MSCBに関する一考察
YOZAN(2) ライブドアグループの戦術とMSCB分割発行の理由



 前回は、YOZAN(6830)が発行した第2回・第3回MSCBについて、転換価額修正条項を中心に考察いたしました。
 今回は、このMSCBを利用しライブドアがどのような手法で利益を上げる可能性が高いか、また、YOZANのIRでほのめかされている、意外とも言える危惧が現実のものとなる可能性について考察していこうと思います。

〜一般的な出口 市場売却〜


 MSCBは、貸し株の空売りとMSCBの転換を同時に行い、転換で得た株式を株を借りた相手に返済することで、空売りをした際の売却値と転換価額の差額を利益として得ることが一般的に行われています。この様子を図示すると図1のようになります。

ディスカウント分の10%+αを狙う作戦
図1 貸し株の空売りとMSCB転換及び現渡しによるさや取り

 すなわち、「大株主から借りた貸し株の空売り」と「MSCBの転換」を同時に行い、後にMSCB転換で得た株式を大株主に返却することで、空売り時の売値とMSCBの転換価額との差額を利ざやとして得ることができます。また、MSCBの転換と株式の市場放出による需給悪化で株価が下落したとしても、転換価額の下方修正が行われることにより一定の利益を上げることが可能であります。
 また、第3回MSCBについては、当初転換価額の決定が来年2月と間があるため、それまでに大きく株価が上昇している可能性があります。その場合は、転換価額の上方修正が行われる前に当初転換価額にて株式転換及び売却が行われることが考えられます。これを図2に示します。

上方修正前に当初転換価額で転換
図2 株価上昇時における転換価額修正前のMSCB転換

 いずれにしろ、ライブドアが純投資を目的として本MSCBの引き受けを行っていたならば、いずれMSCBは株式に転換され、市場に放出されることでしょう。


〜株価低迷時の奇襲 ライブドアによるYOZAN乗っ取りの可能性〜


 さて、今回のYOZANのMSCBの発行額は、発行時時価総額の50%に迫る120億円であり、希薄化の度合いも相当大きくなります。むろん、YOZANとしてはそれだけのリスクをとっても必要な資金と言うことでありましょう。
 しかしながら、このMSCB発行は、ライブドアによるYOZANの子会社化を招く可能性が存在するのであります。また、YOZAN側においてもこの問題を把握している可能性が高いと考えられます。MSCB発行発表日の8月8日にYOZANのHPに掲載された「転換社債発行に関して予想される株主様からのご質問と当社の回答」と言うリリースには、「ライブドアに敵対的TOBされたときどのような対策を講じるのか(質問16)」「ライブドアに吸収されるのか(質問17)」と言った、別に株主の皆様が心配していないような気がする事項についてまでなぜか述べられております。

 今回、この点に注目し、ライブドアが第2回・第3回MSCBの転換によりYOZANを子会社化できるだけの株式数を得られる可能性はどの程度あるのか、と言う点について調べて見たところ、以下のような結果となりました。
 まず、図3に第2回・第3回のMSCB平均転換価額と、MSCB転換で得られる株式数の発行済株式総数に占める割合との関係を示します。横軸は第3回MSCBの平均転換価額、縦軸はMSCBの転換後の発行済株式総数に占めるMSCB転換株の割合、また図中のそれぞれの線は第2回MSCBの平均転換価額を示しております。なお、現在の株価水準25,000円程度(2005/10/10現在)であると、転換価額は22,500円程度となります。
 現在の株価水準が続いた場合においても、33.4%超えの可能性は十分にあり得ることがご確認いただけるかと思います。

33%は可能性有り、50%は厳しい
図3 第2回・第3回MSCBの平均転換価額と転換で得られる株式数の発行済株式総数に占める比率の関係

 8月26日のプレスリリースによると、YOZANの発行済株式総数は約105万2000株とのことであります。従って、特別決議に対する拒否権などを持てるようになる発行済株式総数の33.4%を確保するためには、第2回・第3回MSCBの転換で合計約52万6000株を得れば達成できると言うことになります。
 また、MSCBの転換により105万2000株以上(要するに現在の発行済株式総数以上)を得れば、ライブドアはYOZANの発行済株式の過半数を押さえ、子会社化できることになります。
 これら、発行済株式数の33.4%および50%を確保が可能となる第2回及び第3回MSCBの平均転換価額について図示すると図4のようになります。横軸に第2回、縦軸に第3回MSCBの平均転換価額を取っております。

来年2月に株価が1万円前後になっていると思いますか?
図4 MSCB転換で発行済株式総数の33.4%および50%を確保が可能となる平均転換価額の関係

 この図からわかりますように、第2回、第3回MSCB共に平均転換価額22,817円(120億÷52万6000)以下でMSCBの転換を行えれば33.4%に届くことがわかり、現在の株価水準と併せて考えますと十分発生しうる事態であると言えます。
 一方で、50%確保のためには、たとえ第2回MSCBをすべて下限転換価額で転換したとしても、第3回のMSCBを平均10,000円程度で転換する必要があり、こちらは現在の株価水準から大きく下げることが条件となります。


 さて、自分が本MSCBに関してもっとも面白いと感じたのは、第3回MSCBの上限・下限転換価額の決定が発行から半年後の06年2月に行われると言う点であります。
 この理由として、まず第一に考えられるのは、一度に120億円のMSCBを株式に転換してさばくのは困難であり、また、実際にやろうとすると、それを先回りして株価が下落してしまうと言う点が挙げられます。そのため、総額120億円のうち、半分の60億円分の転換は半年後からであると明らかにし、株価下落を押さえようとした意図があることが想定できます。
 一方で、この半年という期間、現在YOZANが本MSCBで資金を調達して進めているWiMAX事業の成否が明らかになるには十分な期間でありましょう。うまくいけばそれで良し、しかしながら失敗・遅延などをした場合は経営は危機的状況を迎えるのは明らかであり、株価も下落することが予想されます。
 株価が極端に下落した場合、ライブドアはMSCBを株式に転換することで、YOZANを傘下におさめることができます。そして、YOZANを傘下におさめることは、すなわちライブドアが常々欲しがっている通信事業をその手に納めることであると言えるのであります。
 現在、YOZANはこのWiMAX事業をライブドアと共に進めつつあるのですが、この協業が遅れれば遅れるほど、YOZANの運命はライブドアのなすがままとなっていくと言う考察も成り立つのではないかと考えております。
 そういう観点から考えますと、YOZANのIRがほのめかす大げさとも考えられる危惧は、あながち無視できるものではないと考えるところであります。

 ・・・なお、最近提出された大量保有報告書によりますと、ライブドア側は本MSCBの転換で得た株式を少しずつ処分(売却)しているようであります。
 とりあえず、現在のところは、純投資目的での運用を行っていると考えられる状況のようであります。

(05/10/10 記事作成)



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