Saturday In The Park

〜football weekend〜


2ndステージ第5節 FC東京 1−1 柏レイソル at 柏の葉公園総合競技場


No.54 ありったけのコイン

「なんだ。東尿ばっかじゃん」

江戸川台駅発のシャトルバスの車中、隣で楽しそうに会話なさっていたさわやかなカップルが、
スタジアムが近づくにつれ増えていく沿道の人波を見て、こうのたまうんである。
しかも吐き捨てるように呟いたのは、かわいらしい彼女の方だ。
おまえらのホームだろうが、しっかり数そろえろこの粕が、と、
声には出さずとも心の中で返させていただき、内心ニンマリともする。これだから柏戦は面白い。

とはいえ、このカードが「金町ダービー」なる名称で呼ばれることもすっかり少なくなった気もする。
牧歌的なあの時代。互いに揶揄し合い罵り合うも芸のうち。楽しかったなあ、などと
回想に耽る資格などもちろんなく、その時代と関係性に微妙な変化をもたらしてしまった一因は
他ならぬ我々にあるわけで、文句も言わず、
こうしてすごすごと乗り合いバスにて運ばれているわけである。

しかし。ゴール裏に到着して対岸を眺むれば、最早お遊びなどしている場合ではない、
あちらさんの深刻なお家事情がイヤでも目に飛び込んで来る。
名指しで選手を批判する白弾幕と、スタジアムのMCにさえ完全なる沈黙を貫く黄色い面々。
いつになくヘヴィな空気を感じつつ我々は、実のところ頭の半分を木曜の浦和戦に占められている。
台所が炎に包まれているのは実際他人事ではなく、シーズン初っ端から2敗の借金を背負い込み、
前節にてやっと健全経営に戻した我々とて同じようなものである。しかも。
木曜のゲームをプレッシャーなく迎えるためには、ぜひとも、今日のゲームにて勝ち星を先行させたい。
ポケットの中のコインを、少しでも増やしておきたい。だって相手が相手だもの。…それが本音。

そして、そういうチンケな見積もりを腹の中に忍ばせた時点で、
ゲームというものは結果はもちろん、内容に於いてすらものの見事にこちらの望まぬ方へと
転がるものなのだ。まるで見透かしたように。
残暑と呼ぶにはあまりにも可愛げない蒸し暑さの中、前半の東京は意気揚々と攻撃に精を出していた。
ゴール裏で睨みを利かせる件の白弾幕にビビったわけでもなかろうが、
柏の選手もやたらとミスが多い。しかし、これもまたいつもの倣いではあるのだけれど、
チャンスが多い時ほどからきし決まらないもので、このまま0-0で折り返したらマズイな、
と弱気を見せたらその通りに後半はヒドイことになった。

足元へ足元へとボールを繋ぎ出す柏に対し、
東京は宙に浮いたボールに頭と脚をバタつかせるばかり。
当然のことながらポゼッションも落ち込み、もどかしくて吐きそうになる典型的な「悪いとき」の状態。
それでも復活の戸田ゴールでちょっとばかり運の強さを信じたのも束の間、
拍子抜けするような失点で雀の涙ほどの勝ち点だけいただいて終了。
この90分間の、一体どこを見て何を語ればいい? 

さて、帰りもまた乗り合いバスである。
限りなく負けに近いドローを喰らったのが我々であるならば、勝ちに値する引き分けをもぎ取った
柏の面々、さぞや晴れやかな顔で家路に着くのだろうと思ったが、
タフでヘヴィなその台所事情は、この程度の展開で喜ぶことをとてもじゃないが許さないらしい。
そうだ。当たり前のことではあるけれども、我々は取れるだけのコインを
相手からひったくることを、互いに夢想して行きのバスに揺られていたのだった。
くたばれ東尿。くそったれ粕。「3点よこせ」。

結局、我々は決して十分とはいえない「所持金」をもってして、木曜日に臨むこととなった。
相手は、理不尽なまでの攻撃力でリーグ中のチームから勝ち点を巻き上げ続けている浦和である。
2勝2敗1分け。ひとつの敗北が、火種のくすぶっている台所に油を注ぐ
極めて危うい状態ではあるが、それでも。相手が浦和である以上は、
たとえ戦力的に劣っていても、怪我人が絶えなくても、エメルソンがウチにはいなくても、
ポケットの中のコインをありったけ集めてテーブルに叩きつけ、真っ向勝負に出るしかないのである。
腹を据えて。睨みを利かせて。

「3点よこせ」と。


2004.9.19 sun




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