Saturday In The Park

〜football weekend〜


未だ覚めやらぬ黄昏の中で見た夢。


No.57 コクリツオレンジ

ああもうあれから一週間たったのかと、サッカー雑誌やテレビなど見ながら思う日々。
何度も何度もPK戦のシーンをプレイバックして見るにつけ、
加地のキックに込められたものの大きさと、それが決まった瞬間に吹き出した思いの熱さを知る。
ハナからそれは夢にしか過ぎないと、強くもなければ弱くもないのがいいんだよと、
斜に構えてスタンドに通い、それでも心のどこかで夢見ていたことが現実になった。

一週間前のあの日、11月3日のことを今あらためて言葉にするならば、それはどんなものなのだろうと
徐々に現実感を取り戻し始めた頭でもって考えながら毎日を過ごしているのだけれども、
「感動」とか「ありがとう」とか、なんだか他人から与えられたものに対するフレーズじゃ
どうにもしっくりと来なくて、千駄ヶ谷にとぐろ巻く長蛇に飲み込まれた朝から、
報告会のあと、真っ暗な一本道を何度も込み上げそうになるものをこらえながら、
多磨駅までそれでも軽い足取りで歩いた夜へと至るまでの十数時間を思い返してみる。

胸と胃がきりきりと悲鳴を上げたキックオフ。ジャーンの退場。鬼の形相でピッチを駆ける今野。
その足下に徐々に伸びて行く長い影。向こう正面の赤い波と、僕らの脱力したゴール裏。
黄昏のスタジアム。天を仰ぐ梶山、咆哮する土肥、両手を広げた加地、
そしてコクリツのオレンジ色の照明。
辛かったけど、疲れたけど、この先何度だって頭の中で反芻できる記憶。
もう一度、同じ一日を過ごしたいかと聞かれれば、即座にYESと答えるだろう。…なんで?
「楽しかったから」

そういえば、翌日、何人かの人に聞かれたっけ。どうだった? 迷わず答えたものだった。
「楽しかった」。きっとそれが、あの日を表す言葉なんだろうな、と今やっと思う。
11月3日の国立競技場は確かに特別な場所だったけれども、いつもどおりに、いた。
愛すべき監督と、誠実で真摯な選手たちと、へそ曲がりのサポーターたちがいた。

だから楽しかったんだ。すごく。


2004.11.10 wed




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