| 『ブリード 血を吸う子供』 '00 レジェンド・ピクチャーズ 脚本・監督:瀬々敬久 出演:川上麻衣子・嘉門洋子・松重豊・遠藤憲一・奥野敦士・中原翔子・下元史朗 瀬々監督が描く、初の正統派ホラー映画。『KOKKURI』がホラー映画の仮面を被った青春映画だったのに対して、こちらは「主人公が謎を解く」「主要な登場人物の大半に死が訪れる」というホラー映画のセオリーを踏襲する、かなり正統派なホラー映画である。『KOKKURI』は井土紀州との共同脚本で、こちらは瀬々単独の脚本である事がその違いを産んだのだろうか。 まず、開始30分くらいの所で、何の伏線もなしに、物語の核心に迫ってしまう。およそ90分の作品であるのに、そんなところで種明かしをしてしまって大丈夫なのだろうか、なんて観る者に大きな不安を与えるが、センセーショナルな殺人シーンの連続によって、その不安を掻き消してくれる。また、その殺人ラッシュが終わったところで物語が急転し、冒頭で迫った核心がこちらの予想の範疇をいとも簡単に凌駕してしまうものだったというのだから、全てが納得出来る。 佐々木浩久監督『発狂する唇』『血を吸う宇宙』という連作は、物語の収拾が着かなくなるところに面白味があろうが、この『ブリード』についてもそれに近い印象を受ける。そして、それが『発狂〜』シリーズの様な作為の下に展開されるものではなく、全くの死角から飛び込んでくるものであるから、観る者の快感は大きい。それは、初期の瀬々監督に顕著だった「ピンク映画なのに、全然エロくない」「ピンク映画なのに、とんでもない展開だ」という感覚とほぼ同じであろう。やはり観客に対する裏切りがこの監督の作品における醍醐味なのだろう。 また、殺人シーンをピンク映画におけるカラミと同様に使っているという点も、瀬々監督らしさであろう。ピンク映画において、カラミは必須であるが、瀬々監督はそれを脚本における主題としては使わずに、映像的なアクセントとして使う。勿論、セックスがテーマであるケースもあるのだが、それが目的になる事はまずない。あくまで手段である。今回の『ブリード』においての殺人シーンは正にそれであろう。ホラーを撮るという目的に対する手段としての殺人シーン。物語の急展開を促す為の手段としての殺人シーン。映画の中で殺人とセックスは同位置にある。 外郭だけをなぞるのであれば、とても瀬々敬久らしいものではあるが、全体として、作品として、決して瀬々らしさに溢れた映画ではなかったのが残念である。この脚本には、若者の焦燥や、転げ落ちる者達の悲哀や、人生に対する悲観が一切ない。瀬々の持つ「映画」というエンターテインメントすらも否定する現実に対する恨みが感じられないのだ。単純に、瀬々敬久がホラーを撮るのは無理なのだろうか、全く同じ題材を黒沢清が撮ったのであれば、どうなったのだろう、などと考えてしまう。まぁ、ホラーであるのだから現実に対する想いを表現する事は不可能なのかも知れないが。 |