『やわらかい土』    葉山みやこ


風と約束していたわけじゃない
空にあこがれていたわけでもない
タンポポの綿毛は ふわふわ飛んでゆく

タンポポの種は 茎からぽとりとは落ちない
ともだおれになってしまうから
生贄は 白い衣をまとって舞い上がる


あれっ
どうしてこんなところに君が?
いつから?

病院の屋上のプランター
紫のスミレに混じって
小さな小さなタンポポが
小指の爪くらいの花を咲かせている

根はどこまで伸びているかしら
でも 指では関節ひとつ分しか掘れない
どうしよう……

ふと、「勉強が遅れているよ」と
おばあちゃんの声がする


次の日
そこにタンポポはいなかった




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