「ルナ・パーク」報告書


キャラバン隊美術部第一回展覧会
「ルナ・パーク」報告書 
お礼状にかえて

先日はお忙しい中、ルナ・パークにお越し頂きまして誠にありがとうございました。
言葉、意識、感情。外側から与えられた事象で起こる化学反応。実はキャラバン隊は単に展覧会を企画して開催する移動ギャラリーというだけではなく、こうしたらどうなる?との考えで実験、検証していく研究の場でもありました。
その実験室で行われた展覧会、キャラバン隊 ? ルナ・パーク - の研究報告をここにお伝え致します。


会期 2008年2月4日‐2月9日
会場 京橋3丁目 art space kimura ASK?
出品作家 冨田 淳・根本 寛子・毛内 やすはる・森 栄二・山浦 恵梨子・山本 豊子・吉川 かおり

会期
当初・銀座Gallery覚にて2007年7月の2〜3週間の会期での開催を予定→無期延期→2008年2月4日〜6日間の開催となる。メンバーはモチベーションとの闘いでもあったであろう。エピソードとして看護士学校に通っている冨田は通常なら実習、予習、復習、課題提出で身動きの取れない日々であるのが突然この週だけ自主自習となり、ほぼ全日会場に詰めることが叶う。冨田曰く「奇跡」。根本は大学院修了制作展、その前段階の内覧会展の間の会期となるが「絶対自分の絵にプラスになるグループ展だ」と根拠の無い確信に突き動かされ参加を即答。全くその通りとなる。

会場
立体作家の搬入出を考え、エレベーター付きで、と選んだ事も理由としては大きいが、まず第一条件に作品が売れてもバックマージンを取らない画廊を探した。特筆はバックマージンを取らないというのに作品が売約になってからの流れ(代金受け取りから作品引き渡しまでの)、管理が実にスマートに整理されていた事である。しかしながらそれよりも収穫だったのがギャラリスト木邑氏の、美術外の世界と美術内の世界の平衡感覚のとれたキャラクターであった。よその画廊を借りる。と決めた段階からオープンにと決めていた。が、こちらのオープンに対し相手もオープンで返してくれる事は期待してはいなかった。が、木邑氏はキャラバン隊のオープンに対しオープンで返してこられた。これは第一回目の会場として大変幸福な出会いとなった。会期終了し、後日木邑氏よりASK?とキャラバン企画者での「反省会」を提案される。第二回キャラバン隊・美術部は映像作家を企画している。art space kimura ASK?の得意とする映像機器材を頼り、続けてASK?を使用することにし、「反省会」及び次回展覧会に向けての「作戦会議」を行う事となる。誠に得難い画廊・人物と出会えた。

出品作家
冨田 淳
冨田は評論家・西村智弘氏との対話から外側から与えられたテーマだから安心して描けた(自分を晒せた)。という自分に対しての隠れ蓑の存在、自分では気がつかなかった作品の傾向を発見した。気がつかなかった(見ないようにしていた?)自分を見、受けとめたことにより、より俯瞰で自分や作品を見つめることが出来るであろう。あの瞬間は制作に関しての重要な尾っぽを掴んだ瞬間であった。

根本寛子
この展覧会で一番の掘り出しものは根本だった。ルナ・パークの作品のみだとわかりにくかったかもしれない。が、Gallery覚での個展準備から個展、ルナ・パーク、卒展と彼女の作品の流れを見ると彼女が如何に冷静に思考のフィルターを通して制作をしているかがわかる。私はこの抽出された素材・根本寛子で今後も実験をしてみたいと強く思っている。

毛内 やすはる
途中(後半)参加、北海道という遠隔地での参加でもあったのでミーティングの参加は一度もない。その分、私宛てのメールにあった各々の考えを逐一CCで送信した。とつとつとした毛内は「個展でもする気か?」と言わんばかりの量の作品をもちこんだ。(足りないより、展示しない作品が出てくるくらい選べる量を持ってきて下さい。との指令に対し素直に持ってきたのだ)その作品を設置したとたん、各々個々に奏でられていた音が一つの美しい和音に変化した。あれはたぶんものすごく大切な何かの存在が見えた現場だったのだと感じている。あの瞬間を目撃出来た者は驚きと喜びという感情のほうにのみ込まれてしまいそこで終了してしまっているかもしれないが、もう一度冷静に考えてもいいのではないだろうか。
押し出しは決して強くないが毛内の作品がなければルナ・パークのあの空間は出来上がらなかった。
森 栄二
作品の緊張感から果てしなくストイックで厳しい作家なのでは。と想像していたら何か(功名心とか闘争心とかか?)がごっそり底抜けに抜け落ちた作家だった。とつとつとした毛内に飄々とした森。まったく掴みどころのない好キャラクターだった。たぶんベーシックな括りで呼びかけられる事のほうが多いであろう森にとって、このグループ展はかなり刺激的な展覧会になったのでは、と考える。ルナ・パークは「時間」を非常に大切にしている作家たちの丁寧な作品の展覧会だったが森はそれを見事に形にあらわしている作家だ。面白い現象として森も毛内と同じく途中(後半)参加だったが平面の冨田の作品と立体の森の作品を同一の作家のものだと思う鑑賞者が多数いたことだった。

山浦 恵梨子
アカデミックな作家や発表に老練(?)な作家陣の中で、自分こそふっ飛ばされる※と思いながらも、潰れず私のピックを信じてよく踏ん張ってくれた。ずっとマイペースに泳がしてはいたが祈りの念は常に飛ばしていた。本人的には色々考えるところはあったであろうがよい作品を出してくれた。(※一回目のミーティング時、語気強く「いいの?今まで行ったことのないとこに行くぐらい頑張らないと他の作家にふっ飛ばされるんだよ?!」と全メンバーの意識を変えるため冨田をスケープゴートにした場面があった)

山本 豊子
バラバラな作品の橋渡し役に山本豊子を起用したが、ふたを開けてみると彼女はルナ・パークを地に足の着いた展覧会にするための重要なキーパーソンだったのだ。最初皆の中にあったルナ・パークはフィクションの世界。お伽話、あやふやで不確かな世界だった。そんなイメージだったのが、山本豊子が実在の人物が作った実在した遊園地であった。と調べあげたとたん、それは人格をもった非常にリアルな出来事に豹変する。「まずわからないことは調べないと前に進めないんです」抽象的なイメージを如何に自分にとってリアルにするか。リアルとリアルでない差とはどういうものか、それを具体的に見せてくれたのが彼女だった。また山本の調べて得た情報を自分だけのものにしないキャラクター。ルナ・パークが成功の道を進みだしたのは山本のこの情報が一つの大きな節だった。

吉川 かおり
吉川かおりはメンバー用作家紹介やDMフライヤー文章での吉川作品の紹介に「あれはものすごいプレッシャーでした」と会期終了後、告白した。告白出来たのはそのプレッシャーを押し退け(勢いよく「跳ね退け」ではなく)自分なりの作品を作ったという自負からだろう。確たる自信をものに出来たからこその発言と感じる。

以上、キャラバン隊・美術部第一回展覧会 ? ルナ・パーク ? の研究結果をご報告申し上げます。

第二回展覧会は映像・空間構成の作家・かなもりゆうこ と、作曲家でありパフォーマーで美術家、異能の人・JIROXの2人展と致します。会場は第一回展覧会に引き続きart space kimura ASK?と、某コレクター氏お引き合わせの画廊、京都・ヴォイス・ギャラリー pfs/w東京、京都の順で開催します。 会期は内容を詰めて決める為、いまは未定です。先日作家2人の初顔合わせ一回目のミーティングを行いました。手応え十分。乞うご期待。