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あまりの暑さに、猩々の面がびっしりと貼りついた空。敷地内の木々は、ギリム シ弾の照射で奇形になったとはいえ、前よりもいっそうぐんぐん生い茂り、植物た ちが吐き出す水蒸気と二酸化炭素に昆虫の群も身をすくめている。 半分ほど食べ終わったところで、黒猫が私のすわっているベンチに飛びのって きた。私の隣、黒猫は無心そうな顔で自分の顔や腹をなめ回し、毛繕いを始め た。しかし、時おり、私の食べているアイスクリームをちろちろと窺っているのが、 はっきりと見て取れた。(一瞬見せる物欲しそうな目。この猫はアイスクリームが 好きなんだ。) 猫かぶりの下手なデブ猫だ。私はアイスクリームを舐めさせてやるふりをして、 左の指を出した。猫は簡単にだまされて、私の指をちゃぷちゃぷ舐め始めた。 「わほ」 私は、突然やけどでもしたみたいに手をひっこめた。舐められた指の爪が溶け だしたのだ。幸いなことに、爪はぺらぺらの紙のように薄くなっただけで、消えて なくなりはしなかった。猫の唾液がこんなに強い消化力を持つなんて、誰も教え てくれなかった。 私は、自分の爪が紙爪になってしまった仕返しに、黒猫を思い切り蹴ってやっ た。猫は空気の抜けていく風船さながらに飛んでいった。顔を見ると意外にも落 ち着いた様子なので、きっと地球を一周して元の所へ戻って来るつもりなのだろ う。 アイスクリームを食べ終えて、ふとベンチの上を見ると、今まで黒猫がいたとこ ろに一枚の紙切れが落ちていた。手に取ってみると、こんなことが書かれてい た。
あの黒猫は、狂っていないのであれば、なかなか文才がある。そう思いながら、 私はベンチから立ち上がると、アイスクリームの棒と紙切れをゴミ箱に捨て、公園 の出口に向かって歩き始めた。 あいかわらず、暑かった。 |