Saturday In The Park

〜football weekend〜


2ndステージ第3節 FC東京 1−0 東京ヴェルディ1969 at 味の素スタジアム


No.52 Smoke On The Water !

ゴール真裏、少々高い位置から見下ろしていたせいで、一瞬、何が起きたのかわからなかった。
試合終了間近。気温と同様、少々お寒いスコアレスゲームをブレイクする真っ直ぐな弾道。
GKの高木は、首だけを動かした。見切ったか。見送ったか。
はっきりと見えたのは、揺れたネット。スローモーションのようにボールが落ちる。
水がはねる………。

雨天の国立競技場は、フタのない巨大なボウルのようである。
猛暑で地表に吸い込まれた熱を冷ますように、前日の晩から降り続く雨。
フィールドのプレイヤーたちと同じだけの量の雨粒が、シャツにジーンズに沁み込む。
試合開始のホイッスルが鳴る頃には、ボウルの底であるピッチはしこたま水を溜め込んでいる。
ゲームは、そんなぬかるんだ地面に脚をとられるように不恰好に進んでいく。

東京は明らかにこの雨に手を焼いているように見える。
出したいと思ったところにボールが行かない。追いつくだろうと出したパスが止まる。
まるで、濡れたピッチでゲームをするのは初めてとでも言うように、
跳ねない転がらないボールを捕らえきれずにいる。
ツメの甘い中央からの攻め、サイドから上げられる頼りないクロス、
そして、何度となく放たれる正確性を欠いたミドル。得点の匂いがほとんどしないのは、
開幕からの2試合と同じである。

後半。大半の時間、相手を自陣に釘付けにしているにも関わらず決定打は出ない。
ベンチは次々と攻撃的なカードを切っていく。そして最後に振り出した一枚で「当たり」を引いた。
梶山に与えられた指示が正確にはどんなものであったか、現時点ではわからない。
しかし、少なくとも濡れ鼠になって唄い続けるスタンドの要求はひとつだけだった。打て。

「無回転でまっすぐに突き刺さる」「内側から外へと逃げる弾道」
スタンドから見たこのシュートのイメージはまちまちだろう。雨だった。興奮していた。
そして、なんといってもダービーだった。そう、「よくわからないけれど、とにかくスゴかった」。
かくて、ピッチに入ってから放ったたった一本のシュートが、ゲームを見守る観衆を煙に巻いた。
降りしきる冷たい雨も、決して褒められたものではない内容の90分も、さらに言えば、
残り12試合に悲観を持たざるを得ないこのシーズンの行く末まで、蹴散らし、吹き飛ばし、
ボールが煙を上げてゴールへと吸い込まれていく。
今、何が起きた? 一瞬の間。そして。スローモーションのようにボールが落ちる。
水がはねる………。

歓声。


2004.8.29 sun



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