Saturday In The Park

〜football weekend〜


1stステージ第1節 FC東京 1−0 アルビレックス新潟 at 味の素スタジアム


No.42 Welcome To The Jungle

開幕のホイッスルが鳴る。

檻に掛けられた鉄扉が音を立てて落ち、獣たちが一斉に飛び出していく。
獣とはクラブでありプレイヤーであり、
3か月もの間ゲームに飢えていた、スタンドに陣取る我々のことでもある。
目の前にぶら下げられた餌に対して特に聞き分けのないのが、
ゴール裏の住処に我先にと潜り込みたがるこの不埒な面々。
案の定、開門数時間前に、スタジアムの周囲には二重三重の行列がモソモソとトグロを巻き始めた。
迎え撃つは今春に上京初体験の新参者。
全身を緊張で固めてこの密林に足を踏み入れる新しいお客様に、
木々の上から穴の奥から顔を覗かせ手招きし、心を込めて「ようこそ」と声を掛けてやらねば。

さて、J1ルーキーのクラブを、一糸乱れぬ歌とダンスで鼓舞するサポーターの面々は
向こう正面で意気揚々である。
対して此方、初春の日差しに眠気を誘われそうになりながらも、
緊張と不安がかすかに宙に漂うゴール裏。
開幕に負けなしといえども、主力3人をご奉公に出している上、頼みのケリーが不在とあれば、
喰われるのはこっちかも、と多少の弱気を心の隅に置いておきたくもなる。
かくて今季初のコールは、そんなどこか中途半端な気分を持て余したままで発せられることとなった。

前半のフタが開いた瞬間見えたのは、ハラトーキョー名物の「全開サッカー」。
走りまくり詰めまくる。
ボールを奪ったら、はしたないほどのスピードで相手ゴールへ向かって駆け上がる。
本日の東京には、そこにいくつかのスムーズな「つなぎ」が存在する分、
まだいつもより品を感じさせるわけだけれども、
それにしても新潟、脚も高さも一向について来れないのは、
新しい戦場へ身を投じた故の緊張か、はたまた、こっ恥ずかしさを承知で言わしてもらうならば、
これが世に言う「J1とJ2の差」というものなのか。

ツメに走った東京の選手に吹っ飛ばされ、フィールドを横切るパスに右往左往。
我々としては、サイドでよってたかって奪ったボールをよいしょと逆サイドに振れば、
そこにはゴールへと向かう大きな大きな通り道が難なく拓けている、というありがたい状況。
ケリーがいないことでタメが効かず、真っ正直なサイド攻撃しか手持ちがない本日のオーダーだと、
これは願ったり叶ったりの展開。前半25分、阿部のゴールもそんな形から生まれた。
今日の至福の瞬間が、これで打ち止めであるなどとは、思ってもみなかったけれども。

「まあ、90分間アレでいけるわけないよな」
後半開始早々、早くもシニカルにピッチ上のドタバタを眺めている我々がいる。
ガス欠を迎えつつある選手たちの体からは早々にスピードとキレが無くなり、
競り合いに負け、パスミスを繰り返す。
前半、目を回していた新潟の選手たちの、「イケル!」という心の中の快哉が聞こえるようだ。
そしていったん息を吹き返してしまえば、
年間にして我々の1.5倍数のリーグ戦をこなしてきたダイナモに火が入る。
前の45分とはまったく逆の立場で、息も絶え絶えの青赤たちからボールを奪っていく。
恥辱のアップセットを喰らわずに済んだのは、いつものごとく土肥の神の手のおかげ、いや、
それこそ世に言う「J1とJ2の差」による決定力の違いのおかげかもしれない。

1-0という結果は額面通りだろう。
今日の展開の限りでは、それ以上の差があるとは言えない。言えるわけもない、というのが事実だ。
だから新潟よ、オレンジのレプリカに身を包みつつ飛田給への道を急ぐ、
あるいは高速を走るバスに揺られるお客様たちよ。
釈然としないのは我々とて一緒だ。主力4人が不在、などという免罪符は棚上げにして、
潔く今日のスコアを持ち帰っていただく。我々とあなた方の間に横たわる「差」とは、そんなものだ。

そして今一度。心を込めて言わせていただきたい。

ようこそ険しきJ1へ。
恐れることなどもちろんない。
あなた方が数年に渡りさまよい続けた年間44試合がひしめく密林の闇に比べれば、
このリーグで歩くほの暗い獣道は、まだまだ慈悲深いはずだ。


2004.3.13 sat



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