MSCBに関する一考察
(4)リセット日の概要と意義について



〜予定は未定 リセット日の概要〜

 通常、MSCBの転換価額の修正は、その日の株価終値、または直近数日間の終値の平均に基づき随時行われることが多くなっています。
 ところが、最近、「リセット日」または「決定日」などと呼ばれる、特定の日の株価を基準にして、転換価額の修正を行うMSCBが現れています。
 以下では、リセット日の株価水準と転換価額の関係について説明した上で、リセット日の存在が発行企業、引き受け手、そして既存株主にとってどのような意味合いを持っているか考察してみます。

 さて、問題にしているリセット日がいつに設定されるのかは、様々あるようですが、毎月1回、6ヶ月後、1年後などが比較的多く見受けられるようです。
 また、リセット日は、1回だけではなく、通常複数回あります。たとえば、1回目のリセット日はMSCB発行日の1年後、2回目のリセット日は1回目のリセット日のさらに1年後(つまり、発行日の2年後)・・・と言う日取りになったりします。
 このタイプのMSCBでは、大半の場合、(3)で説明した下限転換価額が設定されます。が、注意点として、下限転換価額を決定する場合の基準価額が、2回目以降のリセット日では、当初転換価額ではなく、前回のリセット日(つまり、2回目のリセット日では1回目のリセット日)に修正された転換価額、すなわち、当初転換価額より低い価格を基準にして決定される可能性がある方式をとっているMSCBが存在していることが挙げられます。
 言い換えると、下限転換価額の算定基準が、

 (a)常に当初転換価額を基準にする方式
 (b)前回のリセット日に決定された転換価額を基準にする方式

の2種類があり、全く意味合いが違ってきます。
 ここからは、この2つの方式の違いについて図で示しながら説明していきます。
 なお、以下では、次の条件で発行されたMSCBを想定して話を進めていきます。

 ・当初転換価額   500円
 ・発行日       2004年8月1日
 ・第1回リセット日 2005年8月1日
 ・第2回リセット日 2006年8月1日
 ・下限転換価額   (a)当初転換価額の80%(=400円)
             (b)前回のリセット日に定められた転換価額の80%
             (第1回リセット日においては、当初転換価額の80%=400円)

(a)常に当初転換価額を基準にする方式

 この方式は、毎月1回リセット日が来るMSCBで多く見かけます。
 株価と転換価額の関係は、図1の通りとなります。

下限転換価額は常に一定
図1 常に当初転換価額を基準にする方式

 株価がどのように動いても、リセット日の株価が当初転換価額、または、前回のリセット日に定められた転換価額よりも低い場合のみ、転換価額の下方修正が行われます。
 また、第1回リセット日に株価が当初転換価額の80%である400円以下であると、転換価額は下限転換価額である400円に下方修正され、その後のリセット日には転換価額の修正は行われないことになります。

(b)前回のリセット日に決定された転換価額を基準にする方式

 この方式は、1年ごとにリセット日が来るMSCBで見かけることがあります。
 株価と転換価額の関係は、第1回リセット日については(a)と同様ですが、2回目以降のリセット日については、第1回リセット日に決定された転換価額によって下限転換価額が変動します。
 すなわち、

 (b-1)第1回リセット日で転換価額の下方修正が行われなかった(株価500円以上だった)場合
 (b-2)第1回リセット日で転換価額の下方修正が行われたが、下限転換価額ではなかった(株価401〜499円だった)場合
 (b-3)第1回リセット日で下限転換価額(400円)への転換価額の下方修正が行われた(株価400円以下だった)場合

 の3通りで、第2回リセット日の下限転換価額が異なります。

 (b-1)の場合、第1回リセット日に決定される転換価額は500円で変わりませんので、第2回リセット日における下限転換価額も500円×80%=400円で変化はありません。
 これを図示すると、図2のようになります。

下限転換価額も修正無し
図2 第1回リセット日に転換価額の下方修正がなかった場合(b-1)

 (b-2)の場合、転換価額はリセット日の株価に下方修正されます。そして、第2回リセット日における下限転換価額はこの下方修正された転換価額の80%に定められます。
 例として、第1回リセット日の株価が450円だった場合、転換価額は450円に下方修正され、第2回リセット日における下限転換価額も、450円×80%=360円へと下方修正されます。これは、当初転換価額の72%です。
 これを図示すると、図3の通りとなります。

第2回リセット日の下限転換価額も下方修正
図3 第1回リセット日に転換価額の下方修正があった場合(b-2)

 (b-3)の場合、転換価額は下限転換価額である400円に下方修正されます。そして、第2回リセット日における下限転換価額も、400円×80%=320円へと下方修正されます。これは、当初転換価額の64%であります。
 これを図示すると、図4の通りとなります。

第2回リセット日の下限転換価額は当初転換価額の64%
図4 第1回リセット日に下限転換価額への転換価額の下方修正があった場合(b-3)

 以上のように、(b)前回のリセット日に決定された転換価額を基準にする方式では、リセット日に転換価額の下方修正が行われると、次のリセット日における下限転換価額も下方修正されるという事態が発生します。
 従って、リセット日が設定されているMSCBについて分析を行う際は、(a)(b)どちらの方式に該当するのか、また、(b)だった場合、最後のリセット日に、転換価額が何円まで下方修正され得るのかを知った上で分析を行う必要があると思います。

〜先送りの時限爆弾 リセット日の意義に関する一考察〜


 リセット日を設定する一番の理由は、発行企業側が、引き受け手に、ある程度の期間、MSCBの保有を継続することを期待しているからではないかと思います。株価が下落する局面でも、リセット日にならなければ、転換価額の下方修正が行われないため、それまでは保有を継続する可能性が高いと言えます。また、MSCBの保有を続けている間は、MSCBを転換して、株式を浮動株として市場に放出することがありませんので、需給の観点からも発行企業にとって望ましいことであるといえます。
 また、突発的な株価下落で転換価額が下方修正されることがないので、希薄化リスクは、リセット日無しのMSCBよりも、やや小さくなると言えるでしょう。
 さらに、既存株主から見た利点としては、MSCBの発行決定直後から、売り崩されるリスクが小さいと言うことがあります。たとえ、発行直後に株価下落がおきたとしても、リセット日までに当初転換価額に戻れば転換価額の修正は行われないからです。もっとも、リセット日が近くなったときに、転換価額及び次のリセット日における下限転換価額を引き下げるために、空売りで株価を下落させるのではないか、と言う懸念がありますが。

 リセット日の設定は、MSCBの引き受け手がある程度の期間、資金の拘束を受けることを受け入れていることを示している証拠であると言えると思います。そういう意味では、MSCBの発行直後に短期間に急激な株式の希薄化は起こりにくいと言えますが、リセット日前後に波乱が起きる可能性を考慮すれば、MSCBの発行直後であっても、株価の先行きに不安を抱くのは当然のことであると思います。


MSCBに関する一考察 (3)下限転換価額付きのMSCB
MSCBに関する一考察 (5)転換価額の上方・下方修正条項付きMSCB

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