Saturday In The Park

〜football weekend〜


1stステージ第12節 FC東京 2−1 ガンバ大阪 at 味の素スタジアム


No.49 Heat Of The Moment 〜この一瞬の為の幾日が〜

開始早々、二川や大黒のパス回しに右往左往し、
すばしっこく走り回るフェルナンジーニョに振り回され、挙句の秒速失点。
ホイッスルが鳴ってからわずか1分足らず、唖然呆然。
スキルの高い相手の前線連中の尻尾を捕まえるのに、早くも一苦労である。
しかし、しかしだ。本当に怖いのはGKである。奴の「口」をどうこじ開けるか。
先々90分の行方を占うカギは、そこにあるわけで。

松代直樹は「口」の堅い男である。
しかも、こと我らが東京が相手となれば、おいそれとその「口」を開けることはない。
前半10分、CKからジャーンが頭で叩きつけたシュートを、
それはそれは見事な反応で枠外へと弾き出す松代。
「今日もおまえかよ……」の呟きは瞬く間にスタンド中に伝播し、そこかしこで漏らされるため息。
体も温まらぬうちに背負ってしまったビハインドを思えば、
お先真っ暗な悲観を抱えるのも責められまい。

6月梅雨空、雨こそ落ちて来ないものの、分厚い曇天にフタをされたスタジアムは温室の中のよう。
スタンドでこれならば眼下のピッチでは如何ばかりか。
さしもの松代も暑さで酸欠状態、する気はなくともあくびのひとつくらい思わず飛び出せば。
せめて、その堅い固い「口」をあんぐりと開ける一瞬があれば。

チャンスは1分後にやってくる。飛び込んだのは背番号9。
CKにピタリ合わせた頭の一振りで、ボールはゴールマウス右寄りへ突き刺さる。

ついに「口」を割った。

瞬間を逃さずにこじ開けたのは、我らが悩めるストライカー。
この1点を、どんな思いで待ちわびたのか。この1点が取れぬ自分を、どれだけの時間責めたのか。
思いを背負ったゴールが、ゲームをヒートアップさせる。
攻めろ。攻め続ければ「口」は開く。今、目の前で見ただろう?

そして後半、目の覚めるような馬場憂太とのワンツーで決勝点を挙げるルーカス。
どうしてももう一度、松代の「口」をこじ開ける必要があった。
チームの勝利はもとより、長いトンネルをくぐった果てに手にしたゴールのその次を、
この90分内に取ることが、9番にはとても大切なことだったのだと思う。
ボールに口はなくとも、スコアに注釈は要らずとも、2点目にはいろんな言葉が込められている。

曰く「待たせて申し訳ない」。曰く「もう大丈夫だ」。
曰く「これから何度だってゴールを決めてみせる」。曰く「俺はフォワードだ」。

ゲームが終わり、手を振りながら9番がスタンドへ駆けて来た。
おめでとう。今度は自分自身の口を開く番だ。満面の笑み。白い歯がこぼれている。


2004.6.12 sat



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