『満天の星』
レクイエム3 〜じっこくおさむ氏へ捧ぐ〜


夕暮れ、少女は裏山に登る。
海に向かって吹き抜ける風が、松の枝をざわざわと揺らしている。
松の枝の下に見えるふるさとの町。
残ったビルが墓標のようだ。
すぐ向こうには、海が広がっている。

黒い静かな海。
愛らしい胸で合わせた両手を、胸ごとえぐりとられたまま、
少女は風に吹かれて佇んでいる。
いつまでも、そこに佇んでいる。


夜ともなれば風が止み、丘の上には星空が現れる。
満天の星。
こんなにたくさんの星が見えるなんて、初めてのことかも知れない。
星空の遙か先は海とつながっている。

  (賢治が銀河鉄道に乗って遠くへ去ってしまってから、
       こんなに透明な星空は、ずっと現れなかったよ。)


今、ひときわ輝くアルタイルとヴェガが
まっすぐに
少女の頭の上に降りてくる。

詩誌「舟」146号(2012年2月発行・冬号)に掲載


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