Saturday In The Park

〜football weekend〜


stステージ第5節 FC東京 1−1 セレッソ大阪 at 味の素スタジアム


No.44  Slip Slidin' Away

霧に煙るスタジアムで、いつぞやの雨を思い出している。
今宵、濡れたピッチの上で同じボールを我先にと追いかけているこのチームに、
我々はゴール裏から白いハンカチを振り、惜別のコールを繰り返したのではなかったか。
あれは何年前のことだろう。
同じ場所、同じ雨。
季節は違えど、ピッチとスタンドの上に漂う空気には同じ匂いがしている。

水曜日、午後7時。
スーツを着た仕事人たちが、携帯片手に駅からの道を急ぐ。

「えっと、ごめんね、オレのデスクの上から2番目の引き出しにさ……」
「あっ、お世話になっております、ええ、ちょっと外にいまして……」

もう片方の手でカバンからマフラーを引っ張り出し、歩道橋の階段を駆け足で上がる。
ようやく辿り着いたスタンドから見えるのは、すでに走り出した本日のゲーム。
週の真ん中、深まりつつある春の夜、あの時と同じように、
いっそひと思いに散らしてやれ、とばかりにピッチに目を凝らす。

まさか、この雨にヤラレているのは我らが東京だとは思ってもみない。
すべって、転んで、つまずいて。
ビハインドを背負ってからのチームは、バラバラと空中分解していく。
突出したプレイヤーがいない分、良くも悪くもひとつのカタマリとして機能していた東京というチーム。
今夜のピッチ上では、選手ひとりひとりがなんと際立って見えることか。
あれはケリー。あれは加地。あれは宮沢。そしてあれは…。

名前を挙げ連ねた順番に、ミスを犯していく。
あさっての方向へ勢いよく飛んでいくクロス。
コンビネーションではなく、推測だけで安易に出されるパス。
意味無く出し惜しみされ続けるシュート。
数々の難関を突破して飛田給まで這ってきたスーツ組は、ここらで深い深いため息をつく。
……頼むよ。

ドロー。負けに等しい。レフェリーに悪態をついても、気は晴れるはずもない。
深い霧に煙ったのは、我が愛するチームのファーストステージ、行く末。
肩を落として駅へと歩く帰路、今後の険しき道のりを思い、心の中で湿っぽい星勘定が始まる。
次は磐田、その次は横浜……。
ほんの数時間前、胸弾ませて駆け上がった歩道橋の階段。人波に押されて、踏み外さぬよう。
すべって、転んで、つまずかぬよう。

水曜日、午後9時半。


2004.4.15 thu



return to top