Saturday In The Park

〜football weekend〜


ナビスコ杯予選リーグ FC東京 2−1 ヴィッセル神戸 at 国立競技場


No.48  Draw The Line

宵闇の迫る国立競技場。

ここでのゲームにはつきものの雨も、今日は降り出す気配もない。
入梅前の最後の晴れの日。風が心地いい。
スタンドから望む副都心のビルに灯りが入り始めたころ、キックオフ。

トップ下に馬場を配した布陣の東京。
右に鈴木、先頭に近藤、システムの真ん中を駆け回るのはジュークハタチの「若いの」ばかり。
主力を徴兵に取られた末の布陣とはいえ、
20代前半の中堅にやたらと疲れの見える最近の東京のオーダーからすれば、
そのイキのよさにスタンドの期待も膨らむというものである。

ところで本日はピッチを動き回るボールの「軌道」が面白い。
サイドチェンジ、ロングパス、クロス。
コクリツのオレンジの照明に照らされて、ボールがぼんやりと光の尾を引きながら宙を飛ぶ。
いつもの東京よりも長く、遠くその軌道がピッチに描かれ、攻めもなかなかスピーディ、
たとえタッチを割ってしまったパスでも、枠をはるかに越えたシュートでも、
若いが故の思い切りのよさがこちらまでも伝わってくる。そんな軌道。

先制点前、馬場がゴール左隅を狙って放ったグラウンダーのシュート。
わずかに左側から枠内へと巻き込んでいく、その正確なライン。
そして今野の頭へときれいにつながった、CKが描いた柔らかな放物線。
勝負の趨勢はもとより、ピッチ上のジュークハタチたちがやりとりする
ボールの行方を追うのが面白くて、久しぶりに腰を据えてゲームの局面を追ってみる。

そして極めつけの軌道が描かれる瞬間が来る。前半24分、鈴木規郎。
背中を丸めて重戦車の如くドリブルをするこのハタチが、
あらん限りの力を込めて左脚を振りぬいたフリーキック。
白い紙に定規を当て、2Bの鉛筆で力任せに引き倒した真っ直ぐな線。
コレを見るために、今日ここへ来たと心から思わせてくれる、網膜に焼きついた軌道。
歓喜のコールが終わったあとも、ざわめきが収まらないゴール裏では、
誰もがたった今目の前で引かれた「線」を頭の中で反芻している。

後半、さしものヤングガンズたちもその勢いに陰りを見せ始めた。
押し込まれる時間が長くなり、馬場が退き、血気盛んな近藤は赤紙を喰らって戦線離脱。
先輩譲りのガス欠にあきれつつも、本日のメインディッシュをすでにいただいてしまった
満腹感で、立つ腹も募るイライラもさほどでもない。そして終了のホイッスル。

国立競技場はすっかり夜の風情。
満場一致のお立ち台に立つ主役の口は、いつになく滑らかだ。
やっとの初得点、しかも決勝ゴール、ハタチの胸中は心臓も飛び出さんばかりの興奮。
ようやくのスタートライン、ということを考えればここで浮かれて欲しくもないのは
我々スタンドの老婆心ではあるけれども、それでも今日のところは。

あの見事な「軌道」に対して、満点をつけさせていただく。
嬉々としてマイクに向かって語る、甘々な自己採点を聞くまでもなく。


2004.6.6 sun



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