肥満と肥満症

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              肥満の判定基準
              肥満の合併症
              肥満の成因による分類
              肥満の治療




   私たちの体は 普通 水分が 約50〜60% 固形成分(たんぱく質、無機質、糖
質、核酸)が約20〜30% 脂肪が 約15〜25%からなっています。この体の脂肪は 
余ったエネルギーをため込み必要なときにほかに供給するというエネルギー貯蔵庫の
役割、保温断熱効果、クッションの役割ぐらいしか考えられていませんでした。この正
常な脂肪組織が過剰に蓄積した肥満症や逆に脂肪組織を欠損した全身性脂肪萎縮
症の研究から 脂肪組織はいろいろなアディポサイトカインを分泌する内分泌臓器で
あることがわかってきました。

 
ただスタイルがどうのこうのという問題ではないのです。肥満によっておこったり関
係がある健康障害を合併したりしそうだったりする肥満のひとを りっぱな病気のひと
つと考えて 肥満症とよび、治療の対象とされています。


                          肥満の判定基準

 体脂肪の測定で最も精度が高く装置の価格が高い方法は水槽の中で完全に被験
者が水没して水中体重を測る方法です。簡便なものとして微小な高周波電流を流して
生体のインピーダンスから体脂肪率を測る方法があります。高価さ・煩雑さ・正確さな
どの面で完全なものはまだないようです。
そんなわけで身長と体重やウエスト径が参考にされてきました。

      
肥満度 = ( 実測体重 - 標準体重 ) / 標準体重




Broca の桂変法
   桂英輔: 肥胖症及び羸痩症,  食餌l療法の理論と實際、岩鶴龍三編、南山堂、
                                             昭和27年 p457〜469

       標準体重(Kg) = ( 身長cm - 100 ) X 9/10

      この方法は 身長 155〜165cmて゛正常人の平均体重の統計と一致するの
      て゛よくもち いられてきました。155cmより以下では 平均体重はこの式で
      得られた値より大きくなり 165cm以上では逆に小さくなる。

BMI ( ボディ マス インデックス Body Mass Index )
    Garrow,J.S.: Quetelet's index as a measure of fatness.
                                     Int.J.Obes. 9:147〜153,1985.
    Tokunaga,K. et al : Ideal body weight estimated from the body mass index with the
       lowest morbidity. 
Int.J.Obes.15:1〜5,1991.

       
BMI = 体重Kg / ( 身長m X 身長m )
    

       この方法は Quetlet指数ともよばれ 乳児で使われるKaup指数と同じもの
      である。
 体内カリウム法で求められた体脂肪量との相関がほかの指数よ
      りも高いことから最もすぐれた指数とされ、国際的にもちいられている。

      
      徳永勝人氏らは約5000人の成人検
      診データからBMIと各種疾患との相
      関を検討し、高脂血症、高尿酸血症
      糖尿病、高血圧などはBMIとともに増
      加し 逆に貧血、呼吸器疾患、消化
      器疾患ではやせた人に多いことを
      みつけ疾病指数の最も少ないBMIは
      男で 22.2 女で 21.9だったそうです。



        そこから
    標準体重Kg = 22 X 身長m
              X 身長m



        こういう指数をもちいて 肥満を推
       定するとき注意すべきは
       運動選手のように筋肉がしっかりついて
       それで体重がついているのを 肥満と判断
       しないようにすること
       また老人などで筋肉がおちてかわりに脂肪がついているひとを体重が正
       常だから肥満はないと判断 (かくれ肥満をみのがさなように)したいもの
       です。

    BMI 日本肥満学会,2000 WHO基準,1997
        <18.5     低体重 Underweight
18.5≦ 〜  <25      普通体重  Normal range
 25≦  〜 <30     肥満 (1度) Preobese
 30≦  〜 <35     肥満 (2度) Obese class T
 35≦  〜 <40     肥満 (3度) Obese class U
 40≦     肥満 (4度) Obese class V






  米国では 前肥満
      Preobese

         過体重
     Overweightと
     よんでいます






        米国CDCは20才以下の子供や青年の成長曲線を紹介し
         Hammer L.D.et al:Standardized percentile of body-mass index for children
          and adolescentsAmer J Dis Child 145:259〜263,1991


年齢別のBMIが 5th prcentileを低体重
     85th 〜  95th percentile を                過体重のリスク
     95th percentile を過体重
                 Overweight
               としている 

 この 95th percentile を表にすると

年齢 BMI
2 19.3
4 17.8
9 21.0
13 25.1

 日本て゛乳児にもちいるKaup指数は 
 BMIとおなじですが 22以上 太りすぎ  22〜19 太っている
 19〜15正常 15〜13 やせている 13〜10 やせすぎ10以下 消耗症としているよう
 です。



ウェスト周囲径

    
BMI25以上で立位自然呼気時の臍周囲径をはかり 健康障害を将来おこす
    リスクの高い内臓脂肪型肥満の疑い を スクリーニングするようにすすめら
    れています。

 ウェスト周囲径  男性  女性
日本肥満学会,2000 > 85cm > 90cm
WHO,1995 > 94cm > 80cm

     ウェスト/ヒップ比もよく用いられましたが 内臓脂肪面積との相関は ウェス
    ト周囲径の方がよく相関したそうです。

ウェスト/ヒップ比 男性 女性
上半身型肥満
リンゴ型肥満
>1.0 >0.9
下半身型肥満
洋ナシ型肥満
<0.9 <0.8

腹部CTスキャン

    臍レベルの断面像で 内臓脂肪(V)面積と皮下脂肪(S)面積を測定する(徳永・
    松沢の方法)。

V/S比 内臓脂肪面積
内臓脂肪型肥満 ≧0.4  ≧100cu
皮下脂肪型肥満 <0.4  <100cu


腹部エコー

    
プローブを縦走査し、腹膜前脂肪の最大の厚みPmaxと腹膜皮下脂肪の最小
    の厚みSminを測定し、腹壁脂肪指数AFI(Abdominal wall Fat Index)=Pmax /
    Sminを算出する(斎藤康)。

男性 女性
High AFI ≧1.0 ≧0.7
Low AFI <1.0 <0.7



                              肥満の合併症

肥満に起因ないし関連し、減量を要する健康障害

     2型糖尿病
   脂質代謝異常
   高血圧
   高尿酸血症、痛風
   冠動脈疾患; 心筋梗塞、狭心症
   脳梗塞; 脳血栓症、一過性脳虚血
   睡眠時無呼吸症候群、Pickwick症候群
   脂肪肝、胆石症
   整形外科的疾患; 変形性関節症、腰痛症
   婦人科的疾患; 月経異常、不妊症
   その他


                          肥満の成因による分類
原発性肥満
(単純性肥満)
   
過食以外に原因の見つからない肥満。約95%をしめる。
二次性肥満
(症候性肥満)
   
視床下部性肥満
       フレーリッヒ症候群
       エンブティ・ゼラ症候群
       間脳腫瘍 など
    内分泌性肥満
       インシュリノーマ
       クッシング症候群
       甲状腺機能低下症
       スタイン・レーベンタール症候群 など
    遺伝性肥満
       ローレンス・ムーン・ビードル症候群
       アルストレーム症候群
       プレーダー・ウィリ症候群 など
    薬物による肥満
       副腎皮質ホルモン、経口避妊薬、インスリン注射
       向精神薬


                             肥満の治療

 肥満症から ただの肥満 に 抜け出そう
    太っていて なにが 悪い
        今の体重から 標準体重にまで やせなくたって
                  いいじゃない
             
理想はあきらめたわけじゃないけれど
      
そこまでやせるのは 大変な努力と長い年月が必要でしょう
 今の体重の 5〜10パーセント減量できて それを維持できれ
 ば   最初に減るのは 内臓脂肪だから
       合併症の多くは 改善すると思うよ


      
米国で糖尿病予防の大規模試験がおこなわれ
      
一番効果があったのは生活習慣を変えることだったのです。
        ピッツバーグ大学の先生の話では 
         
 生活習慣バランスが目標としていることは
        正しい食生活をして減量すること      体重の7%は減量する
        もっと運動するようになること        毎週2時間半は運動する

      
ということで 薬よりも 糖尿病予防に効果があったとのことです。



 肥満の治療指針                          吉田俊秀氏のもの一部改変

目標  食事 治療の実際
BMI25以上の体重はあるが
合併症もないし
内臓脂肪型肥満でもない
体重5%減量 食習慣リズムの異常があれば改善
食事内容 脂肪分の多い食事をやめ
砂糖菓子を果物に交換
食前に生野菜を多くとりご飯は一膳に食パンは一枚に
BMI25〜30の体重があり
合併症があるか なくても
内臓脂肪型肥満がある
体重5〜10%
   減量
日常生活でどのくらいエネルギーを使っているか把握
  基礎代謝、運動エネルギー(万歩計の歩数記録)、食事
  誘発熱産生
毎日の食事の種類と量を把握
  糖尿病食事療法のための食品交換表を利用し記録
消費エネルギー量-摂取エネルギー量がマイナスでな
  いとやせない、目標体重に達したら維持する
過食になった原因(ストレスなど)を取り除く
BMI30〜35の体重がある
肥満症
男1500Kcal
女1200Kcal
時に900Kcal
基本的には 上の欄で述べたことと同じで、3か月はがん
  ばってもらいますが
基礎代謝の低下している患者さんでは900Kcal食までにし
  ないとやせないこともあります
運動は1日1万歩を目標にしますが、可能な範囲とします
BMI35以上の体重がある
肥満症
男1500Kcal
女1200Kcal
時に900Kcal
基本的には 上の欄と同じですが、膝関節痛・腰痛などで
運動が困難なため水中歩行や座位での上半身運動にとどめ
食事療法をより厳格にする必要があります
超低カロリー療法の場合は入院が必要です
空腹感の強い患者さんに抗肥満薬サノレックスも使えます
200Kgを超える患者さんでは胃短縮術が必要なこともある


    
脂肪組織1キログラムは 7000Kcal に相当します

        基礎代謝 
食物の消化吸収がない食後12〜14時間後
                  仰臥安静で手足の筋肉の緊張がない
                  測定2時間前から運動せず精神的にも安静
                  着衣で外気温23℃
                  で測定されるエネルギー代謝量 basal metabolic rate
              年齢 性別 体表面積により異なる。
                           上の表では 男1500Kcal 女1200Kcal/日としている
         運動エネルギー
              1万歩の散歩で 標準体重者 350Kcal  肥満者 400〜500Kcal
              3千歩                105Kcal        120〜150Kcal
         食事誘発熱産生 specific dynamic action, diet-induced thermogenesis
              摂取エネルギー100Kcalに対し 糖質で6Kcal 脂質で4Kcal たんぱく質で
              30Kcal余分の熱産生がある
              日本人で平均200Kcal
 
        今ここに1日3千歩の散歩をする男の人がいたとすると
             1500+120+200=1820Kcal 消費していることになります
         この人が1日 1820Kcal の食事を続けたとしたら 今の体重を維持できる
         わけです
           体重を減らそうとすると これより食事を減らさなければなりません
         食事を 1520Kcalに減らしたとすると 1日 300Kcalで 23.3日で 7000Kcal
         食事を 1320Kcalに               500Kcalで 14日で 7000Kcal
                1キログラムの脂肪組織を減量できるのです
         1日 1万歩の散歩にして エネルギー消費を 
              1500+400+200Kcal=2100Kcalにし
         食事を 1800Kcalに減らしたとすると 1日 300Kcalで 23.3日で7000Kcal
        食事を 1600Kcalに               500Kcalで 14日で 7000Kcal
               1キログラムの脂肪組織を減量できるのです
        
脱水により 体重が減少しても 体に害があるだけです
                糖尿病の食事療法 運動療法 も参照ください


     
理屈はわかった しかし 私は そんなに食べてないんですけどね
                   水を飲んでも太るんです 太る体質なんでしょうかね

        確かに 食欲の調節や からだのエネルギー代謝に 体質的なものも
         あり、同じ食事量でも 基礎代謝の低いひとは 肥満になりやすい
           と思います しかし
     
食習慣リズムの異常 食行動のずれが見られることも多いのです
      これを改善できなくては たとえ減量できても リバウンドしてまた太ってしま
         います
         食事をいつ どこで どんな種類のを どれだけ食べたか を記録し
         運動をどれだけしたか 万歩計もふくめて 記録し
         体重を 起床直後、朝食直後、夕食直後、就寝直前測定し記録してみ
         る
           そうすれば 肥満の治療に非常に役立つと思います

       
どか食い・まとめ食い・朝食をぬいたむら食い
         1日の食事を 3回に分けずにまとめて食べる。
         食事がいつ取れるかわからない時代を生き抜いてきたわれわれ人類
         は
         まとめて食べた食事は飢餓に備えて脂肪組織として貯えておく術を知         っているのだと思います。飽食の時代は分けて食べるが勝ちです。
         やせの大食いということばもありますが 食事誘発熱産生の回数が多
         いので食べる回数の割りに太れないのかもしれませんね。
       
夜食症候群
         夜間の過食はよくない。 夜遅く帰って遅い夕食をとるひとも多いでし
         ょう。
         夜は消化管機能が高まり食べたものがエネルギーとして貯蔵されやす
         くなり注意しましょう。
       
早食い・よく噛まない
         早く食べると 満腹感がすくなく つい多く食べてしまう。
       
食後でも好きなものなら食べれる・別腹である
       
他人が食べているとつい食べてしまう
       
鉢に果物や菓子を身近に置いてある
         ついつい手が出てしまう テレビを見ながらスナック菓子を食べる
         いらいらすると食べることで発散する
       
頂きものや 料理が余ったとき ほかの人が食べないともったいないので
       食べる

         食料品の買い物も多めに買っておかないと気がすまない
         料理を作るときは つい多めに作ってしまう

                       こういうことがなかったら幸いです