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『岸和田少年愚連隊 望郷』 '98 吉本興業・丸紅・松竹

監督:三池崇史
脚色:NAKA 雅 MURA
原作:中場利一
出演:竹中直人・高岡早紀・長田融季・笑福亭松之助・栗原早記・烏丸せつこ


 三池崇史の作品の中で、最も解り難い作品なのではないだろうか、と思わせる程に前半部分が混沌としている。それは、『DOA』のような意図した混沌でも『アンドロメディア』の悪意ある混沌でもない。まるで、少年の頭の中をひっくり返したような混沌だ。子供の心を理解出来ない事に対する苛立ちなのかも知れない。または、少年時代の自分に対する苛立ちなのかも知れない。兎に角、混沌に狼狽させられた。
 しかし、徐々に収束して行く物語に僕の心は落ち着きを取り戻す。完全にストーリーに助けられたかのようだった。不可解なものに対する恐怖から解放され、ロジカルな世界観に没頭する事で、観客のバランスが保たれる。監督の掌の上で踊らされているのだ。しかし、それは快感そのものである。
 解り易い展開と解り易い演出で強引なまでに押し切って行く三池崇史の作品において、この『岸和田少年愚連隊 望郷』のような二重構造はとても珍しい。これもまた、僕が困惑した理由のひとつであり、僕は完全に三池崇史に対して先入観を持っていたのだ。従って、違う攻め方をするこの作品に違和感を感じたのである。そして、その違和感が「解り難さ」という形になったのだ。しかし、それもやはり三池崇史の意図するところであろうから、やっぱり三池崇史に踊らされているとしか表現出来ない。

 前半三十分を観た段階では、三池崇史最大の失敗作であると感じた。しかし、観終わった後には、素直に「良い映画だった」と感じた。そして、とても不思議な感覚に襲われた。それは、おそらく敗北感であったのだと思う。心地よい敗北感だったに違いない。