リポ蛋白                                 


  コレステロールエステルは コレステロールに脂肪酸がエステル結合したもので 水
 には溶けません。 中性脂肪も グリセロールに脂肪酸がエステル結合したもので 
 水には溶けません。これらを 血液のなかで運ぶために 水に溶けないコレステロー
 ルエステルと中性脂肪を芯にして その表面をリン脂質と遊離コレステロールからな
 る一層の膜で覆い、その膜に蛋白質がつくことにより 水溶性の安定な構造をとって
 います。これを リポ蛋白とよび左下にその模式図をしめします。リポ蛋白の蛋白質
 部分は アポ蛋白とよばれています。

  矢印のように リポ蛋白の表面に 一定の確率で中性脂肪が顔をのぞかせていま
 す。リポ蛋白が毛細血管 とくに脂肪組織や筋肉のなかを流れる毛細血管を流れる
 うちに毛細血管内皮細胞表面にあるリポ蛋白リパーゼの働きで 中性脂肪が分解さ
 れ喪失していきますので、リポ蛋白の粒子は 小さく比重が重くなっていきます。
  油(中性脂肪)と水を混ぜて 放置すると 水の上に油が浮いてくるでしょう。油は水
 より 比重が軽いからです。軽いものがとれれば 体積の割りに重くなるのです。


蛋白質

極性基 ――― リン脂質
脂肪酸残基  /

遊離コレステロール

コレステロールエステル


中性脂肪(トリグリセライド)

   リポ蛋白の基本構造模式図
厚生省・日本医師会編;高脂血症診療の手引き,P16引用 

  Gofmanという人が 1949年、超遠心分離法を用いて血漿を分離していたところ、
 比重の違いにより、5種類のリポ蛋白が存在することを明らかにしました。比重の軽
 い順番にカイロミクロンchylomicron、 超低比重リポ蛋白 very low density
 lipoprotein (VLDL)、 中間比重リポ蛋白 intermediate density lipoprotein
 (IDL)、低比重リポ蛋白 low density lipoprotein (LDL)、高比重リポ蛋白 high    
 density lipoprotein (HDL) とよばれています。英語の略語ばかりで なんか難しそ
 うですね。

  このうち コレステロールエステルの一番多い 
LDLは 肝臓でつくられたコレステ
 ロールを体内の細胞に運ぶ役目をしていますが これが増えすぎたり酸化変性を受
 けたりすると 動脈硬化の原因になります。また 蛋白質を多く含む 
HDLは 各部
 位の細胞で使いきれなかった余分なコレステロールや動脈壁にたまったコレステロ
 ールを肝臓に回収する働きをしています。 そういうことから LDLコレステロールを
 悪玉コレステロール、HDLコレステロールを善玉コレステロールとよばれているので
 す。

  そこまで 詳しくわかったなら 十分なのですが、さらに知識欲の旺盛な方のために
 リポ蛋白の種類と組成を表にしてしめしてみましょう。

カイロミクロン  VLDL      IDL      LDL      HDL 
HDL2   HDL3 
比重  <0.96 0.96〜
1.006
1.006〜
1.019
1.019〜
1.063
1.063〜  1.125〜
1.125   1.21
電気泳動   原点  preβ  midband    β     α
直径 Å  (1mm=10000000Å) 10000〜800 750〜300 300〜220 220〜190 100〜   85〜
 85     70
     トリグリセライド
脂質  コレステロールエステル
 %   遊離コレステロール
     リン脂質
  85〜90
    5
    2〜1
    6〜3
 55〜60
   12
    7
   18
 24〜40
   33
   13
 12〜20
  10
  37
   8
 22〜15
  5    4
  18   12
  6    3
  29   23
蛋白質 %      (アポ蛋白)      2   8〜10  18〜10  23〜25   42   58
アポ蛋白の組成      AT
                AU
                B
                CT
                CU
                CV
                E
   7.4
   4.2
  22.5
  15.0
  15.0
  36.0
  微量
  微量
  微量
  36.9
   3.3
   6.7
  39.9
  13.0


   78
  微量
  微量
  微量
  微量


  98
  微量
  微量
  微量
    67.0
    22.0
    微量
     1〜3
    1〜3
    3〜5
    微量

  血液を試験管にいれておくと 凝固して血餅と血清に分離してくる。血清をそのまま
 12時間放置しておくと カイロミクロンは上層へ浮上してクリーム層となる。 VLDLは
 上層への移動はないが 血清を白濁させる. IDL,LDL,HDLのように 粒子径が小
 さくなると 血清を白濁させることはありません。

  超遠心分離法は 時間を要し高価な器具を必要とするので 研究には必要ですが
 日常臨床検査にはもちいられません。

  
電気泳動法は 支持体の陰極側にのせた血清試料が 通電により リポ蛋白の
 表面荷電や粒子径により 陽極側へ移動する距離が異なることを利用した分画法で
 す。
 支持体がろ紙の場合 カイロミクロンは原点にとどまり 陽極側から α、pre-β、 
βリポ蛋白に分画される。支持体にアガロースゲルをもちいると 分離がよくなり 
 pre-βとβの 間のmidbandもわかるようになる。支持体にポリアクリルアミドを使う
 とさらに分解能が改善するが pre-βとβの位置が逆転する。

  
HDLコレステロールは 血清中の LDLとVLDLを薬品で沈殿させ その上清中の
 コレステロールを測る方法で簡単に測定できます。保険診療のきまりのため HDLコ
 レステロール、総コレステロール及び LDLコレステロールをあわせて測定した場合 
 主たるもの2つにかぎり算定するとなっています。

  LDLコレステロールを 総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の3つを
 使って推定する計算式は 
Friedewaldの式として知られています。
    
Friedewald.W.T.,Levy,R.I.,Fredrickson,D.S: Estimation of the concentration of low
  density lipoprotein cholesterol in plasma without use of the preparative ultracentrifuge.
             Clin.Chem. 18:499〜502,1972
 LDLコレステロール = 総コレステロール - HDLコレステロール - 中性脂肪/5
     ただし 中性脂肪が 400mg/dl以上の場合は 計算式がマイナスになること
    もあり使えません。V型高脂血症の場合も使えません。



 
高脂血症の表現型分類

   高脂血症の リボ蛋白の異常の組み合わせから Fredricksonは 電気映像パタ
  ーンの変化として分類し WHOでも採用されている。

表現型 上昇する
リポ蛋白
上昇する
 脂質
原発性高脂血症 続発性高脂血症
  T カイロミクロン
中性脂肪 exogenous hyperlipemia
 先天的LPL欠損症
 先天的アポCU欠損症
SLE
多発性骨髄腫
マクログロブリネミア
糖尿病性ケトアシドーシス
 Ua   LDL
コレステロール hypercholesterolemia
 家族性高コレステロール血症
 家族性複合型高脂血症
 家族性異常アポB100血症
甲状腺機能低下症
動物性脂肪過剰摂取
更年期障害
 Ub LDL と VLDL
コレステロール
 と 中性脂肪
combined hyperlipidemia
 家族性複合型高脂血症
甲状腺機能低下症
ネフローゼ
肝障害 閉塞性肝疾患
ポルフィリン血症
γグロブリン異常症
多発性骨髄腫
  V   IDL
中性脂肪 と
コレステロール
Remnant
 アポE欠損症
 アポE変異体
甲状腺機能低下症
SLE
コントロール不良糖尿病
  W    VLDL
中性脂肪 endogenous hyperlipemia
 家族性高トリグリセライド血症
 家族性複合型高脂血症
アルコール過剰摂取
糖質過剰摂取 糖尿病
甲状腺機能低下症
ネフローゼ 尿毒症
ピル使用 妊娠
アルコール性膵炎
ステロイドホルモン使用
グリコーゲン蓄積症 SLE
  X VLDL と
カイロミクロン
中性脂肪 と
コレステロール
mixed hyperlipemia コントロール不良糖尿病
甲状腺機能低下症
アルコール過剰摂取
W型患者のピル使用・妊
  娠・エストロゲン療法
膵炎 グリコーゲン蓄積症
SLE γグロブリン異常症