飛行機を飛ばすこと

 

仮に私が超大金持ちとなり、たとえば飛行可能なP-61ブラックウィドウやら96式艦戦などを手に入れたとしても、米国籍あるいは英国、ニュージーランドなど、ともかく外国籍の航空機にするでしょう(どちらの機種も、いま所有していれば超人気者になれます)。あと、技術や方法の問題として、今の状態の四式戦を飛行状態に復することは充分可能です(これは断言できます。ただしその意義や是非はまったく別問題としての話)。

今日世界あちこちで、思わぬ機体のレストア(飛行可能にすること)が一段と活発に行われていますが、これは海外一部地域(たとえば米国や英国)の顕著な「バブル」と軌を一にすることと思われます。

http://www.flypast.com/

 

1970年代の、あれこれ経済的にあまりうまく行かなかったイギリスでのことです。

飛行可能だった1機のアブロ・ランカスターを、当時の若者のあるグループが、いかに奮闘して、ともかくスクラップだけは免れた経緯の記事を今年初めの「FlyPast」誌で読みました。航空ショーに展示し、維持会を組織して、各地で展示し募金活動に奔るものの、ことごとくうまく行かず、そのうち仲間同士でも対立が起こり・・・。さいわいその機体は、全く別のオーナーにより、現在は地上滑走可能状態で保存されています。

 

純粋な気持ちの航空ファンの方々にはなかなか実感が難しいとは思いますが、飛行機を飛ばすのは、「お金」と「山のようなペーパーワーク」です。部品を図面から再生することは、さほど困難ではありませんが、それを実際に使って、安全に飛行できることを証明するのには、どの国でも想像できないくらいの手間がかかります。

ペーパーワークは、欧米豪ニュージーランドどこでも物凄いものと聞いていますが、それらを組織的あるいは個人的にでもこなしてしまうルート及びテクニックなどの「蓄積」が彼らにはあります。それと、あるレベルまでの社会的な寛容と理解も。飛行状態にある航空機は、オイルやらガソリンのわずかな「匂い」と機体の艶と排気の汚れと、飛べばオリジナルの爆音を残します。

 

ではでは、ウォーバードをいじることが出来るのは大金持ちや一部のプロだけである印象になりそうですが、たとえば米国チノ飛行場にあるプレーンズ・オブ・フェーム博物館は、機体のメンテナンスや組織運営などを「ボランティア」に頼っています。寄付を募り、報酬を受けてほかの「大金持ち」のために積極的にレストアを行い、エアショーに展示し、ともかくお金を稼いでいます。

最近の同博物館のHPには、着陸進入中のSBDドーントレスがビューティフルに映っていますが、あれが1982年に私が見た「ぼろぼろの、ほとんどクズアルミニウム」から復元したものとは信じがたいです。それらには博物館の「メンバー」が運営側として参加します。少なくとも1984年当時、休日の同博物館の格納庫には多くの愛好者が集まって、復元中のコルセアなどにたかっていました(あの頃は平日もなんとなく人がいましたが)。ともかくとても楽しそうな「クラブ」で、じつにうらやましく思えました。

 

このように書きましたが、一方ではスミソニアン博物館の方針「技術上の遺産として、極力オリジナル状態で数百年保存可能な状態に維持する」こともきわめて重要と思います。ただ個人的には、艶のない展示だけの航空機は、「艶の失われたかつての美人」という感想を持ちます。