MSCBに関する一考察
(7)当初転換価額が後から決定されるMSCB



〜全ては市場の成り行き次第 当初/下限転換価額決定の仕組み〜

 MSCBは、基本的にはMSCB発行の発表と同時に、当初転換価額が、前日株価などを元に決定され、その当初転換価額の何パーセントという形で下限転換価額が決定されるものですが、最近、当初転換価額が発行発表時に決定されず、発表から1ヶ月間程度の株価推移を元に当初転換価額を決定するMSCBが現れています。また、優先株の普通株転換価額の決定にこの方式を採用する例も散見されます。
 今回は、MSCBの当初転換価額の決定が後で行われることが、株価・MSCBの引き受け手・既存株主などにどのような影響を与えるのか考察したいと思います。

 今回は、以下のMSCBを想定し、転換価額がどのようになるか説明していきます。

 ・発行発表日       2004年11月1日
 ・発行発表日株価    500円
 ・下限転換価額     当初転換価額の50%
 ・転換価額の修正は下方修正のみ
 ・当初転換価額決定日 2004年12月1日
                →12月1日の終値を当初転換価額とする

 このMSCBの株価と転換価額の関係は、図1のようになります。

当初転換価額決定は12月1日
図1 当初転換価額が後から決定されるMSCB

 まず注目していただきたいのが、発行発表日の株価は転換価額とは何の関係もない点です。
 当初転換価額決定日の終値(図1の場合400円)がそのまま当初転換価額となり、それを元に下限転換価額(400×50%=200円)も決定されます。すなわち、MSCBの発行発表後、当初転換価額決定日までの株価推移によっては、発行発表時の想定よりも、はるかに下限転換価額が低下し、希薄リスクが拡大することがあります。

 一方で、当初転換価額、または転換価額そのものに下限を設けている例もあります。
 図2に、当初転換価額の下限を300円に設定した例、図3に、転換価額下限値を200円に設定した例をそれぞれ示します。

発表時株価から見れば下限転換価額は30%
図2 当初転換価額の下限を300円に設定した例

 当初転換価額の下限を定めた場合は、株価がいくら下がっても、当初転換価額は下限(図2の場合は300円)を下回ることはなく、従って、下限転換価額も当初転換価額の下限の50%(図2の場合は150円)に定められます。

発表時株価から見れば下限転換価額は40%
図3 転換価額の下限値を200円に設定した例

 また、転換価額下限値(図3の場合200円)を定めた場合は、当初転換価額の50%(図3の場合150円)が、転換価額下限値を下回っていたとしても、下限転換価額は転換価額下限値に定められます。また、当初転換価額が転換価額下限値を下回ったとしても、当初転換価額、下限転換価額共に転換価額下限値に定められます。


〜転換価額引き下げはタイムトライアル 考察〜

 この方式のMSCBは、まだ私はあまり多くの事例を見ていないため、どのような企業が発行するといった傾向は、はっきりと述べられません。ただし、MSCBや優先株の発行金額が、発行企業の時価総額と比較して大きいことが多いようです。そのため、どうしても希薄化リスクがつきまとい、株価は下がりがちです。
 しかしながら、この方式のMSCBについてもっとも恐れるべきは、当初転換価額が決定するまでの間に猛烈な売り崩しが行われる可能性です。この期間は、(2)で解説したような下限転換価額無しのMSCB以上に危険かも知れません。転換価額の引き下げが、この間に限っては下限転換価額を事実上無視する形で行えるのです。
 空売りを行い、転換価額を下げれば、MSCBを転換して得る株式数は膨れ上がります。それを、数ヶ月ではなく、当初転換価額が決定するまでのわずかな間に行わねばならないのです。
 当然、短期的な売り圧力が高まる可能性は高いですし、当初転換価額が一定期間の株価の平均値で定められる場合は、その間上値が抑えられ続ける可能性もあります。
 それらを考慮の上で、投資行動の決定を行うべきであると思います。


MSCBに関する一考察 (6)まとめと提案

(株式コラム 目次へ戻る)


参考資料
 J_Coffeeの株式投資日記 さん J_Coffeeの徒然草(30巻) みずほFG1兆円増資の影響(前後編)
 週刊エコノミスト 2004年10月12日号

注意事項:この文章は管理人(こみけ)が主にインターネットや会社四季報等から得た知識をもとに作成したものであり、注意は払っておりますが、必ずしも正確ではないかもしれません。
株式掲示板メール等での問い合わせには出来るだけお答えするよう努力いたしますが、正確な情報をご所望の場合は証券会社等、専門知識を有する場所へご質問願います。
株式等の取引を行う際は、自己責任で行って下さいますようお願い申し上げます。