MSCBに関する一考察
YOZAN(1) MSCBの概要(上限・下限転換価額の算出方法を中心に)




 先日、YOZAN(6830)が60億円ずつ2本(第2回・第3回)、総額120億円のMSCBを発行を発表し、引受先がYOZANの提携相手でもあるライブドアグループと言うこともあり話題となっております。
 今回は、このYOZANが発行するMSCBがどのようなものであるか、一般的なMSCBとは少し違っている、上限・下限転換価額の算出方法を中心に考察していきたいと思います。

〜発表直後の投げ売り対応仕様 概要〜

 今回、YOZANが発行するMSCBの転換価額修正条項は、要約すると以下の通りであります。

(1)当初転換価額は、26,880円とする。
(2)毎月第1金曜日に直近5営業日の売買高加重平均価格(VWAP)の平均値の90%に転換価額を修正する。
(3)第2回については05年8月18日から8月24日、第3回については06年2月16日から2月22日のそれぞれ5営業日のVWAPの平均値を「基準VWAP」とし、基準VWAPの150%を上限転換価額、50%を下限転換価額とする。

(1)の当初転換価額は第2回MSCBについては05年8月25日から9月4日まで、第3回MSCBについては06年2月23日から3月6日までに転換を行った場合に適用される転換価額です。
(2)については、毎月第1金曜日のある週の月・火・水・木・金曜日の5日間のVWAP平均に90%をかけた値に転換価額が修正されることを示しております(祝日が入る場合は前週の金曜、木曜・・・とさかのぼる)。

(3)は、上限・下限転換価額が当初転換価額を元にして決定されるのではなく、ある一定期間(第2回:8月18〜24日、第3回:06年2月16〜22日)の株価動向を元に決定されるということであります。
 上限・下限転換価額の元となるこれらの期間のVWAP平均を、「基準VWAP」とYOZANのプレスリリースでは呼んでおります。
 この基準VWAPは、第2回については以下の@式で求められ、それを元に上限・下限転換価額が定められます。

基準VWAP算出式(第2回)


 基準VWAPと上限・下限転換価額の関係を図で示すと図1のとおりとなります。本図では、VWAP基準値が20,000円となった場合を例(あくまで例)として示しております。

基準VWAPは当初転換価額よりもだいぶ下
図1 基準VWAPと上限・下限転換価額の関係(第2回)

 この場合、上限転換価額は20,000×150%=30,000円、下限転換価額は20,000×50%=10,000円と決定されます。
 そして、転換価額は、この上限転換価額と下限転換価額の範囲内に定められます。
 たとえば、第一回決定日(9月2日)の修正後転換価額は、以下のA式で定められます。

転換価額算出式

 すなわち、決定日の直近5日間のVWAPの平均値から10%ディスカウントした値が新たな転換価額(修正後転換価額)となるのであり、その際、修正後転換価額が下限転換価額(10,000円)を下回る値になった場合は転換価額は10,000円、上限転換価額(30,000円)を上回った場合は30,000円へと転換価額が修正されます。
 これを図示すると、図2の通りとなります。

10%ディスカウントはほかのMSCBと一緒
図2 VWAPと転換価額の関係(第2回)

 ここでご注目いただきたいのが、VWAP基準値は、当初転換価額とは何の関係もなく、あくまで算出期間の株価動向によって決定されるという点であります。
 最近、MSCBの発行発表直後に、希薄化懸念による投げ売りが大量に発生し、株価が下落するという現象がよく見られます。当初転換価額を元に上限・下限転換価額が決定されるMSCBの場合は、発表時点で下限転換価額も決定されているため、この時点における下げ幅があまりに大きい場合は、MSCBの転換を行おうとする際に株価が下限転換価額を下回る事態が起きる可能性があります。
 一方、今回のように、発行を発表した後のある時点(今回は8月下旬及び来年2月)における株価を元に上限・下限転換価額を決定する場合、投げ売りが行われ、下落した後の株価を元に上限・下限転換価額が決定されるため、株価が下限転換価額に達するまでにかなりの余裕が生じることになります。上の図2の場合、当初転換価額の50%を下限転換価額にする場合は26,880×50%=13,440円ですが、VWAP基準値(20,000円と仮定)の50%を下限転換価額にする場合は10,000円ですから、3,440円もの余裕がでるわけであります。

 また、第3回MSCBについて、基準VWAPの算出式を式B、基準VWAPと下限・上限転換価額の関係を図3に示します。なお、図3では、VWAP基準値が15,000円になった場合を例として、あくまでも例として説明させていただいております。
 この場合、上限転換価額は15,000円×150%=22,500円と、なんと上限転換価額が当初転換価額を下回ってしまうという珍事態が発生するのであります。こうなると、たとえ上方・下方修正条項付MSCBといえども、転換価額が当初転換価額を上回ることは絶対にないのであります。
 たとえ、今後数ヶ月間でYOZANの株価が大幅下落したとしても、第2回はさておき第3回MSCBには何の悪影響も及ぼさないということになるのであります。

VWAP基準値算出は来年2月・・・

・・・そのころにはWiMAX?の成否もはっきりしているのでしょうか
図3 基準VWAPと上限・下限転換価額の関係

 ・・・さて、ここまでご覧いただいて、「では、転換価額は最低いくらになりうるのだろうか?」という疑問をお持ちになられた方もいらっしゃるかもしれません。
 これは単純な話で、「1円」であります。基準VWAPの上限・下限値は定められていませんので、基準VWAPは株価動向によって1円にも10万円にもなりうるのであります。そして、基準VWAPが2円以下となった場合は、下限転換価額はその50%、1円となりますので、転換価額は1円に修正される可能性もゼロとは言い切れないのであります。まずあり得ない話ではありますが。

 さて、次回は、引き受け手であるライブドアグループがこのMSCBを活用し、どのような手法で利益を上げるか、MSCBの行使請求期間をわざわざ2回に分けた点を中心に考察させていただきたいと思います。


(05/8/14 記事作成)


親記事:MSCBに関する一考察 (8)上限・下限転換価額が当初転換価額と無関係に決定されるMSCB(準備中)

MSCBに関する一考察 YOZAN(2) ライブドアグループの戦術とMSCB分割発行の理由

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