Saturday In The Park

〜football weekend〜


Jリーグ第28節 FC東京 2 − 1 東京ヴェルディ1969 at 味の素スタジアム


No.68 彼岸にて


後半29分あたりを境に、スタジアムの空気が変わるのを感じた。

相手の不用意なパスを梶山が脚を伸ばしてカット、そのまま前線へパス。
ボールを受けた阿部が右から放ったシュートをGKが弾く。
流れたところへ今度は左からササがスライディングで飛び込むも届かず、
相手DFがクリア、それをまた今野が拾ってミドルシュート。
得点には至らなかったものの、この波状攻撃が何かのスイッチを押した。
潮目が変わったのを察したかのように、僕らがピッチへと注ぐ声はボリュームを増す。
陣取る席はアウェイサイド、つまりは今日はダービーなのである。

負けられるもんか、という気持ちが現れるシーンは、そこかしこに窺うことができた。
再三のシュートを外してピッチを叩く馬場憂太。見事なドリブルでDF3人をかわす阿部。
そして、中盤での的確かつパワフルな寄せを見せたすべての選手たち。
飛んでくるボールはすべてモノにし、確度のほどはともかくシュートは相手の倍以上打った。
FC東京は、スタンドにいる我々と同じ熱をピッチにて発散しているのだ、という証である。
かくて一度流れが変わったスタジアムの風向きは一瞬たりとも気まぐれを見せることなく、
ロスタイムの歓喜の輪へと至った。
勝てば喜びは倍。負ければ落胆は底なし。その90分だけは、およそスタンドにいる僕らが
何を投げ打ってでも勝利が欲しい、と願うスペシャルゲームである。

終了のホイッスルが鳴った瞬間の、此方と彼方の温度の差。
とりあえず、今日ノックしたドアの先は天国だった、と胸をなでおろしつつ、
散々な週末が約束されたであろう、かの緑色のファンたちに敵ながら同情。
すべてを失ってしまったような絶望が、ホーム側スタンドを覆っていくのが見える。
ついさっきまで体をガタガタ震わせてゲームの趨勢を見守っていたのは同じである。
しかし今、僕らは幸せだ。何を投げ打ってでも欲しかったものが手に入った。

死にたいくらいに、幸せだ。


2005.10.23 sun




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