MSCBに関する一考察
ライブドア(2) リーマンの戦術と株価への影響



 前回はライブドア(4753)が発行するMSCBの概要について説明いたしましたが、今回は、このMSCBがライブドアの株価にどのような影響を与えうるかを考察しようと思います。

 今回、ライブドアが発行しリーマン・ブラザーズが引き受けるMSCBの総額は800億円であり、これを当初転換価額450円で転換されたと仮定すると、転換で得られる株式数は約1億7780万株でありますが、株価の推移によっては転換価額が下方修正され、転換株式数が増大する可能性があります。
 また、今回、極めて重要な要素として考えねばならないのは、堀江社長がMSCB引受先であるリーマン・ブラザーズに自らの保有株の一部を貸し株として貸借する合意を行っていることであります。堀江社長の保有株式数は04年9月の段階で約2億2100万株であり(会社四季報より)、たとえ一部であっても、市場で売りに出されれば大きな影響を与えるものと考えられます(貸し株の規模・時期が不明であるため、以下の記事では具体的な貸し株数はあげず、また、時期については既に貸し株が利用可能であると仮定し説明しております)。
 これらの点を留意し、リーマン・ブラザーズがどのように利益を出すのか、その手法と株価への影響について考察を行おうと思います。

〜約束された10% 裁定取引〜

 前回説明いたしましたように、今回のMSCBの転換価額修正条項では、修正後転換価額は決定日の直前3日間(水、木、金曜日)のVWAP平均値の90%に定められます。このVWAPと修正後転換価額の関係を図で示すと図1の通りとなります。すなわち、株価が当初転換価額の450円程度で横這いの場合、転換価額は10%、すなわち45円程度ディスカウントされた405円程度に修正されることになります。

転換価額は10%ディスカウント
図1 VWAPと修正後転換価額の関係

 この、株価と転換価額の差を利用して、リーマン・ブラザーズはほぼノーリスクで10%強の利益を出す事が可能です。
 この方法については図2に示すとおりであります。転換価額が修正されると、株価と(修正後)転換価額の差はおよそ10%になります。
 ここで、

「堀江社長から借りた株の売り」
「MSCBの転換(後に堀江社長へ株を返却)」

を同時に同株数だけ行うと、この10%を確実に利益として得ることができます。
 仮に株数が多くなることで株価が下落しても、それに見合うように転換価額の下方修正が行われるため、10%は確実に得ることができます。また、株価が転換価額と10%以上乖離した日時のみを選んでこの取引を行えば、10%を超える利ざやを得ることが可能なはずです。つまり、リーマン・ブラザーズは現時点で既に80億円以上の利益を得ることがほぼ確実であります。

裁定取引
図2 貸し株とMSCBを用いた裁定取引

〜上昇局面の蓋 駆け込み売り&転換〜

 次に、80億円を大きく上回る利益を得ることは可能であるか?と言う点について考えると、まず想定されるのが、上昇相場で株価と転換価額が10%以上乖離した場合に裁定取引を行う局面が想定できます。しかしながら、その裁定取引により、株価は上値を押さえられることになります。
 図3は、MSCB発行前に株価の上昇局面が到来し、次の決定日に転換価額の上方修正が行われると予想される場合のリーマン・ブラザーズの動向を考察したものです。
 株価が堅調に推移し、決定日の直前3日間のVWAP平均が500円以上の場合、転換価額は上方修正され、株価と転換価額の乖離は10%に低下することになります。従って、乖離が大きいうちに「貸し株の売り」と「MSCBの転換」を急ぎ行い利益を出すはずであります。つまり、株価の上昇局面においては、横這い局面よりもより激しく売りがでることになります。また、今回のMSCBは決定日が1週間ごとと間隔が短いため、株価が少し上昇しただけでも売り圧力にさらされることになると思われます。

上方修正前の駆け込み転換
図3 株価上昇時の取引動向

〜株価大暴落の恐怖 貸し株&転換株売り〜

 さて、個人ホルダーにとってもっとも恐ろしい展開と思われるのが次のケースです。
 図4のように、リーマン・ブラザーズが堀江社長から借りた株をひたすら市場で売り続けた場合、市場はそれを消化しきれず株価は下落を開始します。それに伴い、転換価額が下方修正され、転換株式数も増加の一途をたどります。そして、借りた株を全て売り切り、株価と転換価額が下げきった段階でMSCBを転換し、借りた株を返済します。
 その後、余った転換株式も売却され、需給を悪化させることになります。

貸し株怒濤の売り
図4 貸し株を用い株価を下げにかかった場合に予想される展開

 さらに、それ以上の株価下落が発生する可能性として、図5のように、堀江社長から借りた株を売り切った段階でMSCBの一部のみを転換し、その転換株を市場で売ることでさらに株価を下げることも考えられます。 転換株の一部は売却損が出ると思われますが、全体で見れば、転換価額が下がった方が収益が大きくなるはずであります。
 途中で弾(貸し株・MSCB)が切れることなく売りが続けば、最終的には株価は下限転換価額に修正される174円に到達しその時点で残り全てのMSCBの転換が行われることでしょう。
 その場合、ライブドアの株式は大きく希薄化され、堀江社長の株式保有比率も大きく後退することでしょう。

MSCB転換株で追撃戦
図5 貸し株及びMSCB転換株を用いて株価を下げにかかる場合


 最後に、今回のMSCBについて検討する上で考慮すべきであると思われる特殊事情を2点述べさせていただきます。

1.ライブドアの株価は、希薄化云々と言ったファンダメンタルズよりも、ニッポン放送(4660)やフジテレビジョン(4676)へ影響力を行使できる立場を得られるかどうかといった短期的要素に左右されそう

2.放出される株(特に余った転換株)をどこかが買い集める可能性がゼロとは言えない

 ・・・と言う点があると思います。
 仮に1.に成功すれば、投資以上のリターンを得られる可能性が高まりますからねぇ。この場合、株価はMSCBによる希薄化など意に介さず一気に上昇する可能性があります。
 2.は・・・あくまで可能性の提唱と言うことで。


親記事:MSCBに関する一考察 (5)転換価額の上方・下方修正条項付きMSCB
MSCBに関する一考察 ライブドア(1) MSCBの概要
MSCBに関する一考察 ライブドア(3) MSCB転換後の動向に関する一考察

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注意事項:本文章はライブドアのプレスリリースを元に管理人(こみけ)が考察を行ったものであり、注意は払っておりますが、必ずしも正確ではないかもしれません。
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