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『ナイン・ソウルズ』 '02 『ナイン・ソウルズ』製作委員会

脚本・監督:豊田利晃
出演:原田芳雄・松田龍平・千原浩史・鬼丸・板尾創路・KEE・マメ山田・鈴木卓爾・大楽源太・伊東美咲・京野ことみ・唯野未歩子・今宿麻美・鈴木杏・松たか子・國村隼・北村一輝・井上順


 9人の脱獄犯を巡るロードムービー風群像劇。9人の犯罪者達のキャラクター勝負の作品である事には間違いない。

 冒頭、バードビューで映し出される東京。建物が徐々に消えて行き、最終的に東京タワーだけが残る。
 そして、ひきこもりの松田龍平が父親を殺す。ここからは、なんとも説明不足、且つ、かなり嘘っぽい刑務所描写。更に、特に苦労する事もなく、同じ房に収監されている9人があっさりと脱獄に成功する。逃亡生活の始まりだ。
 脱獄モノの映画なのに、シャバに対する執念が描かれていなかったり、行き当たりばったりだったりするところが、なかなか斬新な印象。こんな事を言ってしまっては、身も蓋もなくなってしまうのだが、別に脱獄なんかしないで、刑務所の中だけで、回想シーン中を交えつつ、それぞれのキャラクターを描いてもこの作品は成立するだろう。ただ、それだと9人の“散り様”を描く事が出来なくなってしまうだろうから、作品としての収まりはものすごく悪くなるんだろうけど。

 物語がスラップスティックに展開する前半は、とても面白い。それぞれがどんな犯罪を犯してきたのか、という最も気になる部分が徐々に解明されて行き、この作品で最も重要である9人のキャラクターが浮き彫りになって行く快感に溢れている。で、また9人の逃亡生活から、ひとり抜けまたひとり抜け、そして、それぞれの“散り様”、つまり再逮捕されたり、死んだりする姿が、決して監督の依怙贔屓なしに、平等に描かれるのがとても嬉しい。シャバでの相手役となる人物達もなかなかよい面子で、現在の日本映画のオイシイ部分が凝縮されている。鬼丸と絡む北村一輝の悪い感じとか。伊東美咲の「映画だから頑張ります」的雰囲気とか。
 でも、こういう面白さも前半だけ。ちょうど松田龍平のエピソードを描き出し、そこら辺で松田龍平のポエム的語りが乗っかり初めてから作品のテンションが一気に落ちてしまった。コミカルで、行き当たりばったりで、どうしようもなくなってしまいそうな、そういう危なっかしい感覚が面白かったのに、急にメッセージを前面に出し始めるのだ。綺麗な着陸地点に向かっている事が丸見えになってきて、こっちは醒めてしまう。ほとんど、目的意識の無いままに始まった脱獄なのに、無理矢理そこに大きな目的を与えているようで、気持ちが悪くなった。

 前半で散るマメ山田・板尾創路・大楽源太・鬼丸・KEEの5人はおいしい。でも、後半まで生き残る原田芳雄・松田龍平・千原浩史・鈴木卓爾の4人はおいしくない。まぁ主役である原田芳雄・松田龍平の2人はそれでもいいとして、千原浩史・鈴木卓爾はかなり損をしてしまった。特にいちばんおいしそうな役である千原浩史は、結局大きな見せ場もなく、ただ散って行っただけだった。監督は千原浩史の役にいちばん思い入れがあるとか言ってたのに、なんとも投げやりな終焉。思い入れがあったからこそ、最後まで生かしてしまって、終わらせ方が見付からなかった、って事?

 豊田監督はいい作品を撮るんだけど、いつも後半がグダグダになってしまう。そういう印象はやっぱり拭えなかった。真面目すぎるのだろうか。まとめようとし過ぎているのだろうか。もっと、ひっちゃかめっちゃか最後まで押し通しても良かったと思う。特にこの作品は。