| 『チャカ2』 '99 ピジョン・スギモト 監督:渡辺武 脚本:本調有香 原作:山之内幸夫 出演:竹内力・遠山景織子・益子和浩・やべきょうすけ・隆大介・大和武士・菅田俊 竹内力における、哀川翔の『復讐』シリーズに相当するものがこの『チャカ』シリーズ二作であろう。小津〜北野系の音数の少ない演出と、垂れ流される様な引きの絵。物語の進行を台詞に担わせるのではなく、人間と人間の動きと、関係性に担わせる手法。渡辺武は決して黒沢清と共通するような監督ではないが、作品のイメージ、人間の生き死にを題材にしている点、そして、ヤクザを軸にしている様な振りをして、実はヤクザと関係のないところで繰り広げられる主題。これらの共通点が『復讐』と『チャカ』を繋ぐのだ。ただ、前者は恐怖が、後者は愛が主題となるという点が相違しているが。 前作は男と女の“愛情”を軸に描かれたが、今作は男と男の“友情”が軸となっている。といっても、ヤクザの中でも特に珍しいタイプの仕事人である主人公・島と拳銃マニアの若者との間の友情であるから、一筋縄に行く筈もなく、必然と偶然の絡まった奇妙な関係性が徐々に浮き彫りになってくる運びとなっている。この開かれて行くストーリーは観る者をに快楽にも似た感覚を与え、心地よい傍観の時を齎す。 特に引きで撮られた自転車のシーンが印象的で、その自転車で競争をするという平和な行動と、人っ子一人いない殺伐とした河原道との融合が、寄り添ながらも拒み続ける、パラドクシカルな殺し屋の心情を表現している様だった。父親の死によって、初めて自らの生を感じる事が出来たという若者・タカシの言葉が、殺し屋・島の心の中そのものであるような気がしてならなかった。相反する二つの事象は、根本的に同一のもので、ほんのちょっとの違いを誰かが勝手に増幅させて全くの別のものになってしまったのだ。だから、タカシと島も元々は同じところから産まれた人間だったんだけど、いつの間にか、二人が引き裂かれ、二人は別々の道を歩み出した。でも、根っこは同じだから、最終的に繋がる事となった。…などと、思索を広げてしまう程に心地よい映像であった。 竹内力と哀川翔を比べると、どうしても竹内力の方に絶対的な強さを感じてしまう。元々チンピラ役ばかりであった哀川のイメージや竹内の見た目(顔)の怖さもその要因の一つであろうが、二人の出演する作品の傾向の違いが最も大きな要因であると、僕自身は感じている。哀川翔の出演作品は黒沢清監督の作品群を代表に、どこか非現実的で寓話的な作品が多い。一方、竹内力の出演作品は『ミナミの帝王』や『仁義』シリーズの様に、どこか俗物的なものが多い。つまり、竹内の持つ圧倒的な現実感が強さとなって映り出されているのである。 しかし、この『チャカ』シリーズ二作では竹内力に俗物的な現実感が無い。しかも、それが物足りなさと感じられてしまう類いのものでは無く、寧ろ新鮮に感じられるものだ。この新鮮さは予想を裏切られた時の快感にも通じる。僕は竹内力という俳優の持つ深みに触れた事が出来たのかも知れない。 |