Saturday In The Park

〜football weekend〜


2ndステージ第4節 FC東京 3−1 ヴィッセル神戸 at 味の素スタジアム


No.53 夜明け前 〜Dawn Purple〜

右サイド、前めの位置に24番は立っている。

華奢な体躯でピッチ上を軽やかに駆け回る。
絶妙のパスを最前線へ送り込み、絶妙のタイミングでゴール前へ現れるミッドフィールダー。
2002年開幕戦の衝撃。そしてその数日後にもたらされた、もうひとつのニュース。

2年と4カ月、らしい。
小林成光が、最後にその名をスタメンのオーダーに連ねてから流れた時間である。
前節で待望の先発プレイヤーとしての復活を果たし、今夜再び、
味スタのピッチ上で試合開始のホイッスルを聞いた。
久しぶりに見るその体つきは、少しだけ厚みを増したようにも見える。
石川直宏の指定席にその身を収める24番。背後には加地。
どうなんだ、と心の中で問いかけてみる。そこからの眺めは、どんな感じだ、コバ。

ゲームのスポットライトは、逆サイドで溌剌と踊る馬場へ向けられている。
チャンスは左を経由して生まれ、クロスが、突破がそこから仕掛けられる。
時折、ボールが最後列から右へと振られ、24番がボールに触れた。
はたく。回す。預ける。コバが繰り返すそんな動作を、スタンドからじっと見つめる。
今夜のゲームのブライトサイドとなった「左」の反対側。
右サイド、前めの位置に24番は立っている。

ある場面が頭から離れない。
味方のコーナーキック、24番はゴール前へ詰めている。馬場が蹴ったボールに反応し、
落下地点手前に動き、バックヘッドでボールを送り込もうとする。
が、ボールは頭上はるか彼方。届く高さではなかった。
それでも、触れようと思ったはずだろう。それでも、飛べると思ったはずだろう。
直後、ベンチは交代のカードを切る。小林OUT、阿部IN。
ゲームのスポットライトが、この瞬間から両サイドへの2灯へと変わった。

24番がタッチラインを跨ぐ。
交代の阿部へと手を合わせる仕草。ベンチ前の監督へ軽く下げた頭。
どうだった、と心の中でまた問いかけてみる。今夜はどうだった、コバ。
また、出番は来るだろう。また、試合開始のホイッスルを聞くこともあるだろう。
次こそは、触れようと思ったボールにその頭が、脚が届くはずだろう。

終盤、チームは両翼を勢いよくはためかせ始めた。
右から左から、若さと勢いに任せて相手のDF陣を切り裂く。
速さと鋭さを武器としたFC東京の「攻撃」が、今夜もスタジアムの照明の下で刃物の如く輝いている。
2年と4カ月前、24番はその礎を作った。比肩する者なき凶器だった。
そして今、もう一度その刃を研いでいる。僕らは、もちろんそれを知っている。
再び、誰よりも切れ味のいいナイフとなって帰ってくることを。

走り、飛び、汗を流して、長い夜の果ての黎明を待っていることを。


2004.9.11 sat




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