Saturday In The Park

〜football weekend〜


Jリーグ第17節 FC東京 4 − 0 横浜Fマリノス at 味の素スタジアム


No.65 トウキョウトラディショナル 〜Hip To Be Square !〜


「代表右サイド加地に、田中隼麿が挑戦状」

などというベタ記事を見たのは、一昨日のスポーツ紙だったか。
翌日の続報、というか、なぞり記事もまた奮っていた。当の加地曰く。

「彼はすべての面において既に僕を超えています」

この受け答えをして、「加地、田中隼麿を褒め殺し」てな見出しを打ったりしていたわけだが、
決して褒め殺している意図など加地にあるはずもなく、
本人は素でそう思っているのだろうな、というのは、東京ファンなら誰しも察するところだったはずだ。
勤勉、実直。加地に限らず、東京の選手たちにはマジメさんが多く、
ちょっとは狡猾なところを見せてみろ、と時にイライラするほどの天然っぷりを毎試合見せてくれる。
本日、蒸し風呂状態の味スタで行われたゲームでも、
90分間、途切れることなく勤勉なサッカーを見せてくれた。
これこそ東京のトラッドスタイル。実に素敵なチームカラーである。

その「伝統色」の威力を思い知らされたのが、件の田中隼麿。
対面の戸田光洋(これまたマジメさに於いてはチーム屈指だ)が、イヤというほど背後を突く。
フラッグが上がろうが、長い距離を飛んできたパスがあっけなくタッチを切ろうがおかまいなし。
機械的に動物的に、ただただ自分のサイドでアップダウンを繰り返す。
田中としては、加地に負けじと前線へのランニングを目論んでいたかどうかはわからないが、
疲れ知らずサボリ知らずの13番のケアに手一杯で、オーバーラップどころではない。

そして後半5分。そのうるさい13番を思わず引き倒してしまった果てに与えてしまったFK。
血気盛んな鈴木規郎の描くぶっといラインがGK榎本の脇をすり抜けた瞬間、
田中の心の呟きが聞こえるような気がした。

「余計なこと言わなきゃよかった」

とにかく今宵の東京は、湿気の溜まりと化したスタジアムにおいても如何なくそのマジメさを発揮した。
寄せの速さ、しつこさ、あきらめの悪さは真骨頂を現し、
どの選手も長い距離をひたすら走る。そしてボールを奪う。鬼の形相で。
こんなにフィールドを広く使ってサッカーをする東京を見るの久しぶりである。
前節、待望の勝ち点3を久方ぶりに手にし、ここで間をおかず勝つことの意味を、
悲壮な覚悟で頭に叩き込んでからピッチに立ったであろうことは想像に難くない。
横浜は、東京の選手たちがゲームに持ち込んだそんな熱を見誤った。
その筆頭が、相手の右サイド7番だった、というわけである。
彼の後悔は、敗色濃厚となった後半41分、
馬場憂太の描く美しい放物線を最も間近で眺めるハメになったところでクライマックスを迎える。
4失点。自らのサイドで起きた悲劇の多さに、頭を抱えたい気持ちだっただろうか。

とにかく。マジメで不器用であることを、ナメちゃいけない。
ある種の愚直さにおいては、おそらくリーグ1であろうこのチームは、
そのせいで一体何試合、勝ち星を見ることができなかったか。その怖さといったら。
マジメなぶきっちょたちが繰り広げるサッカーほど恐ろしいものはないし、
面白いものはない。久しぶりにそう感じることのできる、いい宵である。

そろそろ梅雨明けの声も聞こえてきそうだ。


2005.7.17 sun




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