Saturday In The Park

〜football weekend〜


ナビスコ杯準決勝 FC東京 4−3 東京ヴェルディ1969 at 味の素スタジアム


No.55 Wednesday Nightmare

4-3というスコアだけを見るならば、取って取られて競り勝った「ダービー」らしいゲームというところか。
ところが中身を開いて覗いてみれば、冗談としか言いようのないゲームなのである。
体よくまとめられたスラップスティックのコメディ。笑うしかない。

水曜日、勤め人たちがスーツで駆けつけた味スタは、試合開始前からダービーソングの
エンドレスリピートで盛り上がる。負けられない。負けるわけはない。
今宵のゲームのご褒美は、僕らが初めて駆け上る高み、
栄光の梯子の最後の一段「ファイナリスト」の称号である。
加えてお相手は、ここ首都に於いての永遠の商売敵。勝たねば。梯子から転げ落ちるのは、奴らだ。

左から攻めるあちらさんと、右をぐりぐり掘り起こしていく東京。
広いピッチをタテにニ分割し、片側だけのハーフコートでゲームは行われているかのような前半。
刺して刺されてのサイドの攻防はしかし、
休み中にその刃を研ぎに研いだ石川直宏がいるぶん、僕らに分がある。
脚に触れれば切れそうな鋭角なステップで右をえぐり、ルーカスへ決め球を供給する。
ヴェルディの選手たちの甘い寄せの隙間を突きつつ、あれよという間の3得点。
決まりか? 梯子のてっぺんで万歳でもするか?

ところがここでオチを用意するのが我らがクラブの性なのだろうか。もしそうならば、勘弁して欲しい。
2-0がちっともセーフティでないことは昨シーズンで十分に学んだ。
だからもう1点の保険を僕らも求めた。なのに、それを追いつかれる?
相手は10人。3点のリード。それなのに、後半、自陣に不要なスペースを
どうぞといわんばかりに差し出したのは東京だった。
浮いた競り玉、勢いのないパスをことごとく拾われ、スピードに任せてゴール前へ運ばれる。

僕らが前半開始早々の先取点で甘い甘い夢を見始めたように、ヴェルディは後半初っ端の一矢で、
ゲームがまだ終わってないことに、追いつき追い越せるという夢に気が付いた。
残りの45分はかくして、僕らにとっては一刻も早く終わらせてしまいたい悪夢となる。
タイスコアで終える90分。延長。……延長? 冗談だろう?
そして運命のホイッスルの47秒後、僕らは歓喜の声を上げる。
どうにかこうにか、梯子の最終段を無事に登ったことを、頬をつねって確認する。
夢じゃない。冗談じゃない。夢であってたまるか。

結局のところ、東京ダービーはそんな悪夢のなすりつけあいだった。前半、笛が鳴った直後から、
ヴェルディとそのサポーターたちは目を背けたくなるような悪夢と直面した。後半は、僕らの番。
最後の最後に、正気に目覚めたのは幸いにもこちらだった、ということか。

だから、スタンドは90分の終了後から延長開始まで休むことなく件のダービーソングを歌い続けた。
思い出してくれよ。ほんの数十分前のことだ。甘い希望に満ちた前半の幕を切ったとき、
ピッチに降り注いでいた歌だ。もう一度、夢見るんだよ。僕らはそう歌っていた。

夢中で、歌っていた。


2004.10.13 wed



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