| 『実録外伝 武闘派黒社会』 '99 大映 監督:那須博之 脚本:那須真知子 出演:的場浩司・押尾学・中園りお・川本淳一・俊藤光利・哀川翔・峰岸徹 まず音楽に驚く。ハリウッドのマフィアムーヴィーの様な、高尚な雰囲気のあるハーモニックな音楽。ここに、ヤクザ映画の泥臭さを感じる事は出来ないが、とんでもない胡散臭さを感じた。グロテスクな世界である。 次に的場浩司の薄汚さに驚く。裏社会を生き抜く孤児であってもここまで、汚く演出する事はない。そのオーバーディレクションが更に世界をグロテスクにさせる。現実感を完全に否定している。 そして、押尾学の長髪は完全にヤクザのそれではない。一応、設定としては服役を機にヤクザとの関係を断ち切った、というものではあるのだが、どこからどう見てもヴィジュアル系にしか見えないその風貌は、決してスクリーンの中の仁侠道を歩む者ではない。ヤクザを小馬鹿にしているのか! などと叱責したくなる程だ。 ヤクザ映画として観る事を憚られるくらいに、へんてこりんで違和感たっぷりの作品だ。四畳半アパートに暮らす的場も押尾もおかしければ、押尾と妙な関係を続けている刑事役の峰岸徹もかなりおかしい。とても表現し辛い違和感なのだが、敢えて表現するのであれば「こいつら全員ホモなんじゃないの?」といった様な感覚に近いかも知れない。いや、勿論、ホモがおかしいという訳ではないのだが、ホモであるという事を必死に隠している様な、アイデンティティーを否定している様な、タブーを必要以上に忌み嫌っているというか……。兎に角、とても変な空気に支配されている。 そんな中、ちらっと出演する哀川翔だけが、いつもと変わらない哀川翔なのだが、それが異常なまでに浮き上がってしまい、恰も哀川翔だけが異端であるかの様な感覚に襲われるから恐ろしい。実際、哀川だけが死んでいる(つまり、回想シーンにしか登場しない)訳であり、その点で決定的に他の登場人物と異なるのではあるが、普通であるはずのヤクザが全くのストレンジャーに思えてしまう世界観に没頭するのは流石に躊躇されるものであって、その所為か、この作品にのめり込む事だけは出来なかった。淡々とストーリーを追う事だけを考えていた。 監督の那須博之は、『ビーバップ・ハイスクール』や『新宿純愛物語』の監督であり、アウトローを主演とした青春映画を数多く手掛けている。この手の作品を得意とする監督の中では意外と寡作で、この作品の次に撮った『ピンチランナー』以来メガホンをとっていない。再び狂った映画を排出してもらいたいものだ。 |