そこは夕焼けでした

 

葉 山 みやこ


坂道をのぼりきると
そこは夕焼けでした。

わたしと夕焼けの間には
思い出が 赤く染まって横たわっていました。


たばこ屋の前の郵便ポストは
きっとあしたも赤いままでしょう。

全身胃袋の一本足
舌も見せずに
ガシャリと白いふうとうを飲み込む
時間という酵素で消化されるでしょうか。


夕陽に向かって坂をおりていく
カシャッとシャッターの音がよみがえる
風景に溶けるのは
わたしの影でしょう。



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初出:(『しけんきゅう』138号2002年6月1日発行)