MSCBに関する一考察
ACCESS MSCBの概要と警戒すべき売り崩し手法




 最近、マザーズ市場を代表する銘柄であるACCESS(4813)が500億円のMSCB発行を発表したことは、発表翌日に株価がストップ安をつけたこともあり話題となっております。
 今回は、本MSCBの概要及び本MSCBの引き受け手である野村証券が行う可能性がある売り崩しの手法について考察してみようと思います。


〜上方・下方修正条項付MSCB 毎月修正 終値を元に転換価額算出 概要〜

 今回、ACCESSが発行するMSCBの転換価額修正条項は、要約すると以下の通りであります。

(1)当初転換価額は2,350,000円とする。
(2)毎月第3金曜日(ただし、初回は2005年6月24日)を決定日と定め、決定日までの3取引日(時価算定期間)の終値平均の90%に転換価額を修正する。
(3)上限転換価額は3,530,000円、下限転換価額は1,180,000円とする。

(1)の当初転換価額は2005年6月14日から2005年6月26日までにMSCBの転換を行った場合に適用される転換価額です。
(2)については、毎月第3金曜日のある週(ただし、2005年6月のみは第4金曜日)の水・木・金曜日の3日間の終値平均に90%をかけた値に転換価額が修正されることを示しております(祝日が入る場合は火曜、月曜・・・とさかのぼる)。
 これを用いて、第1回決定日(6月24日)の転換価額算出方法を式で表すと、以下の@式で示されます。

転換価額算出式

 なお、@式で求めた決定日価額が(3)の上限転換価額を上回ったり、下限転換価額を下回ったりした場合は、上限・下限転換価額にそれぞれ修正されることとなります。
 これらを図示すると、図1のようになります。

3日間の終値平均により修正
図1 終値平均と転換価額の関係

 当初転換価額は2,350,000円であり、その約150%である3,530,000円が上限転換価額、約50%である1,180,000円が下限転換価額となっております。転換価額は、終値平均から約10%ディスカウントされる値に修正されますので、終値平均が3,933,333円以上、1,310,000円以下で上限・下限転換価額にそれぞれ修正されることになります。

 MSCBの引き受け手である野村証券は、大株主などからACCESS株を借り受け、

「貸し株の売り」
「MSCBの転換」

を同時に同株数だけ行い、後にMSCBの転換により得られた株式を返却することで、株価と転換価額の差額である約10%の利ざやを得ることができます。ただし、株を借りる際に大株主へ貸し株料を支払うはずですので、この分を考慮すると10%弱と言うことになりそうです。


〜野村の戦術と株価推移への影響 考察〜

 さて、本MSCBの転換価額修正条項で特に注目しているのが、

・転換価額算出にVWAPではなく終値を用いる
・転換価額算出期間(時価算定期間)が3日間と短い

の2点であります。以下では、これらの条件を利用してより大きい利ざやを稼ぐ手法について考察してみます。

 まず、転換価額の算出に終値を用いることを利用して、図2に示すような戦術を用いて転換価額を引き下げることが可能であります。

大引け間際の集中売り
図2 転換価額の下方修正を目的とした引け際売り崩し

 すなわち、転換価額算出期間において、大引け直前に大量の売りを出すことで終値を押し下げます。当然、終値は当日の値動きやVWAPと大きく乖離しますが、転換価額の算出に有効なのは終値ですので、結果として株価と修正後の転換価額との乖離は10%を越える可能性が高くなります。

 また、転換価額算出期間がわずか3日間という事は、その3日間だけ集中的に売りを行い株価を崩せば、転換価額を大きく下方修正させることが出来ると言うことであります。この場合の株価変動と転換価額の関係について図3に示します。

集中売りと言っても大引け間際で十分
図3 転換価額算出期間を狙った売り崩し

 すなわち、先ほど説明した貸し株の売りを行い終値を下落させる戦術を、転換価額算出期間の3日間連続して行うことで、転換価額を大きく下方修正させることが出来ます。あらかじめ貸し株を売却し、その後に転換価額を下方修正させ、MSCBの転換と貸し株の返却を行うことで、10%をはるかに上回る利ざやを稼ぐことが出来るのであります。

 その一方で、上記のような手法を取らない場合を想定いたしますと、時価総額の2割以上にのぼる売りを一気に消化することが出来ず、長期間に渡って少しずつ売却せざるをえなくなり、株価がひたすらじり下げ歩調となる可能性が考えられます。
 この場合も、少しずつ貸し株を売却し、株価が下落し転換価額が下方修正されたところでまとめてMSCBを転換して、貸し株を返却すれば10%を上回る利ざやを得ることができるのであります。


〜MSCBを発行した新興企業に投資するに当たって 主張〜

 そもそも、企業がMSCBによる資金調達を行う最大の理由として考えられるのは、公募や通常のCBでは引き受け手側がリスクが高すぎると判断すること、すなわち企業の信用不足であります。
 そして、信用不足がどのような状況で発生しうるかですが、

1.今後の企業業績への不安
2.企業の規模と比べて調達希望金額が過大である事への不安

が主であると考えております。

 また、これに加え、新興企業の増資による資金調達に関しては、

3.新興市場(個別株価に非ず)の先行きへの不安

が重大な不安材料になりうると考えております。新興企業については、どうしても成長性が重視され割高となることが多いため、ひとたび市況が冷え込むと、たとえ業績が好調でも市況に引きずられる傾向がありますので、大型株に比べ株価下落リスクは大きくなると主張する次第であります。
 ついでに言わせていただきますと、これらの問題点はMSCBの引き受け手だけでなく、発行しようとする企業自身も承知の上で、なお資金調達をしようとしている可能性が極めて高いことを留意するべきであると思います。
 新興企業がMSCBを発行する際は、上記3項目のうち少なくとも1つの不安材料がある事がほとんどであると考えております。MSCB銘柄への投資を行う際は、なぜ「MSCBで」「発行額(今回は500億)もの」資金調達をしなければならなかったのかをそれぞれ個別に検討の上、投資判断をするべきであると主張させていただきます。


(05/5/29 記事作成)


親記事:MSCBに関する一考察 (5)転換価額の上方・下方修正条項付きMSCB

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注意事項:本文章はACCESSのプレスリリース等を元に管理人(こみけ)が考察を行ったものであり、注意は払っておりますが、必ずしも正確ではないかもしれません。
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