| 『果てしない欲情 もえさせて!』 '01 国映・新東宝 監督:サトウトシキ 脚本:小林政広 出演:向井新悟・横浜ゆき・川瀬陽太・奈賀毬子・下元史朗・伊藤清美 オリジナルタイトルは『青空』。 犯罪に隠されたストーリーを主観的に捉える事はほぼ不可能に近い。作られた倫理観の中でごく普通に生活する事以外に何の選択肢も与えられない一般人にとって、犯罪という行為程遠くにあるものはない。それは罪悪感の有る無しに関わらず。だって「犯罪を犯さない」という事は当たり前なんだから。当たり前を当たり前と思わない、その思考回路が理解出来る訳なんかない。 犯罪者が犯罪に至るまでを主観的に描く作品は数多い。犯罪者の心理を何らかの理由付けによって説明し、犯罪者ではない観る者の興味を引く。でも、なんだかおかしい。 犯罪者の心理を理解するという事は、当たり前が当たり前ではなくなる瞬間の到来を意味し、その瞬間、観る者は犯罪者と化す。すなわち、殺人(この作品の場合)を犯すということなのだ。それはもちろん可能性の問題ではなく、あくまでプラクティカルに殺人を犯すという事だ。おかしい。あまりにもおかしい。 僕はこの『青空』で描かれる殺人者の主観に対して、一切共感する事はなかった。このジュンちゃんという男(向井新悟)が何故殺人を犯したのか、全く理解出来なかった。そして、また作品内でジュンちゃんは、回想しながらずっとその時の心境を自己分析するのだが、その全てが矛盾にしか思えなかった。僕にとってはなんとも不可解で気持ちの悪い時間だった。 この作品はおそらく本当の犯罪者の心理を描いたものであろうと思う。だから、犯罪者ではない僕には全く理解出来なかったのだ。それはエンターテインメント性が薄い、という意味であるのかも知れないが、それでも構わない。よくあるニセモノの『犯罪者心理分析モノ』とは違う、という事がそれよりも重要だと感じたから。それだけ、希有な作品だと思えたから。 そんな感じの「小林政広が本当に描きたい事」的雰囲気バリバリの物語。崩れゆく主人公の人生と、それに伴って狂って行く心を主人公の主観で淡々と描く。小林の自伝的雰囲気を持つ、自身監督の『実録 極東マフィア戦争 暗黒牙狼街 BOSS』にも近い感覚だ。サトウトシキは小林の描きたい世界を職人的に演出したってな感じ。 正直、マスターベイティング的な印象も強く、カラミもバリエーションに乏しく、セックス抜きでも成立する話であるので、ピンク映画としてはあまり成功していないのかも知れない。でも、まぁ犯罪バックストーリーモノとしては、かなりの快作である事には違いない。 |