MSCBに関する一考察
(1)MSCBの概要




 最近、経営状態が思わしくなかったり、成長期にあることから、資金調達力が低い企業が、MSCBと呼ばれる社債の一種を発行して資金を確保することが多くなっています。
 ところが、その後、資金繰りが改善したはずなのに、その企業の株価は下がり続け、最後には倒産してしまうことも数多くあります。その陰には、通常の転換社債にはない、MSCB独自の仕組みがあります。
 ここでは、MSCBの概要とリスク・利点、また、MSCBの引受先にとっての利益や、既存株主が損害を被る仕組みについて、簡単に紹介したいと思います。

〜MSCBの概要〜

 MSCBとは、Moving Strike Convertible Bond の頭文字をとったものだそうです。日本語では「(円貨建)転換社債型新株予約権付社債」と言う名前で発行されています。
 かつては、「転換価格(下方)修正条項付き転換社債」と言う名称で発行され、通常の転換社債と区別できていたようですが、平成14年4月からは、通常の転換社債も「転換社債型新株予約権付社債」と言う名称で発行されるようになったため、名称上は区別できなくなっている模様です(参考:東証 証券用語)。
 以下では、通常の転換社債型新株予約権付社債をCB、問題にしている転換価額が下方(または上方・下方双方に)修正される転換社債型新株予約権付社債をMSCBと呼び区別します。
 CBでは発行時に一株あたり何円で株式への転換が行われるか(転換価額)が決定され、株式分割などの場合をのぞいて転換価額は固定されているのに対して、MSCBでは、発行時に決定される価格よりも株価が下がった場合、それにあわせて転換価額も下方修正されます。ただし、転換価額の下限が決まっていることもあります。
 たとえば、当初転換価額が500円として、当初転換価額の50%を転換価額の下限と決定していた場合、転換価額の下限は500×50%=250円となります。
 一方、転換価額の下限が定められていない場合は、株価にあわせてどこまでも下がります。あえて言えば、株価は1円未満には下がらないので1円が下限となります。しかしながら、株式併合が行われた場合はこの限りではありません。10株→1株の株式併合が行われたあとに、株価が一桁に突入した場合などは、併合前の株価に換算すれば1円未満なのです。
 転換価額が下方修正されると言うことは、株式転換したときに得られる株数が増えることを意味しています。言い換えると、MSCBが発行されている状態で株価が下がると、潜在株式数が増加し、何もしていないのに株式の希薄化(一株あたりの価値の低下)が進むことになります。
 この関係を数式で表すと、

株式への転換株数

 と、なります。
 以下に、当初転換価額が500円の場合の、(通常の)CBと、転換価額の下限が当初価額の50%のMSCB、転換価額の下限が定められていないMSCB1億円分を株式転換した場合の株式数を示します。(MSCBの転換価額は 転換価額=株価 とします)

表 株価変動に伴う転換価額と各種CB1億円分あたりの転換株式数の変化



 株価が下がれば下がるほど、転換時に得られる株式数が多くなることがおわかりになるかと思います。
 一方で、株価が上がった場合はCBと同様、転換価額は変更されません。ただし、一部のMSCBについては、一定の価格帯(上限価額と下限価額)を設けて、その範囲内で転換価額が株価と連動するようです。
 MSCBでは、利息は付いたとしても大した額ではないことがほとんどで、無利子のことも多いようです。
 MSCBの発行は、特定の引受人に対して発行する私募形式(株式の第三者割り当てに近いと思います)で行われることがほとんどで、海外のヘッジファンドが引受人になることが大半のようです。

 最近では、MSCBは様々な種類が発行されており、一くくりにして説明する事は出来ないと考えております。
 MSCBに関するリスク、MSCB発行企業の株価が暴落すると引受先が儲かる仕組み、そして、私が考える長所については、次ページ以降で順次説明していきます。


MSCBに関する一考察 (2)下限転換価額なしのMSCB

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 参考資料
 東証 証券用語
 FP総研 株主は食い物にされる?MSCBって何?
 宝田豊のマネー砲談 さん 「MSCBは象の墓場への切符である」(vol9,第40回)






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