『縄文海進・第二期』

遙か遠くでカンラン石を鳴らしているのは
誰だろう
かんこんかんこん
澄んだ音が原野に流れる

広い原野
なんて広い原野

明るい夏の朝、私は草原を歩いている
私の前を誰かが歩いている
細い腕と揺れる黒髪
真っ白な素足のまま歩いている

少女の体は一瞬、薄ぼんやりと光って
それからふっと脇道に消えてしまう

森の中から現れたナウマン象が一頭
また、一頭と私を追い抜いていく
その後を追いかけるのは顔のないロボット達
しきりに歪み合いながら、きいきい走っていく

この赤土の下には
土偶、曼荼羅、翡翠、阿修羅が埋まっている
それは誰も知らないこと

広い原野
なんて広い原野

原野の果てには海がある
水平線には傾きかけた超高層のビル群
暖流の水蒸気に煙るビル群
揺らいでいる
夢見心地のまま、ひっそりと揺らいでいる

私は水平線を目指して歩き続ける
カンラン石を叩く音は、いまだ鳴り止まない

初出:『しけんきゅう 152号』(2009年6月1日発行)




[TOP]   [詩の世界TOPに戻る]