Saturday In The Park

〜football weekend〜


親善試合 FC東京 0−0 ASローマ at 味の素スタジアム


No.50 青と赤、もしくはそれ以外

「真夏の夜の夢」などと小じゃれて呼ぶにはあまりにも過酷だった1年前の8月。
それにくらべ、今年はなんと穏やかなことか。雷もなければ雨もない。
夕涼みにぴったりの心地よい風がスタジアムを吹き抜けていく。

思えばあの「8月5日」は本当に特別だった。
日本中が注目し、メディアは当日までの幾日かを、中途半端なミーハー情報で煽り立てていった。
僕らのクラブは日本一有名な噛ませ犬として認識され、当の選手たちの戸惑いを他所に、
ファンは沸々と怒りと反骨でその胸の内を8月5日に向けてたぎらせていく。
まさに「マドリー、くそったれ」である。
かくて、土砂降りのコクリツにお下品極まりない東京ファンの怒号が満ちることとなった。
それが2003年8月5日である。

そして1年後。ああ、もう1年なんだなあと、僕らはスタンドでビールを飲み、ポテトをかじり、
のんびりとデルベッキオやモンテッラのウォームアップを眺めている。
ヨーロッパのクラブがアジアへの集金ツアーに出ることも、すでに当たり前のことになりつつあるようで、
昨年のような気負いやイライラをスタンドの空気に感じ取ることはない。
肝心要の王子様のご欠席に少々しらけ気味なのか。はたまた、遥かスペインの地にて
すでにして「名門クラブ」の鼻っ柱を叩き折ってきた自信なのか。
いずれにせよ、僕らは不思議なくらいいつも通りに歌を唄い、選手の名を呼び、ホイッスルを待った。

ゲームが始まってしまえば、僕らの視界はよりクリアになる。
事は単純だ。青と赤のシャツを着ていない奴らが、敵である。イタリアの名門だろうが何だろうが、
ここがホームである以上は、遠慮なく野次り、罵り、揚足を取る。
向こう正面でちんまりと固まっている「ロマニスタ」たちはさぞや気分が悪かろうが、
親善試合と本気勝負を区別できるほど、ファンも選手も監督も賢くはできていないんである。

それにしても、ローマの面々は今日のゲームでいかほどの「本気」を出したのだろうか。
中盤にはずいぶんと見通しのよいスペースが点在し、
詰めるでも寄せるでもない、半端な間合いで東京の選手を囲むだけ。
僕らとしては、右サイド付近でひらりひらりと舞う、ケリーのダンスを堪能しているだけで
時間は過ぎていく。ため息のひとつ、歯ぎしりのひとつさせてはくれない「名門」。
そんなわけで、1年前とは違う意味で、スタンドはまたもや品性下劣なコールを繰り返した。
「ローマ、くそったれ」

正直なところ「よくわからない」90分間が過ぎた結果は、スコアレスドロー。
これまたなんとも言いようのない微妙さである。
ふと見れば、地球を半周して僕らのホームまでやって来た面々は、
挨拶もそこそこに控え室へと去っていく。
僕らとしては、選手もファンも(おそらく監督も)、もう少し本気で喧嘩をするつもりだったはずなのに。
よくわからない。

そしてまた思い出すのは、やはりあの土砂降りと雷の夜なのである。
日本一、いや世界一空気の読めないサポーターとして散々煙たがられたあの夏の夜に比べたら。
今夜はなんと涼しげな風が吹いていることか。なんと安らかに家路につけることか。
それがもちろん物足りないとは感じてはいるけれども、まあいい。だって、「親善試合」だろう?

ローマ? 
よくわからないけれど、青と赤のシャツを着ていないから、敵だな。


2004.8.8 sun



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