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1955年に発表された、ロシアの亡命貴族ナボコフの、この作品ほど、名前だけ独り歩きするわりには、読まれていない作品も少ないだろう。だいたい、なにしろ長い。日本語訳にして460頁以上ある。それに、ナボコフ独特の、こまごました言い回しが、しつこくて読みずらい。おまけに、大体の人が予想するであろう性的なシーンは、ほとんどないかわりに、主人公の病的な心理描写がえんえんと続く。 想像するに、ほとんどの人は、途中でぶん投げてしまい、まあ、少女しか愛せない中年男の話だろうということにして、あとは自分の想像で補っているのではないだろうか。そうでなければ、ロリコンという言葉これほどはやって、いわんや、そういう男性が増えているなどということは、口がさけてもいえないはずである。 お前、ロリコンじゃないのか、と言われた男性の皆さん、また、あんたの好きな人ロリコンよ、あるいは、あんたの彼氏ロリコンという噂よ、といわれた女性の皆さん、安心してください。もし、ロリコンなるものが、『ロリータ』の主人公のハンバード教授のようなひとであるならば、そんな人間、滅多にいません。日本に数人でしょう。嘘だと思ったら、この作品、特に、第二部を、ちょっとでいいから読んでみてください。 さて、さらに『ロリータ』は生まれながらにして、少女しか愛せない男の話でも、実はないのである。主人公ハンバードは、十代のころに、深い関係になった初恋の相手と死別して、(たぶん、ナボコフ自身が、十代の時に、ロシア革命によって、恋人と生き別れになったことが反映していると思われる)死んだ初恋の少女の影をおっているうちに、少女しか愛せなくなってしまった人間なのである。変質的な描写にだまされやすいが、実は、初恋に生涯を支配されてしまって、最後には破滅してしまう男の物語なのである。 『ロリータ』は、スタンリー・キューブッリクによって、また最近はエイドリアン・ラインによって映画化された。キューブリックのほうは、大胆に筋を取捨選択していて、出来のいいサスペンスになっている。エイドリアンのほうは、小説の圧縮版という感じである。 ちなみにロリータ・コンプレックスとは、ロリータのコンプレックス、つまり、おじさんしか好きになれない少女の心理の説明の用語であって、成人が思春期以前の子供を愛好する場合には、ペドフィリアなる別の用語があるよしである。 |
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