第12回 クイーンが放ちたかった本当の『最後の一撃』は?

【解説】Yuseum氏はEQFC会員ではありませんが、送ってくれた原稿の内容が面白かったので、ゲスト投稿として掲載しました。他にも「EQFCには入会したくないが、自分の原稿を他のクイーン・ファンに読んでもらいたい」という方がいましたら、遠慮なく送ってください。


クイーンが放ちたかった本当の『最後の一撃』は?
by Yuseum(ゆーじあむ)

[注意]『最後の一撃』の犯人等に言及していますので、未読の方は注意してください。

 「最後の一撃」は実質上、エラリー・クイーンの最後の作品にあたり、「ローマ帽子の謎」を解決したばかりの若きエラリー・クイーンが遭遇する難事件で、解決までに27年間も要した事件である。作品の展開は非常に面白く、三つ子が出てきたり、謎のカードが出てきたり、なんといっても、ライツヴィル・シリーズなどで垣間見られる「神」の存在を想起させる章題となっているところが面白い。実際、第15章第12日節(神の出現の日)の部分は、この作品の最大のクライマックスであり、ここまでは背筋がゾクゾクするほどの大傑作で、作者クイーンの集大成と言っても過言ではないと思う。
 しかしながら、27年後の第三篇になった途端にトーンダウンし、解決編はいくらなんでも27年も時間を要さないだろうと思えるほど平凡で、最後の一文"finishing stroke"もあまり効果的ではない。この作品が凡作と言われるのはそのためである。しかし、作者エラリー・クイーンは本当にこんな結末を書きたかったのだろうか?
 この作品のポイントは、送られてきた謎のカードの裏面に残されていた不可解な落書きが、本の校正の経験者が「無意識に」残した印だということ、また本の出版に関係した者しか使わない手がかりを残していることから、出版代理人であったアーサー・ベンジャミン・クレイグを犯人としている。
 しかし、もし「無意識に」残した印が「作者」エラリー・クイーンの手によるものだと考えてみたら、どうだろう? 「作者」クイーンは当然本の出版にも携わっていたはずであり、校正者の特有な印を書くことだってできたはずである。一方、作者クイーンはライツヴィル・シリーズ以降、作中で「神」の存在を意識した作品を数多く残しており、それによって「探偵」エラリー・クイーンは神に挑戦することの悩みを曝露している。ただ、作品中「神」といえばそれは「作者」に他ない。この作品は、「探偵」エラリーが自らの創造主である「全能の神=作者」こそが、この「最後の一撃」の真犯人だと指摘するストーリーにしたかったのでは? そして、長年続いていた後期クイーン問題にけりをつけたかったのでは?
 もちろん、「作品の部外者である作者が犯人」というストーリーを作ることは、かなりの技量を要する。全盛期のクイーンだったらあるいは書けたかもしれない。しかし、筆力の衰えが目立ち始めた作者クイーンにとっては、大風呂敷を広げてみたものの収拾がつかなくなったので、仕方なくクレイグが犯人である、というストーリーで話を締めるしかなかった。それが、この「最後の一撃」の真相ではないだろうか?


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