 関智一先生 技術戦略



もともと、技術とは、広義には「物事を巧みに行う技」を指すものであり、やや狭義には「科学を実地に応用して自然の事物を改変・加工し、人間生活に利用する技」を指すものである*1。 本稿では、「技術」といった場合、これは以上で述べたような広義的又は抽象的なものを指すものではなく、後述する「技術の特質」を固有する知的財産権との関係を有する具体的技術を指すものである。

この具体的技術とは、実在する様々な技術の分野を遮ることのない法的観点から見て、知的財産権として認められることになる一つ前の段階の色々な技術(以下「前記技術」という。)、既に知的財産権となった特定の技術(例えば、特許技術や著作技術など、以下「権利技術」という。)、及び知的財産権となったことのある特定の技術(すなわち法的権利期間がすぎた技術、以下「後期技術」という。)のことを意味する*2

製品と異なる現代的技術の特質

繰り返すことになるが、知的財産権は、有体物(本稿の場合は「製品」)に対する権利としての一般財産権と区別する、無体物(本稿の場合「技術」」)に対する権利である。そこで、一般財産権の行使と異なる知的財産権の行使の特質を考察するためには、まず製品と異なる技術の特質を考察する必要があろう。 もともと技術の特質については、様々な視角から考察されているが*3、以下においては、商品という視角から技術の主な特質を簡単に見ておきたい。

@知的無形性。技術は車、テレビ、茶碗、パソコンのような、可視の有形商品と異なり、特許技術明細書(specification)、フロ−チャ−ト、設計図などのような不可視の無形な図面資料などによる知的商品であり、いわゆる「占有不可能性(in-appropriabi-lity)」という特質を持つものである*4。  

A重複再生性。技術は一般の製品とは異なり、一つの同一の商品でも、何人の者が同時に用いられるし、また何回でも繰り返し使用できるものであり、しかも、権利技術は他の技術との代替性が少ないため、より重複再生されることになる、という特質を持つものである。  

B相互関連性。技術は、特に今日のコンピュ−タ技術の発展を見たように、色々な技術の間では「自律的発展」を通じて相互利用・接合が行われ*5、「技術のシステム化」とも言われる内在的相互関連性(mutual interdependence)がある*6。また、現代的技術革新は異分野間あるいは境界領域で「多くの技術的改善の累積的で連続的なプロセスである」ので*7、この技術の相互関連性がより顕在化されつつある。  

C潜在価値性。技術は、それを製品化して最終的な利益を得るだけでなく、前述した相互関連性の特質を有することもあって、それぞれの異分野間また多領域で数々の波及効果を及ぼし、大きな付加価値を生み出すという、著しい潜在価値を内蔵する特質を持つものである。

また、このほかに、D高額換金性、E法的保護性、F時効的効果性、なども指摘されている*8。そこに、なおかつ注意を払わなければならない点として、現代的技術及び技術革新の進展によって、Fを除いた諸特質はより強くなりつつある傾向にあることをもたらしている*9。このことが現代的な科学技術政策等を検討する際にしては決して看過してはならない重要なことである、と指摘できよう。

技術の特質による法政策論への要請

もともと、「法律は、言語的可能な範囲でその意味・内容を社会・経済の発展に応じて変遷させるが、ここには一定の限界があ」り*10、特に技術ライセンス規制は、内容的に、技術や経済とは極めて密接な関連性を有するものであるので、同規制の実質的な運用においては、結局、一定の時代・国家における具体的な法政策の展開に依拠せざるをえない、という特質を持つと言える。  

例えば、技術ライセンス規制に関しては、米国では独占禁止法上の問題として純粋な法律欟念的判断ではなく、ことに「合理の原則」論による判断に見られるように、これは実質的に法・経済政策的な判断に強く影響されるものである。もとより、技術ライセンス規制に限らず、広く一般に、独占禁止法違反するかどうかという法解釈論的問題は、結局「背景事実」による法政策論的判断によって大きく左右されることになるのである。  

また日本でも、時代的背景の変化によって、関連ガイドラインが制定し直されており、具体的な事案に対する法的判断は、一定の時代における政策的判断によって強く影響されることになるようにと思われる。さらに中国などにおいても、このようなことは当てはまるものであるといってもよいであろう。

これは言うまでもなく、技術や経済そのものが必ずしも人間の意志のままになるものではないし、技術や経済現象を完全に法による規制の下に置くのは極めて難しいこともあって、特に今日において大いに注目されている「知的財産権法と独占禁止法」についての法的議論は、実に「隣接法学との接点問題ではなく、競争政策等に密接に関連した問題として検討される必要性が明らかになった」からと考えられよう。  

また、前述した技術ライセンス規制の理論的根拠の一つである産業組織論などに関連する経済学上も、多くの新しい問題解明が求められている*11。よって、同規制の実質的な運用は、まさに「複数の制度相互間及び制度の中の諸要素相互間で不断の衝突・調整が行われている動態」*12の中にある。そこで、同規制の展開は一国の一定の時代における技術的・経済的背景に基づいた法政策論のあり方に依拠せざるをえないことから、常に適正な法的判断を行うことに連なる法政策論的検討が特に必要となる。  

具体的には、ここでの法政策論として、もし技術ライセンス規制を例にして言えば、その「背景事実」の解明及び政策的判断を、主として競争政策に密接に関連した問題として考慮し、それを法解釈論に反映させ、またその逆の方向で検討するという「フィ−ドバック」思考が極めて重要である、と私は思う*13。これは科学技術の日進月歩は私達の思考様式や生活に更なる大きな変化をもたらすことであろうと思えるからこそである。



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