MSCBに関する一考察
フジテレビジョン(1) MSCBの概要と株価への影響




 最近、ライブドア(4753)がニッポン放送(4660)買収資金の調達を目的として総額800億円のMSCB発行を発表し話題となっておりますが、一方で、TOBによるニッポン放送株取得を目指していたフジテレビジョン(4676、以下フジテレビ)も、TOBの資金として同額の800億円に上るMSCBの発行を発表しております。
 今回は、フジテレビが発行するMSCBの概要や、株価動向に与える影響について考察していこうと思います。

〜上方・下方修正条項付MSCB 上限転換価額、下限転換価額あり 概要〜

 今回、フジテレビが発行するMSCBの転換価額修正条項は、要約すると以下の通りであります。

(1)当初転換価額は237,300円とする。
(2)毎月第3金曜日に直近5営業日の終値平均の90%に転換価額を修正する。
(3)上限転換価額は474,600円、下限転換価額は118,650円とする。

(1)の当初転換価額は3月18日までの転換価額です。
(2)については、毎月第3金曜日のある週の月・火・水・木・金曜日の終値平均に90%をかけた値に転換価額が修正されることを示しております(祝日が入る場合は前週の金曜、木曜・・・とさかのぼる)。
 これを、第1回決定日の3月18日を例にとり、計算式にすると、@式で示されます。

転換価額算出式

 なお、@式で求めた修正後転換価額が(3)の上限転換価額を上回ったり、下限転換価額を下回ったりした場合は、上限・下限転換価額に修正されることとなります。
 これらを図示すると、図1のようになります。

MSCBの概要
図1 MSCBの概要

 当初転換価額は237,300円であり、その50%である118,650円が下限転換価額、200%である474,600円が上限転換価額となっており、終値平均が131,800円以下、527,400円以上で上限・下限転換価額にそれぞれ修正されることになります。
 転換価額は、終値5日平均から約10%ディスカウントされる値に修正される事になりますが、このディスカウント分はMSCB引受先の大和証券SMBCの利ざやとなります。
 すなわち、大和は、

「空売り」
「MSCBの転換(→貸し株を返却)」

を同時に同株数行うことにより、ほぼノーリスクでこのディスカウント分を利益として得ることが可能です。これを図示すると図2のようになります。また、転換価額修正後に株価が上昇した場合は、10%以上のリターンを得ることも可能です。

大和は最低10%利ざやを取る
図2 空売りとMSCB転換によるさや取り

 なお、本MSCBの条件は、上方・下方修正条項付MSCBとしては概ね標準的なものであると考えております(このような条件での発行例が多いという意味です)。
 発行額800億円はかなり大きい部類に入ると思いますが、いすゞ自動車(7202)が本MSCBとほぼ同条件(上限が当初転換価額の200%、下限が50%、毎月修正)のMSCBを2004年1月に300億円、それが転換完了した後の2004年8月に1000億円分発行した例があり、前例がないわけではありません。

〜大引け直前の爆弾 終値操作の可能性〜

 本MSCBで警戒すべき点として、転換価額の修正がVWAPではなく、終値を元に行われる点があります。すなわち、その日の取引全体とは関係なく、終値が著しく高かったり安かったりした場合においても、転換価額は終値を元に修正されるため、転換価額を下げるために、大引け直前に集中的に売買を行い、終値を押し下げる可能性があります。
 図3を例に取り説明いたします。

大引けを意図的に狙った売り
図3 終値操作の概略

 当日の取引が小動きで推移していた後、大引け間際に大量の売りが出て株価が押し下げられたとします。VWAPを元に転換価額を修正する場合、その日の売買代金を売買株数で割るため、その日の取引の実勢から大きくかけ離れたものにはなりません。
 一方で、終値を元にする場合、その日の実勢から大きく離れていたとしても、終値が全てであります。したがって、転換株式数をより多く得たいMSCBの引き受け手が大引け直前にまとまった売りを出し、終値が押し下げられる可能性があります。その結果、転換価額がより低く修正されることになり、転換株式数の増大、ひいては株式の希薄化が激しくなる可能性があります。


 次回は、このMSCB発行により、フジテレビの株式に発生する希薄化の程度や、ニッポン放送のみならずフジテレビの支配をも狙うライブドアの戦略に与える影響について考察しようと思います。


親記事:MSCBに関する一考察 (5)転換価額の上方・下方修正条項付きMSCB
MSCBに関する一考察 フジテレビジョン(2) MSCBの転換とニッポン放送持分の希薄化

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注意事項:本文章はフジテレビジョンのプレスリリースを元に管理人(こみけ)が考察を行ったものであり、注意は払っておりますが、必ずしも正確ではないかもしれません。
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