ご注意:下記翻訳はあくまでご参考用で、正確な記述は原文によるものとします。いちおう航空技術専門家に見てもらっていますが、この翻訳に関する限りいかなる責任も負いませんです。

なお原文は米国の公文書であり著作権は存在しません。この翻訳はいちおう私の著作ですが、皆さまご自由にご使用下さってけっこうです。もし商業的にご使用なさる、あるいは実際にアベンジャーの実物を塗装なさるという方には、ご連絡だけでも頂ければと思います。

Revisions: 2007.09.22末尾に解説というか私の考察を添えました。

セクション VII 塗装・表面処理仕様書

 

a.      概要

ここでは現地部隊において修理・交換した航空機の金属材料、羽布及びプラスチック各材料部材の再塗装を含む表面処理および必要な手順と資材についてのみ述べる。

 

TBM-3型機の最初の1623機(海軍シリアル番号:22857-2365668062-68884)は、図444(訳注:末尾)に示す迷彩塗装が施されている。

 

1624号機以降においては、下記の場合を除いて全面グロッシー・シーブルーで塗装されている。

(1)    羽布部分で、それまではグロッシー・シーブルー、グロッシー・インターミディエイト・ブルーあるいはグロッシー・インシグニア・ホワイト各色のドープにより塗装されていたものは、以後グロッシー・シーブルーのドープ塗装のみとする(海軍仕様AN-D-2)。

(2)    金属部分表面に記入されている全てのレタリングや指示事項文字は海軍仕様AN-TT-L-51に従ってグロッシー・インシニグニア・ホワイト・ラッカーとする。羽布部分表面に記入されている全てのレタリングや指示事項文字は海軍仕様AN-D-2に従ってグロッシー・インシニグニア・ホワイト・ドープとする。

 

b.     下地の洗浄

(1)    概要

いかなる塗装を行うにせよ、作業前には塗装する面全てを洗浄し、完全に乾燥させておくこと。これら下地作業は乾燥した環境で実施し、作業する面にいかなる水分も残らぬようにすること。

 

下地洗浄は適応する溶剤あるいは冷水にも完全に溶ける洗剤を用いること。

 

注意:

石油系溶剤は引火性が強いので注意すること。

 

飛行機を洗う場合に用いる洗浄剤は、プライマー塗膜を損なう影響が最小限となるものを用いる。これには合成石けん温水溶液あるいは合成石けんコンパウンドが最も適している。

石油系溶剤の場合は、既存の塗膜への影響を最小限とするため、非芳香族系かつ溶解性の最も小さなものを選択する。

 

アルミニウム合金製の部品の合わせ目、すき間に残った洗浄剤は完全に洗い流すこと。

 

(a)    全ての部品には洗浄後は直ちにもとの保護処理膜を施すこと。

(b)    アルミニウム及びマグネシウム合金の部品を洗浄する場合に、スチールウール並びに四塩化炭素溶剤を用いてはならない。

(c)     機体構造部や部品において、手の入りにくい部位に母材と異なる異種金属片が塗膜に入り込まぬよう注意すること。このような部位のクリーニングには強力な掃除機を用いること。

 

(訳注:異種金属:たとえばアルミ合金に鉄片が接触しているところに水分が付着すると、電位差によりアルミの腐食が始まる。一般的に非常にうるさく注意が払われる)

 

警告

洗浄した部品は、保護処理を施すまで汚れた素手あるいはボロ布で扱ってはならない。

洗浄に高オクタンの航空ガソリンを用いてはならない。その鉛成分は怪我をした場合に毒性を及ぼし、またその蒸気を大量に吸った場合には肺の傷害が起こる。

 

(2)    アルミニウム合金のクリーニング

(a)    アルミニウム合金にプライマーを塗装する前には、適合する洗浄剤で洗浄すること。

 

注意

アノダイジングを施した状態で未塗装のアルミニウム及び同合金の部品には、その柔らかな防食皮膜を傷つけぬよう充分注意すること。アノダイジング皮膜の損傷は腐食を招く。

 

(b)    溶接を行ったアルミ合金部品では、溶接で発生したスケールを事後可能な限りすみやかに除去し、溶接部位の重大な腐食発生を防止する。

スケールを除去するには先ず部品を清水で洗浄後、重量比10%の希硫酸中に1時間またはそれ以内、スケールが完全に除去できるだけの間浸漬する。この際に手指の入りにくい部位がすべて希硫酸溶液に浸漬するように注意する。

浸漬が済みスケールが除去できた部品は、酸洗いの痕跡が残らぬように清水の流水中でリンスすること。

 

警告

希硫酸を水で希釈する場合は、硫酸を水に注ぎながら木製のパドルでかき混ぜる。

絶対に水を硫酸中に注いではならない。硫酸が皮膚についた場合にはただちに冷たい流水で洗い流すこと。直ちに硫酸を洗い流さないと火傷となる。

 

(3)    鋼製部品

(a)    先ず付着したオイルやグリースをベンゾール、ナフサなどの有機溶剤で除去する。

(b)    次に錆をワイヤーブラシで落す。

 

(4)    透明プラスチック製キャノピーのクリーニング

(a)    外面の洗浄

1.     まず大量の水を用いて洗い流す。付着したゴミ、土あるいは塩分は素手で丁寧にかき落すこと。

2.     次に水と石けんで洗う。水に砂粒などが混じっていないか確認すること。この際にきれいな布切れやセーム革を使ってもよいが、水分をキャノピー表面に広げる用途に限ること。表面は素手のみでぬぐうこと。これにより付着物がプラスチックを傷つける前に除去できる。

3.     水分がおおむね乾いた時点で湿らせたセーム革またはやわらかい布切れあるいはティシューによりふき取りを行う。このさいに乾燥した表面を過度にこすらないこと。

4.     オイルやグリースが付着している場合はケロシンあるいはヘキサンを含んだ布で軽めにふき取る。

 

注意

キャノピーのアクリル材には次のものを用いてはならない:アセトン、ベンゼン、四塩化炭素、消火液剤、ガソリン、ラッカーシンナー、窓拭き用のスプレー剤。これらを用いた場合にはプラスチックが劣化しクレージングを発生させる(訳注:クレージング:細かな表層のクラック。プラスチックが全体に光って見えにくくなる)

 

5.     乾燥したプラスチック表面を乾燥した布でこすってはならない。傷つけやすいばかりでなく静電気を発生させてホコリが付き更なるキズの原因となる。静電気が除去できない場合には(訳注:原文がマチガイと思われる)、清浄かつ湿らせたセーム革でたたくようにすると、静電気と粒子の除去が促進できる。

 

6.     ゴミと油分を除去し、なおかつ大きなキズが無いことを確認したならば、市販の高級ワックスでキャノピーを磨く。ワックスにより細かなキズが埋められ、更なる傷つきも防止できる。ワックスは薄く均等に塗布し、柔らかで乾燥した布切れで軽めにポリッシュする。

 

7.     ゴミ並びに油分を除去したあとで、プラスチック表面に過度のキズが認められる場合には、研磨剤を用いて素手あるいは適切なバフ掛け用具によりキズを除去する。事後研磨した面にワックスをかけること。

 

注意

素手によるものにせよバフ器具によるものにせよ、傷の除去に先立ち洗浄を実施すること。磨き作業中に砂粒などが存在した場合には、更にキズを拡げてしまう。

(キズを研磨して除去する場合、相当高度な技術を以ってしても、わずかな「ゆがみ」の発生は避けられない。したがって、銃塔の照準パネルもしくは同等の透明部位に対しては洗浄とワックス掛けのみ実施するようにし、深いキズが付いた場合は部品交換するべきである)。

 

(b)    キャノピーの内側面

1.     柔らかな布切れで軽くほこりを払う。この際乾燥した布で「拭いて」はならない。

2.     湿らせた柔らかな布またはスポンジを用い、注意してふき取る。砂粒などが布やスポンジに残らないように、これらをひんぱんに清水中で洗いながら実施すること。

(c)     透明プラスチックの修理とメンテナンスに関しては、既存の作業手順および推奨資材のリストを参照すること。

 

c.      塗装による保護

塗装による保護皮膜を施す場合には、事前に上記により洗浄を実施すること。全ての塗装面は完全に洗浄、乾燥させておくこと。

可能な限り、塗装作業は温和かつ低湿度環境で実施する。この場合の低湿度とは、塗装後に塗面に「カブリ」が生じない状態をいう。

不適切な環境条件すなわち高湿度、強い風あるいは湿った海風の中で塗装作業を行わないこと。

 

プライマー塗装作業は作業仕様書PF-9に従って実施すること。プライマーは全てスプレーあるいは浸漬(dipping)により塗布する(訳注:ハケ塗り「brushing」という表現は見られない)。

 

次の塗装前には、プライマー塗面は完全に乾燥させること。浸漬方式が実施可能な場合には、これをスプレー方式より優先とする。

 

d.     外部塗装

(1)    全てのアルミ合金部分に対して、まずジンク・クロメート・プライマー仕様AN-TT-P-6561回(1コート)塗布する。その次にグロッシー・シーブルーあるいは迷彩塗装ラッカー仕様AN-TT-L-51を塗装する。

(2)    プライマーの次の外面塗装ならびに国籍標識部位(マーク並びに注意書きレターはグロッシー・インシグニア・ホワイト)に関しては、グロッシー・シーブルーあるいは迷彩塗装を2回塗りとする。塗装様式に関して最初の1623機にあっては図444を参照のこと。

(3)    国籍標識ならびに全ての識別マーキングに関しては、グロッシー・インシグニア・ホワイトのラッカー仕様AN-TT-L-51を用いること(訳注:ANとはArmy-Navyのことで、現在でもこの仕様は広く用いられている)。

(4)    鋼製部品であってカドミウムメッキを施したものは、ジンクロの1回塗りの上にグロッシー・シーブルーあるいは迷彩塗装を2回塗りする。カドミウムメッキを施していない鋼製部品にあっては、塗装前にサンドブラストを実施、その後ジンクロを2回、続いてグロッシー・シーブルーあるいは迷彩塗装を1回施す(訳注:サンドブラスト:人工の砂を高圧エアで表面に吹き付けて異物を落とし塗装の食いつきをよくする作業)。

(5)    羽布張り部位の仕上げはNavy Aeronautical Specification SR-70に従ってドープ塗装を施す。

(6)    布部分(訳注:内側)の「カビ」発生防止のために殺菌剤Zinc Dimethylditiocarbonateを用いる。この殺菌剤はドープ塗布の初回だけ時のみ用い、混合比は作業用に希釈したクリヤードープ1ガロン(3.75リッター)に対して4オンスである。この際は希釈に用いたドープシンナーの重量をあらかじめ計測しておくとよい。

この際、作業条件は他のドープ塗装と同じであり、初回だけ薬剤が混ざっていても変わらない。

 

(7)    全ての羽布部分はクリヤー及び着色したセルロース・アセテート・ブチレート・ドープ(訳注:通称CABドープ、乾燥した後は不燃性。戦後も日本国内で長く用いられた。木部などへの接着性にやや劣る)を用い、作業仕様書AN-D-1及びAN-D-2に従って塗装する。

(8)    全ての透明プラスチック部位には塗装、グリースアップならびにオイルは不要である。

e. 内部塗装

1)全ての機体内部には:ジンク・クロメート・プライマーAN-TT-P-6561

着色したジンク・クロメート・プライマー:1回(訳注:この部分「tinted zinc chromate primer」仕様に関する記述は見られない。以下「ジンクロ」とする)を施す。この際防火壁の前面及びエンジンコンパートメントも含む。

この着色ジンクロ・プライマーの上からさらに、計器盤及びカウリング内面には黒色ラッカーを2回塗布する。

(3)    全てのマグネシウム及び同合金部品には、ジンクロAN-TT-P-656を最小2回、さらにラッカーAN-TT-L-512回塗装する。

(9)    カドミウムメッキを施していない鋼製部品にあっては、塗装前にサンドブラストを実施、その後ジンクロを2回、続いてグロッシー・シーブルーあるいは迷彩塗装を1回施す。

(4)    バッテリー搭載コンパートメント及び周囲12インチ(30センチ)以内、あるいはバッテリー液のかかる恐れがある部位には上記塗装の上に黒色耐酸塗装仕様AN-P-31を塗布し、保護すること。

(5)    全ての鋼製ケーブルは、取り付け前に仕様AN-C-52に適合する腐食防止剤に浸漬処理を行う。さらに機体に取り付け後、腐食防止剤をかるく全体に塗布すること。ケーブルの端末処理部で耐食合金鋼あるいはモネルK合金製以外のものは、ジンクロを2回、さらに着色ジンクロを1回塗布する。

(6)    異種金属が接合する面には、その接合前に両方の接合面にジンクロを2回塗布する。さらに可能である限り、接合後の継ぎ目を腐食防止のプラスチック・コンパウンドすなわちジンク・クロメート・テープもしくはペーストで埋めること。作業後に余分なコンパウンド(訳注:すなわちペースト)をふき取り、綺麗なフィレット状となるようにする。

(7)    全てのプラスチック、ガラス、ゴム面には塗装、グリースアップならびにオイルは不要である。ベークライト樹脂及び同等の部位には塗装を施しても良い。

(8)    張線やターンバックルの調整ネジ部分(訳注:張線:原文では「tie rod」)には作業前及び後に耐食コンパウンドAN-C-52を塗布・潤滑し、噛付きを防止する(訳注:通常の航空機整備手順AC43では、ターンバックルには「注油してはならない」とある)。

(9)    全ての木製部品は熱した生亜麻仁油でコートする。

 

f.. 保管中あるいは輸送中の鋼製部品の防食に関して

保管中あるいは輸送時における鋼製部品の腐食を防ぐには下記の方式を適用する

(1)    塗装ずみ部品で、ボンディングやグラウンドのために一部を無塗装とする必要がある場合は、塗装前に該当部分を非吸湿性粘着テープ、仕様AN-T-12に適合するものでマスキングする。商品名「Utilitape」製造者Industrial Tape Corporation, New Brunswick, New Jersyがこれに適合する。

(2)    その他の未塗装表面には下記薬剤を11で混合したものを塗布する。

商品名「Varsol」および同「Ferrocote TF349」(製造者名と住所は省略、以降同じく)

 

注:Ferrocote TF349の代わりに下記を用いても良い(省略)。

 

(3)    その他、カドミウム、亜鉛もしくはクロムメッキを全面に施したもの、あるいは全面塗装済みの鋼製部品には特に処置する必要はない。

 

g. アンチ・シーズ・コンパウンド(訳注:噛付き防止剤)

1)メカニカルシール

全ての空気、CO2および石油製品が通る配管の金具において、ネジを切った面にそれら流体が直接接触しないように、商品名「Shell Industrial No. 2,938B thread lubricant」を用い物理的シールを形成する。

2)液状シール

その他ガソリン、エンジンオイル、防氷液ならびに油圧配管において、液体がネジ部に直接接触する部位には商品名「Parker Sealube thread lubricant」または仕様AN-C-53に適合する他のシール剤を用いること。

 

注意:

シール剤はネジのオス側にのみ塗布し、ねじ込む際に配管中にシール剤が入らないようにすること。

 

(4)    電気配管(コンジット)

電気系統の全てのコンジットのネジ部にはParker Sealube thread lubricant」または同等のシール剤を用いること。

(5)    酸素系統配管

酸素系統の金具のシールには商品名「Rectol Seal No.8 またはNo.5」を用いること。

 

警告:

酸素系統の継ぎ手には絶対にオイルやグリースを付着させてはならない。火災の原因となる。

 

h. ゴム製タイヤの保護策

運用30時間ごとに水と石けんで洗浄すると磨耗寿命がずっと伸びる。

 

444 迷彩塗装とマーキング

シーブルー・セミグロス

ノンスペキュラー・シーブルー

インターミディエイト・ブルー

ノンスペキュラー・ホワイト

ぼかし部分

 

1.     プロペラ先端 オレンジイエロー幅4インチ

2.     ノンスペキュラー・ブラック

3.     フチはインシグニア・ブルー幅2 1/2インチ

4.     星はインシグニア・ホワイト

5.     ビューロー・シリアル・ナンバーは上下1インチ

6.     モデルナンバー上下1インチ

7.     サービスマーキング上下4インチ

8.     この部分インシグニア・ホワイト

9.     内部の円はインシグニア・ブルー直径40インチ

10. 国籍標識、左翼最上面及び右翼最下面

11. インシグニア・ホワイト

12. 袖部分ライトグレー、サイズ12 1/2 x 25インチ(下面はインシグニア・ホワイト)

13. 機体上面のウインドシールド内面のみノンスペキュラー・ブラック

14. フチはインシグニア・ブルー幅2 1/8インチ

15. 内部の円はノンスペキュラー・インシグニア・ブルー直径50インチ

16. キャノピー及び無線マストはインターミディエイト・ブルー

 

注記

1.     全ての外部塗装は米海軍仕様U.S. Navy Spec. SR-2C 及び Bureau Aer Letter 14708 Aer-E-2574-MVSに準拠するものである。

2.     ノンスペキュラー・シーブルーからノンスペキュラー・ホワイトへの中間ぼかし部分の要領に関しては、海軍仕様SR-2C中のD-3(B)節の方式に準ずる。

3.     水平尾翼下面のノンスペキュラー・ホワイト塗装の仕上げ外観は海軍仕様SR-2C中のD-3(B)節の方式に準ずる。

4.     主翼上面国籍標識のグレーは、ライトグレーLight Gray及びインシグニア・ホワイトInsignia Whiteの塗料を11の比率で混合したものを用いて実施する(訳注:ここの記述に仕様呼び出しは見られないが、制式なカラーであろう)

 

訳者感想、作業直後

「よくここまで細かく規定しますね。各種ケミカルが各部信頼性を保っているという感じ。迷彩塗装要領も単純ではありませんな。良い勉強になりました」

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いくつか考察 20070922

■内部色で細かな指定記述がないのは

通常、これらは製造段階で;

各ベンダー→製造者  製造者→発注者すなわち官側

の各段階での契約仕様書レベルで決まることであって、製造者の受入検査あるいは官領収検査でチェックされるだけだったと思われます。機体を実際に整備運用する現場では「実物に塗ってあるとおりに塗れ」ということだったのでしょう。

そのラインで考えれば、初心者とほとんど変わらない作業者を対象にして、防食塗装あるいはキャノピー取扱いの基本が煩く記述してあるのもうなずけます。カウリング内部が黒色で指定してあるのも、本機種だけのことだったからかも知れません。さらに、1623号機以前の3色迷彩については、羽布部分を除いて新しくシーブルーに塗りなおせという指示もありません。

 

    腐食防止に関して

先ず写真を↓

これはTBM-3アベンジャーを1982年に米国チノ飛行場で撮影したもので、尾翼の付け根を後ろから写しています。水平尾翼付け根の上下の金具は鍛造の合金鋼製で、それがアルミ合金の桁材にボルト止めされています。当時私が見て「アルミとの接合部の腐食防止にはどの程度注意がなされたのか?」と思いましたが、今回やっと明確な回答を得たわけです。甲板露天繋止で海水を常時かぶる条件は船舶材とさほど変わらず、鋼材を使う上でも大変だったことでしょう。

写真で、反対側の水平尾翼付け根金具には錆止めプライマーがざっと吹いてあります。一方右付け根の金具は保護塗装が見られないですが、さほど錆びていません。防食技術のみならず、材質の研究も進んでいたと察することができます。

これら金具はいったん取外してサンドブラストにより錆と残留ペイントなどを落とし、いずれかの非破壊検査でクラックなどが見つからなければ立派に再用できるはずです。ボルトは現用規格品を用いて交換可能でしょう。

この機体はチノ飛行場の当時エプロンと滑走路の間の草地に止めてあって、搬入以来かなり年月が経っていると思われますが、全般的にこの程度の劣化であれば、復元して再飛行させるのは比較的容易と理解できます。

 

    教育、トレーニングに関して

米国も日本との開戦前に動員の下準備はしていたのでしょう。しかし拡充と消耗が著しくなってからは、軍にしても産業界の各部門それぞれに「ベテラン」という方々はほんの一握り、あとは業界に関してほとんど素人の若者や女性を、いかにして使い物にするか?という問題が常時あったのでしょう。

特にアメリカ海軍航空部門は開戦後、それ以前では想像もできないような空母部隊の拡充がありました。大型正規空母を20隻以上、軽空母、護衛空母も入れて60隻以上も建造して、陸上部隊も含め20万人にも達する新規乗組員や搭乗員、整備員ほか航空スタッフを、どうやって国中から集めてきて訓練してあれほどの戦力と成したか、以前からとても興味がありました。

 

特にGM製のアベンジャーを使う部隊は艦上と陸上を問わず、時期的にも新しく組織されたものばかりと思われます。そこで中核となる小数のベテランが、いかに基礎教育だけ終えた素人新人を航空機整備員として実務と共に教育していったか? その際本図書のようなマニュアルは有効だったことでしょう。その若者たちも、実務を半年もこなせば立派なベテランとなり、また新人の教育指導も行いながら全体的に戦力を拡充して行ったものと想像できます。

 

■一方日本側ではどのようにして新人を教えていたか?

当時の日本、特に海軍での教育に関してはさまざまな文献、資料があり、当時の様子は相当残されていますが、例えばとある駆逐艦における新兵さん教育では(参考1)、常時極度な気使いと作業のスピード、正確性を求められ、かつ古参兵からのいわゆるシゴキや暴力となるような扱いに丸3年間耐えて、初めて艦の下士官兵のメンバーとして一人前に扱われたそうです。その年季3年の最後に、先輩の水兵達から「よく堪えた。もう一人前だ」と祝いの言葉があったともあります。これは、士官であれば平時の兵学校の年限とも同じで、その教育方式は現在から考えて無茶苦茶ですが、相当の手間と時間を掛けて叩きこんでいったことが充分に伺えます。ただし、そのような時間がかかる方式を戦時に実施していて間に合うかと、それは率直に感じました。

 

    教育の方式:マニュアル式VS徒弟制度

この問題は知り合いの床屋さんでよく話すのですが、現代において、双方とも考慮すべき問題でしょう。ともすれば自分だけの仕事をこなすのに精一杯になりがちですが、他人に「お教え」することは、廻りまわって結局教える本人の利益や「ラクさ」となって還ってくるものと私は常々思っております。

以上

参考1:我が青春の追憶 一水兵がとらえた太平洋戦争 柴田芳三著

 

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