Saturday In The Park

〜football weekend〜


Jリーグ第15節 FC東京 0 − 0 東京ヴェルディ1969 at 味の素スタジアム


No.64 90分の間に


今日は妻の実家で法事があった。
前日は仕事で夜中の2時過ぎに帰り、なんだかんだで3時間ほど眠って、
朝早く、一足先に千葉の実家入りしている妻と娘と合流。
もちろん、行きの電車の中では爆睡だった。最近、明け方帰りも続いて体が辛い。
つつがなく法事を終え、夕方、一人で飛田給へと向かう乗り継ぎの最初の電車に乗る。
天気も悪かったので、迷ったけれど一人観戦を選んだ。
妻は娘を乗せて車を運転し、自分が出た少しあとで実家を出たそうだ。
案の定、高速に乗ったあたりから後部座席のチャイルドシートで娘は身をよじってぐずりはじめ、
道中の大半は大泣き、泣きすぎてげえげえ吐いているのに高速上ではどうすることもできず、
ようやく一般道に下りた後、道路わきに車を止め、親子してわんわん泣いてたそうである。

そしてその時間、僕は味スタにいた。

ダービーの90分は、僕個人にとっては
「車の中で二人して泣いている妻と娘」という形と色をしていた。


そういえば、行きの京王線の中で、隣にカップルがいた。
彼は東京の(たぶん熱心な)ファンで、彼女はサッカーに関してはあまり詳しくないようだった。
ダービーとは何か、今、両チームがどんな状況にあるか、そんなことをつり革に掴まりながら
彼女に話していた。「まあ、大したことじゃないんだけどね」という顔をしながら、
ほんとのところは大いに大したことである、ということを必死に彼女に悟られまいとしているようだった。
彼の心の底にある「必死」が、隠せども言葉の端々に見え隠れしたのは、こんな台詞を語ったときだ。
「今日負けたチームの監督がね、辞めさせられるんだよ。たぶん」

そして二人は味スタへ向かった(はずである)。

ダービーの90分は、彼らの貴重なデートの時間を、
どんな色と模様で染め上げたのだろう。


スタジアムは異様だった。
いろいろな人々の思惑と夢と希望と不安がごった煮になっている地獄の釜のようだった。
そこに、雨が絶え間なく降り続く。
立ち上る水蒸気の中にも、様々な色と形と模様をした「ダービーの90分」が絡まっているのが見える。
僕らは、手にしていた時間をその煮えたぎる釜の中でどんな形で失ったのだろう。
FC東京は、2万数千の人々の90分を一体どこへ持ち去ろうとしていたのだろう。

この先へと続いていく未来のために、
無条件に捧げ続けられる僕らの土曜日の時間のために、
イノセントな時代は終わらせなくてはいけない。

そう書きなぐったメモを「ダービーの90分」に乱暴に貼り付けて、
ポケットの中にしまった。

2005.7.9 sat




return to top