4月下旬、私は関連サイトを辿りながら地図を見つめていた。
「高島とは数キロしか離れていないが、高島町民に頼む事は不可能かぁ・・・・・・・」
「おっ?高島町民でなければ、もしかして?????」
知人で自称漁師と豪語する男(曰く「自分は漁の合間に働いてる。」と、まるでエンツォ・フェラーリの様な男)に訊いてみると、「軍艦島」周辺は良い漁場で、「軍艦島」の堤防でも釣り人は良く見かけるとのことであった。
ならば必ず行く方法はあるはずなのだ!。
私は地域情報から検索した船主を適当にあたってみる事にした。
私「あのぉ〜、5月3日に軍艦島へ行きたいんですけどぉ・・・・」
船主「あぁ〜軍艦島ねぇ・・・近くまでは行くけど・・・何ね?釣りね?」
私「あっ、いや・・・・・そうじゃないんですがぁ・・・・・・・」
船主「フンッ!写真ね?・・・以前は運んだけど今は島に降ろしちゃイカンことになっとうからねぇ・・・」
(おっ、鋭い!もしや!?)
私「あれ?そうなんですか?堤防で釣りしてる人は良く見かけますよねぇ。(まるで見たかの様に)」
船主「あぁー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(こいつは脈ありか!?)
私「もし"あれ"でしたら、私も釣り客の格好で行きましょうか?」
船主「・・・・・・・・・ん〜なら、5時に船ば出すけん、それまでに○×港に来とって。」
「一人3500円。あんまり大勢は目立つけん困るよ。」
やったぁ!!遂に船を確保した!!。
私は名前と礼を言って電話を切ると、右手の拳を突き上げた。
早速、仲間(共犯者)を探した。
しかし既に4月の末、5月の連休予定など普通はとっくに決まっているはず。
何の予定も入って無いのは我が家だけであった。(涙)
結局、不安と孤独を抱えながらの単独作戦となった。
これは即ち"もしもの時も助けを呼ぶ役がいない"という意味でもあった。
前日の夕方には準備を終え、深夜の出発に備えて眠った。
・・・・・・今回の機材選択・・・・・
こうした苛酷なミッションにはやっぱりNikonが似合う。
メインボディはF3でサブをF2フォトミックAとし、レンズは50/1.4、105/2.5、180/2.8を選んだ。
広角域はCONTAX G2にB28/2.8とHolgon16/8を組んだ。
更にメモ用としてSONYのデジカメDSC-P7と卓上三脚を携帯した。
その他
軍手
帽子
ゴーグル
虫除けスプレー
雨合羽
タオル
ファーストエイドキット
食料(カロリーメート、パン類、その他)
ペットボトル(飲料用スポーツドリンク500mlと洗浄用ミネラルウォーター500ml)
島内見取り図
命綱となる携帯電話
そして変装用の釣り竿(1000円ぐらいのおもちゃみたいな)
これらをデイパックに詰め込む。
服装は
ポロシャツとジーンズ
長袖のパーカ
靴は革製のワークブーツ
・・・・・そして当日午前2時・・・・・
例によって「ぼくも行きたいぃ〜!」と愚図る息子に
「オマエが大人になったら行かせてやる」と説き伏せて(それまで「軍艦島」が残っているかどうかは不明だが・・・)、何も知らずに眠っている娘と「絶対に危険な所へは近寄らない」と約束した(島自体が既に危険な所なのだが・・・)カミサンに別れを告げて私は独り出発した。
一気に長崎入りし、若干迷いながら目的の○×港に着いたのは午前4時半。
非常に分かり難い小さな漁港に車を止めて朝食を摂っていると、次々と車が入ってきた。
どうやら釣り客らしく、各々に身支度を始めている。
見ていると、専用の長靴と防水パンツにフロート付きジャケット。
大型クーラーボックスに、伸ばすと4〜5mにもなりそうな釣り竿。
相当に気合が入っている皆の様子は近寄りがたい雰囲気でもあった。
私もそれと無く溶け込もうと思い「おはようございま〜す♪」と声をかけてみた。
一斉に十数人の挨拶が返ってくると同時に、
痛いぐらいに視線が私に刺さるのを感じた。
何しろ、先述の服装にデイパックとカメラバッグを担いで、精々伸ばしても2mも無いおもちゃみたいな釣り竿に"サビキ"という仕掛け(後で訊いたら、この時期この仕掛けで釣れる魚などいないらしいのだ)をぶら下げた姿は、溶け込むどころか完璧に浮きまくっていた。
(恐らく失笑を買っていたに違いない。)
今思えば、この時点で開き直って釣り竿なんか車に置いて行けばよかったのだが、律儀にも私は釣り客のふりを続けていた。
しばらくして、日焼けて屈強そうな男が近寄って来て言った。
「あんた、ザッパーさんだろ?。行くんならここに名前と連絡先書いといて」
男は船主であった。乗船名簿を突き出して話を続けた。
「あんたは島の裏側で一番最後に降ろすから、後ろの方に乗っといて!」
案の定、一目でバレていた。
港の岸壁から軽々と船へ飛び乗る釣り客に続いて、私も重装備と釣り竿を担いで慎重に乗り移った。
出来るだけ目立たぬように(もう既に充分目立ってるって!)船尾で小さくなっていると、すぐに船は出港した。
暗い港を出ると、東の水平線はうっすらと青白くなりかけていた。
船首の先を眺めると、青い暗闇の中にひと際黒いシルエットとなって「軍艦島」が現れた。
私はその姿に釘付けとなった。
近づくに従って胸が高鳴り、呼吸が速くなるのを感じた。
十数分で最初の釣り場の小島に着き、数人が下船。
更に次々と周囲の岩場に釣り客を降ろし、何人かは「軍艦島」の岩場にも降ろしていた。
(な〜んだ、釣り客は結構上陸させてるじゃん。)
その後、船は島の裏側へ回り込み、堤防に目新しいスチール製の梯子が付いた岸壁に到着した。
見ると、私以外にも2人の男が残っており(この時初めて、彼らの姿も釣り客らしからぬ事に気付いた)、船主が私に言った。
「あんたもその2人に続いてここで降りて、その梯子を登りな!。」
急いで下船しようとする私の背中に向かって大声で船主が続けた。
「帰りは2時に迎えに来るから!今度は島の表で最初の客を降ろした岩場に下りて着とって!」
私は慌てて島の見取り図を引っ張り出し、さっきの岩場が丁度ここの対角線上にあることを確認して振り向きざまに叫んだ。
「丁度この反対側ですね!!昼の2時ですよね!?」
よほど焦っていたのか、マヌケな確認をしてしまった私に、船主はニヤリと笑って右手を挙げた。
船主の笑顔に何故かホッとした私も手を振って答えた。
波に揺れる船首から岩場に飛び移ると、先の2人はサッサと梯子を越えて行った。
一人の男が背負っているのが間違いなく大型三脚であることを私は確認し、遅れまいと急いで梯子を登った。
そして堤防上に登りつめた瞬間、私の目に飛び込んできたのは、あの端島小学校の全貌であった。
次回!、予想だにしないハプニングが私を襲う!!。
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