第弐拾弐話『せめて、6番らしく(せめて、ろくばんらしく)』

「最近の山崎さんの打率、下がる一方ですね。」

「困ったもんだ、この余裕のないときに。やはり、壱号機を優先させよう。今は同時に調整できるほどの余裕はない。」

 

「(弐号機の打順、変更も止むなしか。)」

 

「山崎のプライド、ガタガタだな。」

「無理ないな、あんな三振しちゃ。というより愛甲に負けた、と思い込んでる方が、大きい。」

 

 

「バットには、心がある。」

「あの棒に?」

「わかってるはずだ。」

 

「くそっ、俺が打てないのがそんなに嬉しいか?

心配しなくてもチャンスになったら、無敵の愛甲様が打ってくれるんだ。俺たちはなにもしなくていいんだ。ああ、でくのぼうみたいなあんたにまで同情されるなんて。」

「俺は人形じゃない。」

「うるさい!あんた、星野監督がぶつけろと言ったらぶつけるんだろ。」

「ああ。」

 

 

「中日×巨人 開始時刻18:00まで、あと一時間。ドラゴンズ、打撃練習を開始してください。」

「G球団、まだくるのか?」

 

「…六番ファースト大豊、七番キャッチャー中村、八番レフト山崎…」

「八番…俺が…中村の後?」

「そうだ、下位に回れ。」

「冗談じゃない、俺は六番だ。」

「おい、ばかをいうな。」

「かまわん、6番にする。」

 

「しかしヘッドコーチ、…まさか、これが最後のチャンス?」

「新しいレフト、考えておくぞ。」

「…はい。」

 

 

弐回表 弐死

第壱打席

 「落ちる球を、スタンドにたたき込む!」

 壱球目 スライダー ストライク

 弐球目 直球 ストライク

 参球目

 「きたっ、内角へ落ちるシンカー…えっ?」

 参球目 カーブ

 ライトM井へのフライ

四回表 壱死

第弐打席

 「さっさと落ちる球を投げろよ。」

 セカンドフライ

七回表 無死

第参打席

 四球目 シンカー

 「こんちくしょぉぉぉぉぉっ!」

 空振り三振

九回表 壱死弐塁

「バッター山崎に代わって、代打愛甲。六番レフト愛甲。背番号9。」

 

「DERAシステムを中四日で…、監督それは…。」

「あまりに危険です。監督、やめて下さい。」

「……。」

「うそ、欺瞞なのか。FA制度の発足は、G球団の接触が原因ではない。」

 

「監督、まだ早いのでは?」

「理事会は試合数の増加に着手した。チャンスだ、小松。」

「しかし。」

「時計の針は元には戻らない。だが自らの手で進めることはできる。」

 

 

ネクストバッターズサークルから打席に歩み寄る愛甲。

「広岡が動く前に全て済まさねばならん。今G球団に敗れるのは得策ではない。」

「かといって、コミッショナーを説得するのはめんどうです。」

「理由は存在すればいい。それ以上の意味はないよ。」

「理由?監督がほしいのは口実でしょう。」

 

 

中6×1巨

勝 井手元

敗 斎藤

本 愛甲(九回2点斎藤)

−つづく−

 

 

予告

弱小G球団にとりつかれ、犯されていくドラゴンズ。その侵食から貯金を守るため、中村は自らの死を希望する。第三東京ドームと共に赤い土となり、彼は消えた。

次回『猛(たけし)』

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