PISA調査の読解力と情報・美術教育PPISA調査の読解力と情報・美術教育
Arts Education reinforce students' literacy skills.
美術教育は生徒の読解技術を補強する。
For"Picture Power"

江戸川区立篠崎小学校 川島真紀雄

3年生「ファッション・ショー」
 

1.はじめに

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku/siryo/05122201.htm
<平成17年12月 文部科学省>
 
 平成16年12月に、「生徒の学習到達度調査」(PISA2003:Programme for International Student Assessment 2003)の結果が公表されました。
 PISA調査は、OECD(経済協力開発機構)によって実施され、今回の調査では41ヵ国/地域が参加しました。我が国では、平成15年7月に、高校1年生約4,700人を対象に実施されました。 知識や技能等を実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるのかについて、「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」「問題解決能力」の4分野にわたり主に記述式で解答を求める問題により調査が行われました。
 この調査の結果では、我が国の子どもたちの学力は、「数学的リテラシー」、「科学的リテラシー」、「問題解決能力」の得点については、いずれも一位の国とは統計上の差がなかったものの、その一方で、「読解力」の得点については、OECD平均程度まで低下している状況にあるなど、大きな課題が示されました。
 これを受けて文部科学省では、省内に「PISA・TIMSS対応ワーキンググループ」を設置し、調査結果の評価・分析を行いました。そして、この国際的な学力調査の結果に基づき、我が国の状況を踏まえて教育委員会や各学校で自己評価や授業改善を行えるよう、『PISA調査(読解力)の結果分析と改善の方向(中間まとめ)』を作成し、平成17年1月19日に臨時全国都道府県・指定都市教育委員会指導主事会議を開催し、同資料を配付しました。
 その後、さらに分析、検討を行い、指導例を加えて、『読解力向上に関する指導資料―PISA調査(読解力)の結果分析と改善の方向―』として取りまとめました。

 本稿では、まずPISA型読解力の分析から情報・美術教育の共通課題を探り、視覚美術(言語)の発展とともに成長を遂げてきた美術の歴史を振り返る。次に文部科学省が提案する改善の方向を基に、当面する読解力という課題を整理して、これからの美術教育の学力について探求したい。
 

2. 定義・ねらい
PISA調査における「読解力」は次のように定義されている。

自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力。
 
 
 このような定義の下で、「義務教育終了段階にある生徒が、文章のような『連続型テキスト』及び図表のような『非連続型テキスト』を幅広く読み、これらを広く学校内外の様々な状況に関連付けて、組み立て、展開し、意味を理解することをどの程度行えるかをみる。」ことをねらいとしてこの調査は実施された。すなわち、この調査は、義務教育修了段階の15歳児が、その持っている知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを評価することを目的としている。したがって、特定の学校カリキュラムがどれだけ習得されているかをみるものではないこと、我が国の国語教育等で従来用いられていた「読解」ないしは「読解力」という語の意味するところとは大きく異なることに注意する必要がある。<サイトより引用>
 5年生「イラスト(CG)」観察の単純化など
PISA調査の特徴
PISA調査の読解力の問題には次のような特徴がある。
 まず、読むテキストには、「連続型テキスト」と呼ばれている文章で表されたもの(物語、解説、記録など)だけではなく、「非連続型テキスト」と呼ばれているデータを視覚的に表現したもの(図、地図、グラフなど)も含まれている。加えて、教育的内容や職業的内容、公的な文書や私的な文書など、テキストが作成される用途、状況にも配慮されるなど、テキストの内容だけでなく、その構造・形式や表現法も、評価すべき対象となっている。
 また、読む行為のプロセスとしては、単なる「テキストの中の情報の取り出し」だけではなく、書かれた情報から推論して意味を理解する「テキストの解釈」、書かれた情報を自らの知識や経験に位置付ける「熟考・評価」の3つの観点を設定し、問題が構成されている。
 さらに、出題形式は、選択肢問題のみならず、記述式問題も多く取り入れられており、テキストを単に読むだけでなく、テキストを利用したり、テキストに基づいて自分の意見を論じたりすることが求められている。<サイトより引用>
 
結局、情報を一方的に受けて理解するのではなく、自分で編集したり、表現できる能力がこの調査では測られている。
 PISA調査からの読み取り
 人間は、情報の80パーセントを視覚から取得していると言われている。学校教育の現場では、中でも、文字情報―「読解・表現テキスト」が児童・生徒の知識と理解を測る重要な手段として認知され、標準「学力テスト」として扱われてきた。つまり、日本では伝統的に、テキスト(漢字)を暗記し、テキスト(ドリル)をくり返す学習が主流を占めてきたと言える。
 しかし、そうした学習方法は受験や文化・伝統の継承には適しているが、実際の場面において、自ら判断したり、問題解決する児童の育成には向いていなかった。PISA調査の方法はペーパーテストを用いているため、目標の達成や社会へ参加する学力は判定できないが、今回の結果は機械的な読み取りでなく、主体的で、実際的な読解力が不足していることを示している。「数学的リテラシー」、「科学的リテラシー」が優れていたのは、ただの知識や読書の量ではなく、数学的・科学的な読み取り方や考え方が生徒の中に蓄積されていたからではないだろうか。

●数学的リテラシーとは、「数学が世界で果たす役割を見つけ、理解し、現在及び将来の個人の生活、職業生活、友人や家族や親族との社会生活、建設的で関心を持った思慮深い市民としての生活において確実な数学的根拠にもとづき判断を行い、数学に携わる能力」である。
●科学的リテラシーとは、「自然界及び人間の活動によって起こる自然界の変化について理解し、意思決定するために、科学的知識を使用し、課題を明確にし、証拠に基づく結論を導き出す能力」である。
PISA(OECD生徒の学習到達度調査)2003年調査』
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/04120101.htm
 

 平成17年10月26日に中央教育審議会は、「新しい時代の義務教育を創造する」(中央教育審議会答申)を出した。この中で、「(2)教育内容の改善 イ 学習指導要領の見直し」の項目の中で、「国語力はすべての教科の基本となるものであり、その充実を図ることが重要である。」と述べている。
 「国語力」とは、なんであろう。そこでは、言葉を過剰評価している。人間の基本的な問題の把握や、その解決策は、テキストの読み取り力とはほとんど無縁である。テキストで答えられるクイズ形式の答えなどは、現実には意味をなさないことが多い。言葉を超える読解:図をも含めた読み取りの多面的アプローチをPISA調査は求めている。

 また、PISA調査(読解力)の結果から明らかになった課題として、我が国の生徒は、「テキストの解釈」、「熟考・評価」、とりわけ記述式の問題を苦手としていることが明らかになった。この結果は、読む能力にとどまらず、書く能力とのかかわりを示唆している。また、このような力は、まさに自ら学び自ら考える力など「生きる力」に直結するものであり、教科国語の学習指導の中のみにとどまらず、学校の教育活動全体でこのような能力を身に付けていかなければならいという方向性も示している。<サイトより引用>http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku/siryo/05122201/002.htm
 
 今後は、文字・数・図・モノなど、様々なメディアを用いて情報を構成したり、判断する力・表現する力が益々大切になることをこの調査は訴えている。まさに、人生とは単純に―テキストの調査書・履歴書・経歴で終わるのではない。テキストに変換できないイメージや想い、思い出、喜び、魂で私たちは生きている。

 
 
 6年生 淡彩画「ビン」“筆で質感を表す”
 『本校学校美術館』より

3.美術・情報教育からのアプローチ

テキストとスケッチ
I believe drawing is very important.
私は、図画(スケッチ)がとても重要だと信じている。
I believe traditional “observational” drawing must be taught but at the same time offer students other alternatives.
伝統的な観察画は教えなくてはならないが、同様に児童に他の選択肢を教えなければならないと信じている。
平成15年度<全校写生会>

PISA調査(読解力)の結果を踏まえた指導の改善
 PISA調査の結果を踏まえ、文部科学省では教科国語を中心としつつ、各教科、総合的な学習の時間等を通じて、改善の取組を行う必要がある。として、次の3つを示している。
改善の具体的な方向
@テキストを理解・評価しながら読む力を高めること
Aテキストに基づいて自分の考えを書く力を高めること
B様々な文章や資料を読む機会や、自分の意見を述べたり書いたりする機会を充実すること。
 
@テキストの理解・読み取りとヴィジュアル・リテラシー(視覚的な読み書き)

(視覚化する情報)情報を目に見えるようにすることは、読解を学ぶときに重要な、早期のステップです。
美術は、学生が読むことを学ぶように、イメージ(画像言語)が描写するものを視覚化します。
Visualizing information is a vital early step in learning to read.
Art helps students visualize the images words represent as they learn to read.
By Kenneth A. Wesson <American School Board Journal>

 
テキストを用いない生物は、行動のデータを内と外から取得している。餌の取り方、巣の作り方、生殖の仕方などを、遺伝(本能)として備わっているものを、観察や学習で補強している。
 人間も同様に、民族の血・気質・生育歴などから、無意識のうち(内)にデータが蓄積・形成されている。つまり、学習の場面でも、私たちは既習体験や知識などのフィルター通して情報を読む込むため、全く白紙の状態で受容することはできない。
 即ち、テキストを含めた情報に対して、私たちは関心・意欲・知識・履歴などによって、無意識にデータを取捨選択して、取り込みながら生活をしているのが現状である。
好きなことに目がいく
 現実でも、授業でも、「始めに言葉あり」ではない。人間は、学習や情報に対して、「始めにイメージあり」である。苦手意識を持っていたり、無関心な情報に関して、児童・生徒は心を動かして素直に受け付けようとはしない。これは、読み取り・情報教育の起点になるであろう。
 もちろん、美術の授業における鑑賞指導と同じく、テキスト(図)の内容や筆者の意図などを解釈することは必要な読解である。しかし、「私たちは初めから色眼鏡をかけている」という認識を指導者が持ち、苦手な課題や嫌いな情報は受け付けようとはしない面を理解していなければならない。
 興味を持って、見せる、理解させる学習は、美術教育でも導入の大切なポイントになっている。
見ながら読む
 “「観る」とはすでに一定しているものを映すことではない。無限に新しいものを見いだして行くことである。だから、観ることは直ちに創造に連なる。しかしそのためにはまず純粋に観る立場に立ち得なければならない。”<和辻哲郎『風土』P106> 課題や情報を受容する場面で、見ること、読むことは最初の学習活動になっている。

 次に、美術教育においては、見るモノは自然だけでない。名画や、作品、製品などの物質的なモノから、内面、地球のような生命までも観て、読み取る範疇にしている。そして、授業においては与えられた情報・対象・課題を、「知識・理解から―、感性から―、手触りから―、しくみから―」多面的に評価をしながら、全身で読み取る力を高めようとしている。
 テキストより莫大な現代の「視覚情報」を読み取り、判断し、デザインしていくトレーニングは、生きる力の根底をなす美術の学力(=Picture Power)である。
 さらに、自分の知識や経験と関連付けて、建設的に批判したりするような読み(クリティカル・リーディング)を充実することも求められている。純粋に観るとは、情報を鵜呑みにすることではない。言うまでもなく、現実やインターネットの世界では、「情報はすべて正ではない」。残念ながら、この理性(懐疑心)をこ身に付けることは、情報モラルの基本学習になっている。
 つまり、純粋に観るとは、自分の理性と感性が覚醒している状態を指しているのであろう。学校現場で評価しながら読む力を高めるには、児童・生徒に教え込む学習ではなく、自分で考えたり、確かめたり、判断する学習機会を充実することが大切であろう。図工・美術教科では、鑑賞の時間がその貴重な体験になっている。

 6年生「環境ポスター(CG)」“図とテキストで訴える”

Aテキストに基づいた考え・表現と ヴィジュアル・シンキング(視覚的思考)

 改善の具体的な方向2と同じく、美術教育ではデータをそのまま複写する作品づくりを目指しているのではない。西洋美術史に登場した「写実主義」とは、決して盲目的な絵画運動ではなかった。それは、中世のキリスト布教美術やルネッサンスの貴族好みの美術ではなく、作家が自分の視点で画像選んで描きだした時代なのである。自我に目覚めた作家は、その後、自分の目や心にに忠実に描きたいものを探し、西洋近代絵画が展開されることになる。http://www5c.biglobe.ne.jp/~wonder/sub0007.htm
 その後、美術史では自然や外界に対する作家の解釈から、印象派、後期印象派、構成主義、表現主義、抽象主義など、様々な絵画様式が広がっていく。
自分と対象に基づいて表す
 算数の「足し算」や国語の「あいうえお」のように、この教科でも基礎的な内容を習得する学習課題はあるが、大きな目標は情報を自分の感性や解釈を基に、外に表すことである。 
 つまり、美術教育の使命は対象のコピーや道具の上達ではない。創作体験として、自分に基づき(感性・関心・技術)、与えられた情報の解釈や問題解決・再構成を学んでトライしていく場面である。そこでは、常に自分の意見を述べたり描いたりする活動を充実することが求めらている。
 これを、「多面的な情報の読み取りと表現」に置き換えると、初等中等教育における情報教育の目標と合致している。

風景画の様式 Many Styles in Landscape Painting

平成15年度<全校写生会>

美術には多くのスタイル(審美的な姿勢)があります。
ほとんどの生徒は、個人的なスタイルまたは特有の筆跡を発達させます。
There are many styles (aesthetic stances) in visual art. Most students develop very personal styles or unique handwriting.

生徒は、どのように風景画で特別のムードまたは、感覚を作成することができましたか?
How could the student create a particular mood or feeling in a landscape painting?
生徒は自分の作品の個性を認識するでしょう。
Students will appreciate the unique characteristics of one's own art work..
生徒は個人の方法で自然を解釈するでしょう。
Students will interpret nature in a personal way.
生徒は描くものを制限して選択する方法を学習するでしょう。
Students will learn how to limit and select what to draw.

@ 情報活用の実践力
課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて,必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力


<図画工作科の目標>
 表現及び鑑賞の活動を通して,つくりだす喜びを味わうようにするとともに造形的な創造活動の基礎的な能力を育て,豊かな情操を養う。
●〔第1学年及び第2学年〕
1 目 標
(1)表したいこと,つくりたいものを自分の表現方法でつくりだす喜びを味わうようにする。
(2)材料をもとにした造形活動を楽しみ,豊かな発想をするなどして,体全体の感覚や技能などを働かせるようにする。
(3)かいたり,つくったりしたものなどを見ることに関心をもち,その楽しさを味わうようにする。

 「テキストに基づいて自分の考えを書く力を高める」ことは、必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造すること。美術教育においては、観察や想像に基づいたり、材料をもとにして、表現を高めることである。あるいは、単純にテキストから構想画を描いていることである。
 さらに、文部科学省の言う、「自分の経験や心情を叙述するだけでなく、目的や条件を明確にして自分なりの考えを述べたり、論理的・説明的な文章に対する自分なりの意見を書いたりするなどの機会」とは、相手や周りを意識したり、受け手の情報などを踏まえて発信・伝達するプレゼンテーションやデザインの学習になっていくだろう。
 
6年生「よい車をつくろう」“周りを意識した自動車のプレゼン”
(図画)スケッチは考えを表すための方法
Drawing is a method of expressing an idea.


情報モラルと批判的な読み取り
 
 
情報モラルの視点としては、 「テキスト(情報)を肯定的にとらえて理解する」よりは、『外からの情報を鵜呑みにしない、内からの情報に圧し流されない』ことが、今後生きる力として児童・生徒の大きな課題になっていくだろう。
 このことは、情報リテラシーとして、テキストや情報に対して自分という視点や自立性を常に持つこと。情報メディアに対して幅広い知識や理解を持つことの必要性を説いている。
 <参照:筆者管理サイト>
○「ネット、その前に」http://www.edogawaku.ed.jp/shinozakis/promise.html
○「つくった人を守る著作権の学習」http://www006.upp.so-net.ne.jp/artcommunal/frame.htm
B情報リテラシーとヴィジュアル・コミュニケーション

 「様々な文章や資料を読む機会や、自分の意見を述べたり書いたりする機会を充実すること」が3つめの方向である。Leading Literacyとして、文部科学省では「文学的文章だけでなく、新聞や科学雑誌などを含め、幅広い範疇の読み物に親しめるよう、ガイダンスを充実することが重要である」と述べている。

Visual Literacy 視覚的な読み取り能力
 テキストの形式としては、次のように分類されている。<連続型> 文と段落から構成され、物語、解説、記述、議論・説得、指示、文章または記録などに分類できる。<非連続型>データを視覚的に表現した図・グラフ、表・マトリクス、技術的な説明などの図、地図、書式などに分類できる。
 テキストと交互して、効果的に視覚社会に参加するために、美術教育はヴィジュアル・アートとして、すべての視覚情報を範疇として取り込み、加工・変形などを行いながら、表現したり、創造したりする具体的な実践を行っている。
 Visual Literacyとして多面的な視覚的なデータを扱い、「モノ」や「作品」を読む機会や意見を述べたり作ったりする機会をさらに充実させていく必要があるだろう。
 つまり、視覚を中核として、見取る力、読む力、表す力を総合的に高めていくプロセスを確立させていくことが大切である。 ヴィジュアル・コミュニケーション力

Complete literacy includes the ability to understand, respond to, and talk about visual images.
The National Art Education Association
http://www.naea-reston.org/whyart.html
完全な読み書き能力とは、理解する能力、応答する能力、視覚イメージを話す能力を含んでいる。

PISAの読解力と確かな学力図との関係
 PISAの読解力とは、テキストが8つの学力に結び付き、確かな学力として、「生きる力」に繋がる読解力。

●Linkages:
連絡・結合・つながり・連鎖
が確かな学力のキーワードになるだろう。



デザイン・工作の能力

 カルチャーとして、趣味の絵手紙だけではない。自分の意見を述べた、描いたりするスケッチ(drawing)の機会を充実することは、幅広い範疇のモノづくり、アイディア、生産の場面に欠かせないデザイナーという職業の基本になっている。
 また、「新しいアイディア」、「手仕事」や「創造的要素」が生まれるような工房現場の体験もしている。
 今後とも、知識と技能のガイダンスとして、その総合的実践によるアーツ&クラフトや人間の進化の結果である機械技術を活用した機会など、様々な活動を充実させていきたい。
 
経済史家ゾンバルトはその著『近世資本主義』*1のなかで、以下のように記述している。

「手工業者は、その工業的適性という才能につけ加えて次のような能力をもっている。
1.必要な芸術的直感、芸術的感覚
2.生産や技術の伝授に必要な知識と学力
3.生産の組織者、指導者としての機能、総支配人、親方、助手を一身に兼ねる。
4.商人でもある。」
(1848年、シュレジェン手工業組合総会議案のブレスラウ手工業者階級再組織中央連盟覚書p3より)
*1Werner Sombart (1863~1941)
6年生「木工作」“腕は自分でつくる”

*モリスは社会改革の具体的実践として、クラフトマンシップの19世紀における復活を試みた。まさに、モノづくりとは、人づくりである。
 

4.美と幸せのための読解力
 
 今後は、学校現場への要請として、子どもたちのPISA型「読解力」の向上を図るため、文部科学省で作成した「読解力向上に関する指導資料」や、作成するハンドブック・事例集等を参考にしつつ、「3つの重点目標」に沿って授業改善に取り組むことが求めらていくだろう。また、文部科学省としては、教育委員会と連携しつつ、プログラムで示した下記の「5つの重点戦略」を積極的に進めていく予定である。
 「ゆとりと生きる力→確かな学力と生きる力→PISA 型読解力」と移行している文部科学省の意向。そこに共通しているのは、知識偏重の狭い学力観の払拭であろう。人間の全体的な成長や、総合的な学力を推進していこうとしている美術教育は、それに批判するよりは同調していく意志を持つべきであろう。
 しかし、ヴィジュアル・アートの立場をとりながら、この教科では、パソコンやスケッチを軽視する風潮が見られているのは事実である。総合的な学力として、IT技術や視覚時代に対応している美術教育の意義を認めず、教科の削減が進められているのも事実である。
 今回『PISA調査(読解力)の結果分析と改善の方向』は、視覚的な読解力を考え直すよい機会になった。
 読解しにくい論文に対するご感想をお待ちしています。改善の方向に踊らされて、すぐポスター制作をするようでは、このWebテキストを理解・評価したことにはならないと思います。
 この教科では、常にPISA型を行っているはずだからです。
 テキスト・図・情報・道具・機械を用いて創る―モノづくり、幸せづくり、人づくり、世界(地球)づくり。時代を超えて、美術教育の総合的な学力が、広く社会に認知されていくことを願っている。
 総合的な学習の時間 5年生「創作和菓子」“伝統と創作”
<参照:筆者管理サイト>
美術教育・アートの力  http://www006.upp.so-net.ne.jp/artcommunal/ArtEducationProgram.html
○学校美術館(視覚的学力)
http://www.edogawaku.ed.jp/shinozakis/zukou4.html
http://www.edogawaku.ed.jp/shinozakis/pasokon2.html
http://www5f.biglobe.ne.jp/~eLearning/Schoolgallery.htm

 
5.おわりに

 日本の教育は、言葉に偏ったPISAの斜塔であったかもしれない。
 「総合的な学習の時間」は、どんなに意義ある体験をした後でも、最後にテキストでまとめをさせることに重点をおき、その目的を形骸化させてしまった。即ち、児童の感想用紙がよくかけていることが、テキスト力が、良い授業と判断されるポイントだった。また、講師の言葉で、その授業の評価がなされてきた。
 つまり、成果がテキスト・言葉だけで評価される傾向が大きかったように思う。歴史的に見ても、人類は聖書・憲法など、テキストの解釈や判断の基に多くの争いをしてきた。『ダヴィンチ・コード』
 核保有国に対し、都市を核攻撃の目標にしないよう求める「平和市長会議」の宣言は、真によい宣言なのだろうか?
 
 現在、いつも本から情報を得て、本を持ち歩くような、テキスト優位の時代は終わろうとしている。今回の調査でも、短絡的に読書時間を増やし、作文を多く書かせるなどの方策を採るとることはないであろう。
 むしろ、インターネットを含めた新しい情報時代を迎えて、テキスト情報の比重の低下と、多種の視覚情報の危うさに深刻な問題が隠されているように思う。
 「情報量が多いから、取捨選択能力や判断力が求められ、多面的な情報をまとめて表現するデザイン力が今後必要になってくる」というのが本稿の主旨である。言葉を換えれば、すべての情報を扱う情報モラルと、心と美と未来―すべての見えるモノを構成する美術教育は、今後、益々重要な一躍を担っていくだろう。

Art is a language of visual images that everyone must learn to read. In art classes, we make visual images, and we study images.
The National Art Education Association
http://www.naea-reston.org/whyart.html
芸術は、みんなが読解を学ばなくてはいけない視覚に関するイメージの言葉です。美術の授業で、視覚のイメージを作ります、イメージを学習します。
メールでご意見をお寄せ下さい。
 

資料:文部科学省や教育委員会の取組 ―5つの重点戦略―
 
文部科学省では、教育委員会と連携しつつ、上記3で示した各学校におけるPISA型「読解力」の向上に関する具体的な改善の取組を支援するため、次のような施策等(5つの重点戦略)に積極的に取り組むこととする。
 
【戦略1】学習指導要領の見直し
学習指導要領については、本年2月に、中央教育審議会に対して見直しに当たっての検討課題を示したところであり、現在、教育課程部会を中心に全体的な見直しについて精力的に審議を進めていただいている。検討課題の中で、「人間力」向上のための教育内容の改善充実の一つとして「国語力の向上」も示されており、それも含めて審議いただいている。
審議に当たっては、本プログラムで示したPISA型「読解力」の定義や特徴、PISA型「読解力」の結果分析、各学校で求められる具体的な改善の方向(3つの重点目標)等についても検討材料として提供し、幅広くご議論していただいているところである。
 
【戦略2】授業の改善・教員研修の充実
文部科学省では、各地域におけるPISA型「読解力」向上の取組を支援するため、現在実施している「国語力向上モデル事業」を充実し、国語以外(社会、数学、理科等)の教員を中心として、社会、数学、理科、総合的な学習の時間など教科横断的な取組の充実を図ることとする。PISA型「読解力」向上に関する教員の資質向上を図るため、全国の教員等を対象に、教員同士の情報交換、質の向上を目的としたPISA型「読解力」向上に関する研究発表大会(「全国読解力向上フェア(仮称)」)を、文部科学省で新たに実施することを計画している。
また、本プログラムで示した3つの重点目標に沿った各学校の改善の取組を支援するため、文部科学省で作成した「読解力向上に関する指導資料」をすみやかに作成・配布する。なお、この指導資料については文部科学省ホームページで公開するとともに、文部科学省著作物としても出版することとし、各教育委員会と連携しつつ、各学校への積極的な普及・啓発を図る。また、この指導資料に加えて、授業改善や家庭・地域との連携を一層推進するため、今後、教員・一般向けのハンドブックや指導事例集を作成する。
独立行政法人教員研修センターにおいては、今年度から国語力向上に向けた指導者養成研修を実施しているところであるが、今後、本プログラムで示した3つの重点目標や指導資料を参考に研修内容を改善する予定である。また、今年度、フィンランドなど海外の国語教育の現職研修等の状況についての調査研究を行ったところであり、来年度以降の研修内容について、一層の充実・改善を図ることとしている。
 
【戦略3】学力調査の活用・改善等
各学校においてPISA型「読解力」の向上のための改善を進めるに当たっては、学力調査を通じて、子どもたちのPISA型「読解力」の状況を的確に把握し、それに基づいた方策を立てていくことが重要である。
このため、PISA調査の公開問題やこれに類似した教育課程実施状況調査の問題等を学校現場で積極的に活用することが求められる。このことは、子どもたちのPISA型「読解力」の状況の的確な把握のみならず、PISA型「読解力」がどのようなものであるかについて、教育関係者はもとより、保護者や国民一般に周知する上でも重要である。
また、今後、文部科学省で実施予定の全国的な学力調査については、単に知識や技能だけでなく、実生活の様々な場面などに活用するために必要な思考力・判断力・表現力などを含めて幅広い学力を測定する方向で、中央教育審議会での意見を踏まえて、検討を行う。さらに、現在、地方で独自に実施している学力調査や高等学校・大学の入学者選抜試験の学力検査問題についても、知識や技能だけでなく、それらの活用力も重視する方向で改善が図られるよう、各種会議等を通じて、PISA型「読解力」の定義や特徴、公開問題等について積極的に周知する。
 
【戦略4】読書活動の支援充実
読書活動を推進するためには、学校図書館の充実を図る必要がある。学校図書館は、児童生徒の読書活動や読書指導の場としての読書センターとしての機能と、自発的・主体的な学習活動を支援し、教育課程の展開に寄与する学習情報センターとしての機能を果たすものであり、学校教育の中核的な役割を担うものである。
このため、平成14年度からの「学校図書館図書整備5か年計画」を着実に推進し、蔵書の充実を図るとともに、司書教諭の養成・配置や学校図書館担当事務職員の配置など学校図書館の活用を充実していくための人的配置を推進していく。また新たに、教育センター等に置かれる学校図書館支援センターの在り方に関する調査研究を実施するなど、学校図書館の充実を図る。
 
【戦略5】読解力向上委員会(仮称)
「読解力」向上を図るためには、言語についての知識や経験を深めることにより、子どもたちの「「読解力」を支える基礎力」を育成する必要がある。
このため、文部科学省においては、教育委員会と連携しながら、学校のみならず、PTA、図書館協会や全国学校図書館協議会、日本新聞協会や日本雑誌協会など、PISA型「読解力」向上に直接・間接的に関連が深いと思われる関係団体等に対して、地域や家庭との連携、国民意識の醸成などについて積極的に協力するよう働きかけることとする。
特に、PISA型「読解力」向上の重要性について普及・啓発するための推進組織として、これらの関係団体等やPISA型「読解力」向上の取組の趣旨に賛同する各界の有識者などが参画した「読解力向上委員会(仮称)」を、文部科学省が中心となって新たに設けることとする。
 
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku/siryo/05122201/014/002.pdf

美術教育と総合的な学習の時間

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Last updated on  8/22/2007