『中 有』 〜S氏に捧ぐ〜

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夜明け前の暗闇の中で
太古の神々の名を叫びながら
独りで震えていた少年の眼には
空中に白く浮かび上がるブランコが見えていたのか。

(君のささやく声が近くから遠くから聞こえる。
 耳鳴りのような声が。)

ペルセウス座流星群が降りしきる中を
追いかけてもつかまえられない風船を持って
三日月の上に腰掛けていた君には
恋する人の涙の温かさが伝わっていたのか。

(君のささやく声が近くから遠くから聞こえる。
 耳鳴りのような声が。)

    「観客のわざとらしくて冷たい嘲笑に
     焼け付くようなピンスポットの熱さに
     僕は、もう耐え切れずに
     舞台をおりてしまったよ・・・」

それは、明け方に聞こえた白鳥の鳴き声だったのか。
いちめんの菜の花畑がどこまでも広がる中を
北の山々をめざして飛んでいった一羽の白鳥

  (君の白い翼は、その時輝いていたか。
  山々に残る雪の乱反射を受けて・・・)

     「ひとりだよ、とても」

今、あの白鳥は、どのへんを飛んでいるのだろう。


「しけんきゅう」137号(2001年12月1日発行)掲載