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『BLOOD 狼血』 '99 日活

監督:鈴木浩介
脚本:天願大介
出演:竹内力・高知東生・白竜・及川麻衣・菅田俊・平泉成


 血塗れになって拳銃を顳かみに突き付けられるピエール瀧。いきなり映し出される怪優の衝撃的な顔。死を確信し、全てを放棄したのだろうか、不敵な笑みを浮かべるピエール瀧。そして、田口浩正、緋田康人。
 そんなシュール極まりないシーンから始まるこの作品。このシーンそのものは物語と関係ないのだが、その後に展開されるある種異様な映像世界を示唆するには十分だ。

 鈴木浩介はこの作品の直前に『稲川淳二の恐怖物語2』『稲川淳二の恐怖物語3』を監督し、その前には『ハッピーピープル』を監督している。これらの異空間の世界をいい意味で引き摺りつつ、淡々としたハードボイルド世界をこの『BLOOD 狼血』で具現化する事となった。例えば、黒沢清の世界観にも似た現実と非現実の狭間に潜んだ狂気の世界。観るものはその世界観にいつの間にか引き込まれて行く。

 とは言うものの、この作品の世界そのものがファンタジーの域に達している訳ではない。世界観は確かに不条理に映るのだが、物語が不条理な訳ではない。これは、映像世界という意味での不条理さであり、邦画特有の淡白な演出効果のなせる技であると言えよう。
 ハリウッド的な演出では、画面が静止する事はまずない。これは、ハリウッドのアニメーションでも言える事なのだが、常にどこかが動いている。それが、ハリウッド流リアリズムなのだ。しかし、日本映画の手法はそれとは全くの対極にある。カメラの視点をフィックスし、画面の中の人物だけが動く。最低限の動作だけで、全てを表現する。(これは、日本のアニメーションにも言える事で、背景を固定し人物の口だけが動く、という事が多々ある)日本映画の特徴とも言えるこのミニマリズムが不条理な映像世界を創り出すのだ。
 はっきり言ってドスの効き過ぎている竹内力の演技や、普段は暑苦しい高知東生の演技もこのミニマリズムの中に入ると、自然とバランスが取れてくるから、面白い。もし、この作品をハリウッド的な過剰演出で創り上げたのなら、物語は単なる寓話になり、登場人物達は彼岸の人々になってしまい、全くの非現実になってしまうだろう。しかし、ミニマルな演出は、そんな無理な世界の中にでも、どこか身近な空気を齎してくる。それは、確かに不条理で、現実にはあり得ない世界なのだが、なんとなく覚えのあるような、懐かしいような感覚。

 この作品の後、鈴木浩介と竹内力のコンビは次々と佳作を産み出す事になるのだが、このコンビでの最新作が『熱血!二代目商店街 爆裂編』というとんでもない過剰演出の人情ものだという事実は興味深い。こっちはこっちで、偉い事になっている。