室蘭臨時要塞 小橋内砲台

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 ↑米軍が撮影した小橋内砲台 写真提供:工藤洋三 様
 2基のケースメート(重砲用の掩体)が並んで設置されている様子がはっきりと分かる。この写真が掲載されている『アメリカが記録した室蘭の防空』によると、この写真は1945(昭和20)年10月10日に戦略爆撃調査団が撮影したもので、終戦時、片方のケースメートの15cmカノンは射撃可能な状態だったが、もう片方のケースメートにはカノンの据え付けが完了していなかったとのことである。
 *この写真及び内部の写真は、空襲・戦災を記録する会全国連絡会議事務局長の工藤洋三様よりご提供いただきました。貴重な写真をありがとうございます。また、工藤洋三様及び鈴木梅治様の共著『アメリカが記録した室蘭の防空』(2014)には、高射砲陣地以外にも、この小橋内砲台のほか、カノンや野砲の陣地なども詳しく紹介されており、大変参考にさせていただきました。重ねてお礼申し上げます。
 ↑ 現存するケースメート 所在地:Googleマップgoo地図 
 斜面に2基並んで築かれたケースメートの内、下側の1基が現存している。このケースメートは、戦後、住宅*に改装されて昭和50年ころまで使用された。砲眼(96式15cmカノンを突き出す開口部)や背面の出入口は塞がれており、内部を見学することはできない。
 *所有者の方が道外在住で、現在空家。室蘭市が取得・整備して平和学習の教材として一般公開することがのぞましい。
 *コンクリート壁が剥離するなど傷みが激しかったが、太平洋戦史研究者の鈴木梅治様が平成16年にボランティアで外壁を補修され、『小橋内15加砲台側壁補修工事』と題したレポートをまとめられている。
 ↑ 同型の96式15cmカノン 佐山二郎『日本陸軍の火砲 要塞砲』(2011) 389頁 
 ↑ 室蘭で撮影された96式15cmカノン 写真提供:兵器研究家 国本康文 様 
 米軍へ引き渡すため、小橋内砲台から撤去された96式15cmカノンが、集積場所に運搬された様子を記録した写真である。このカノンは要塞砲でありながら、牽引車で牽引して移動することが可能であった。移動時には、砲身車・砲架車・砲床車の3台に分けられるが、上の写真は、その内の砲身車である。
 ↑ 室蘭で撮影された96式15cmカノン 写真提供:兵器研究家 国本康文 様 
 手前に写るのが、96式15cmカノンの砲架車。その奥に砲身車が確認できる。
 *上のカノンの写真2枚は、兵器研究家の国本康文様よりご提供いただきました。貴重な写真をありがとうございます。
  国本様によると、アメリカの兵器研究家のSteve Zaloga氏によって発見された写真とのことです。
 ↑ 室蘭市小橋内町1丁目の住宅街に残るケースメート
 このケースメートの奥の一段高い位置にも、もう1基ケースメートがあったが、残念ながら取り壊された。
 ↑ ケースメートの背面出入口
 ↑ ケースメートの上部
 砲口は南西方向を向いている。平射砲であるカノンの砲座を反斜面(海岸から離れた斜面の裏)に築いたため、死角が多く、海岸から至近距離の敵艦は狙えない。(内浦湾の湾口中央部しか防御できない。)
 ↑ ケースメートの側面
 ↑ ケースメートの内部 写真提供:工藤洋三 様
 『アメリカが記録した室蘭の防空』によると、カノンの据え付けが完了していなかったほうのケースメートの内部写真とのことである。
 ↑ ケースメートの内部(側面)のイメージ
 ↑ 西側から見たケースメート
 ↑ ケースメートの古写真
村田勲『室蘭防空隊』(1982) 121頁 
← ケースメートの平面イメージ
 現存するケースメートは、住宅にされた際に、図中の色を薄くした部分が除去された。
 
  ↑ 取り壊されたケースメートの南東側壁面
 昭和51年7月12日の室蘭民報に紹介されており、同年度撮影の空中写真にも写っているので、破壊されたのはそれよりも後のこと。1段下のケースメートは住宅になっていたため破壊を免れたが、こちらのケースメートは子どもが入って遊んだり、野良犬が住み着いたりしたため、破壊・撤去されたらしい。戦跡の価値が見直される前のこととはいえ残念なことである。ただ、斜面の地下となる南東側側面と砲側庫は残されており、コンクリートの厚さを知ることができる。
 ↑ ケースメートの南東側壁面
 砲側庫が残るが、事故防止のためベニヤ板で塞がれている。戦争末期の鉄不足で、勇払陣地のトーチカがほとんど無筋で築かれたのと対照的に、こちらのケースメートのコンクリート断面からは鉄筋が多数飛び出している。
 

 おすすめの本

『アメリカが記録した室蘭の防空』
 終戦後まもなく、米軍が室蘭で撮影・記録した、高射砲・カノン・野砲・照空灯の各陣地や兵器の写真、配置図などを網羅し、現地調査や米軍のメモなどをもとに、わかりやすい解説が加えられている。広く小学生から研究者まで、歴史に関心のある方々におすすめの一冊。
〔長崎屋室蘭中島店・amazon須々万共和国で販売〕
『室蘭1945』
 終戦後まもなく、米軍が室蘭で撮影・記録した、各陣地や兵器の写真などを初めて紹介した調査レポート。この分野の先行研究にあたる。それぞれ撮影場所も特定されており、室蘭の戦跡を調査される方々におすすめの一冊。
MANDARAKEで販売〕
■更新履歴
2005年12月5日 公開* ⇒ 2012年8月19日 加筆修正**(写真追加など) ⇒ 2014年9月7日 加筆修正***(写真追加など)
〔謝辞〕資料や写真のご提供ありがとうございます。
 *室蘭市総務部総務課 市史編纂室様より資料をいただきました。
 **兵器研究家 国本康文様より、米軍が室蘭で撮影した96式15cmカノンや測量山観測所の写真をいただきました。
  著書『室蘭1945』をいただきました。
 ***空襲・戦災を記録する会全国連絡会議事務局長の工藤洋三様より、著書『アメリカが記録した室蘭の防空』及び写真の
   引用掲載の許可をいただきました。
■外部リンク
ウィキペディア(九六式十五糎加農砲)
須々万共和国…当サイトに古写真をご提供くださった工藤洋三様が管理運営されているサイト。